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008

でもひとつだけ、心に残ったこともある。

和花を助けてくれた通りすがりの男性の存在だ。


物腰が柔らかく落ち着いた声で、そして無理強いをせずに的確に人を呼んでくれた。誰だかわからないけれどとてもありがたかったし、世の中変な男性だけではないことを証明してくれているようだった。


和花は学生の時にストーカーされた記憶が心の傷になっていて、しばらく男性不信にも陥った。だけどそんなことをする人はごく一部で、普通の人は常識があることぐらい和花だってわかっている。


ただ、体と心がなかなか追いつかない。

何年もかけてようやくここまで回復したのだ。それなのに今日のクライアントによってまた気持ちが逆戻りだ。


でも──


ショックを受けたのに思ったほど落ち込んでいないのは、やはりあの助けてくれた男性がいたからだろうと思う。


社内にあんな親切な人がいたのかと思うと少し心が晴れるようだ。いつかお礼を言うことができたらいいとも思う。


部署もわからない通りすがりの男性は和花の心にあたたかな光をもたらす。


和花の勤める職場は工場を併設しており、事務所も何棟かの建屋に分かれている。だからあの男性にはもう会うことはないかもしれないし、でももしかしたらまたどこかで会えるかもしれない。


考えれば考えるほど気持ちが大きくなっていき、いつしか和花の中で名も知らない王子様のようになっていった。

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