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037

ふいに”くん”とスーツが引っ張られた気がして秀人が振り向くと、和花が控えめに裾を掴んでいた。


「どうしましたか?やっぱりエレベーターはやめますか?」


和花の手が小刻みに震えてるのを見て秀人は尋ねる。二十五階まで階段を使ったら何分かかるだろうかと野暮な思いが頭をよぎった。

だが和花はフルフルと首を横に振る。


「いえ、克服したので大丈夫です」


「でも……」


「頑張って克服したいんです。普通に乗れるようになりたいから。えと、そうじゃなくて、あ、あの、怒ってますか?」


「えっ?……いや?」


「私が英語できないから……」


気遣う和花の姿を見て秀人は先程のやり取りで苛立ってしまった自分を慌てて戒めた。どんな些細な事でも、優しく繊細な和花は気にしてしまうのだ。


「すみません、無愛想なのでよく怒っていると勘違いされます。直さないと、とは思っているのですが難しいですね」


「……怒ってないなら、よかったです」


秀人の声色が先程とは違い柔らかくなったのを確認して、和花はほうっと胸を撫で下ろす。


そうこうしているうちにエレベーターが開き、秀人は和花の様子を確認しながらゆっくりと乗り込んだ。


和花と秀人、エレベーターには二人きりだ。


「……あの、僕と二人で乗るのは大丈夫なんですか?」


「えっ、あ、佐伯さんのことは信用していますので、大丈夫です」


ほんのり頬を染めながら和花の顔はニコッと華やいだ。

先に言い出した方なのに逆に秀人の方が和花と二人でエレベーターに乗ることにドキドキと緊張してしまう。


そんな緊張を打ち消すかのように秀人は外の景色に目をやった。


このホテルのエレベーターは外が見えるようになっているのだ。


「わあ、すごい」


和花も外の景色を見やる。

どこまで上がっていくんだろうと眺めていたらあっという間に二十五階まで着いた。


こんな気持ちでエレベーターに乗ったのは久しぶりだった。

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