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「Don't touch her」


和花は突然現れた秀人にあっと息を飲んだ。


組まれていた肩は強引に引き剥がされ、そのまま秀人の胸の中にすっぽりと収まる。


(えっ?えっ?)


胸の中、流暢な英語だけが飛び交うが、和花には何を言っているのかさっぱり聞き取れない。そんなことよりも秀人に抱き寄せられていることに対してドキドキと心臓が音を立て始めた。


やがてふと秀人の腕の力が弱まり、和花は自由になる。先程の外国人はどこかに行ってしまったようだ。


「あ、あの……」


一呼吸おいて改めて秀人を見ると、またドキッと胸が高鳴る。

仕事中もスーツだが、今日はフォーマルなスーツなだけあっておしゃれさが増している。


(かっこいい……!)


そんな気持ちを押し込めつつ、改めて頭を下げる。


「ありがとうございました。私英語わからなくて。佐伯さんすごいです」


秀人は自分でも無意識にムスッとしていた。よくわからない苛立ちが頭の中を支配する。


「誰にでも親切にするのは橘さんのいいところですが、時と場合によります」


和花が悪いわけではなくナンパまがいなことをしていたあの外国人がいけないのに、その苛立ちを思わず和花にぶつけてしまう。秀人は自分でもひどく冷たい言い方になったのを自覚し、何となくバツが悪い気持ちになった。


「わ、私、誰にでも良い顔してません!」


和花も秀人の言葉に思わず言い返す。

秀人が口をつぐむと、和花は「ごめんなさい」と小さく呟いた。


じわっと涙が浮かびそうになる。よく分からない悔しい気持ちが和花を支配する。


俯いてしゃべらなくなってしまった和花に、秀人は何事もないように淡々と告げる。


「……では行きましょうか。階段がいいですか?」

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