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放っておけない

マチの広い少ししっかりとした作りの紙袋を前に、和花は今日何度目かわからないため息をついた。


先日のスイーツをごちそうになったお礼に何かお返しをしたいと思っていたのだがなかなか思いつかず。チーズに目がないんだと笑った秀人の顔を思い浮かべながら気づけばチーズ食パンを焼いていた。


それを綺麗に梱包して紙袋に入れたものが、渡す機会を失ったままの状態で和花の目の前にある。


定時を告げるチャイムが鳴り、和花は斜め前の席を見る。会議にいったまま戻ってこない秀人の席だ。


やはりこのまま持ち帰ろうかと悩んでいるとパタパタと足音を立ててなぎさがやってきた。


「あー、和花ちゃんまだ帰ってなかった、よかったぁ。請求書の支払いで教えてほしいんだけど。って、何持ってるの?」


和花が不自然に紙袋を持ち上げたり置いたりしていたので、なぎさが不思議そうに聞く。和花はギクッと肩を揺らしてとっさになぎさへ差し出した。


「えっと、これは……なぎささんへあげます!」


「は?」


なぎさは目の前に差し出した紙袋を覗き込む。こんがりと美味しそうなきつね色に焼けている食パンが一斤、綺麗に包まれていた。


「えーすごい、食パンじゃん。どこのお店?」


「自分で作りました」


「ちょ、マジで?和花ちゃんすごすぎ。てか、誰かにあげるつもりだったんでしょ?」


「いっ、いえいえ、なぎささんに」


「んなわけないわ、もらえないってば。先日はありがとうございましたってメッセージカード入ってるじゃん」


「はっ!」


なぎさがカードを手に取ると和花は真っ赤な顔で慌てふためく。


「和花ちゃん動揺がすごすぎてちょっとお姉さん萌えるんですけど。……あ、佐伯くん」


動揺が和花の顔をますます赤く染める。耐えきれなくなったなぎさはお腹を抱えて笑い出した。


「和花ちゃん分かりやすすぎ」


「なぎささん!」


「ごめんごめん、睨まないで」


隠しきれない自分の気持ちがなぎさにバレてしまって、和花は両頬を包んで不貞腐れた。そんな仕草さえ可愛らしく思えて、なぎさはまたニヨニヨと頬を緩めた。



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