表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/100

032

珍しく和花が秀人の席まで来て、「あの」と声をかける。


「佐伯さん、次の会議なのですがパソコンのセッティング以外に必要なものありますか?」


「え?ああ、それだけで大丈夫だけど自分でできるからいいですよ」


「はい、パソコンのセッティングだけはもうしてきました。すぐに使える状態です」


「……ありがとうございます。それより会議室入って大丈夫ですか?」


和花はキョトンとしたあと、申し訳なさそうに眉を下げ遠慮がちに言う。


「お気遣いありがとうございます。それくらいなら大丈夫ですから」


秀人は、林部は和花が会議室に入るような仕事はなるべくさせないように配慮していたと聞いていたので、まさか和花自ら率先して準備してくれたことに驚くと共に心配になったのだが、本人が大丈夫というならばそうなのだろうか。


和花は静かに席に戻り、普段と変わらず仕事を始めた。


「和花ちゃん、注文用紙持ってない?」


一際明るい声がフロアに響き顔を上げると、和花の元になぎさがやってきた。


「注文用紙?なぎささん、今は電子化になってますよ」


「知ってる知ってる!でも昔の紙の注文用紙がどうしてもいるのよ。和花ちゃんのところで持ってないかなーって。負の遺産、ありそうじゃん。和花ちゃん物持ちいいし」


「負の遺産って……。もー、しょうがないですねぇ。キャビネット見てくるので待っててくださいね」


一連のやり取りを見ていた秀人は、なぎさに向けて明るく笑う和花を見てぐっと息を飲んだ。普段から相手に対しておっとりとした笑顔を返す和花。けれど今の和花はなぎさに対していたずらっ子のような感情豊かな表情をしたのだ。そんな砕けた和花を初めて見た秀人は珍しいものでも見るように和花の後ろ姿を目で追う。


するとふいに視界が遮られたかと思うと、なぎさが目の前に立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ