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しばらく健康管理室で休み体調が戻った和花だったが、その日はそのまま帰宅を命ぜられた。
落ち着きを取り戻すと今日の出来事を振り返る余裕ができる。
時間の経過と共に克服できたと思っていたエレベーターは今まで緊張しつつも乗ることができていた。だからまさかあんな過呼吸になるほど体が震えようとは思わなかった。
和花は自分の体をぎゅっと抱きしめる。
自分ではもう大丈夫だと思っていたのに、体はまだ覚えているのだろうか。フラッシュバックが酷く和花はますます身を小さくした。
和花は学生の時に男に執着され、ストーカーまがいの行為を受けた。大量のメールや深夜の電話。嫌だったことを上げればキリがないのだが、その一つに逃げ場のないエレベーター内で迫られて怖い思いをした。
それ以来、和花はエレベーターに乗るのが怖くなってしまい極力避けることにしている。
ただ、時間の経過とともに気持ちが薄れてきたことや仕事で使わなくてはいけなくなり、頑張って克服してきた努力家でもある。
それが今日、一瞬のうちに崩れ去った気がした。
「はあー。最悪な一日だったなぁ」
和花はため息をつく。