表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/100

062

秀人の静かな怒りが手のひらを通して伝わったのか、和花が震える声で秀人に言う。


「佐伯さん、本当にすみません。ご迷惑をおかけして……」


小さな声は耳を澄ませないと聞き逃してしまいそうで、秀人はきちんと和花に向き合った。


「いや、僕が送らなかったから。怖い思いをさせてしまって申し訳ない」


「いいえ、佐伯さんは悪くありません。私がしっかりしていないから……」


言いながら、和花はみるみるうちに大粒の涙が滲み声もなくポロポロと泣きだしてしまった。


「橘さん?」


「……何で私こんなんなんだろう。学生のときも今回も、好きでもない人に迫られて、断っても私が思わせ振りな態度をするからだって言われて……。私が悪いんですか?私どうしたらいいんですか?」


三井が和花に放った言葉は和花の心にグサリと傷を付けていた。来客に挨拶をすること、丁寧に対応することは社会人として必要なことだ。失礼のないように対応しているだけなのに、和花は自分のどこに落ち度があったのかまったく分からない。それとも、ツンと冷たくあしらえばよかったのだろうか。例えそうだとしても、和花にはそんな常識のない態度は取れる気がしなかった。


「橘さんは悪くないですよ。勝手に勘違いするヤツが悪い。橘さんはよく頑張っています。それは上司である僕がよく知っている。だからそんなに自分を責めないでください」


秀人はハンカチを取り出しそっと和花の涙を拭う。それだけでは溢れる涙は止められなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ