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刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。  作者: 木山楽斗


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70.狙われる竜②

 私とリルフは、アルバナスの町へ向かっていた。空高く舞い上がったリルフは、かなりの速度で町へと向かっている。

 そんな速度を出している竜の背中に乗っている私も、普通に考えたらただでは済まないと思うのだが、私は特になんともない。多分、それも魔法の効力なのだろう。


「……お母さん、大丈夫?」

「うん? 大丈夫だよ?」

「そっか……それなら、良かった」


 リルフは、私のことを心配してくれていた。それは、先程の戦いで主に戦っていたのが私だったからなのだろう。

 しかし、先程の戦いで別に傷を負った訳でもない。特に、問題はないのだ。多少の腕の痺れはあるが、それは些細なことである。


「あのローディスっていう騎士団長は、とても恐ろしい人だったね」

「うん、そうだね……でも、こうして逃げられたんだから、とりあえずは良かったってことなんじゃないかな?」

「……でも、またやって来るよ。ボクを殺しに……」

「……リルフ」


 リルフは、ローディスから向けられた殺意に恐怖しているようだった。それは当然だろう。あの騎士団長からの殺意が、怖くない訳ではない。


「大丈夫、私が守るから……」

「お母さん……」


 私は、リルフの背中をゆっくりと撫でる。この子に少しでも安心してもらいたくて、その大きな背中を優しく撫でていく。

 どうしてリルフがこんな目に合わなければならないのだろう。私は、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 その答えは、嫌なことにすぐに出てきた。この子が、転生竜という特別な竜だからだ。

 転生を繰り返す竜。この子は、今までどれだけ転生してきたのだろうか。それを考えると、なんだか少し胸が苦しくなってくる。

 国王様からこの事実を聞いた時もそうだった。どうして、こんなにも胸が痛いのだろう。この感情は、一体なんなのだろうか。


「あっ……お母さん、見えてきたよ」

「え? ああ、アルバナスが?」

「うん!」


 私が色々と考えていると、アルバナスが見えてきたことをリルフが教えてくれた。

 正直、あまり下を見たくはないのだが、とりあえず私は視線を向けてみる。そうすると、確かに町が見えた。空から見てもなんとなくわかる。あれは、確かにアルバナスだ。


「戻って来たんだね……」

「うん……」


 アルバナスを見て、私はなんだかとても嬉しくなっていた。

 あの見慣れた風景が、こんなにも安心させてくれるなんて、思ってもいなかったことである。

 やっぱり、故郷というものはそういうものなのだろうか。私は、生まれて初めてそんなことを思っていた。


「色々とあったけど……帰ろう、私達の家に」

「うん、そうだね……」


 リルフは、ゆっくりと降下していく。本当に色々なことがあったが、私達は慣れ親しんだ町に帰って来られたのである。


「フェリナ! リルフ!」

「え? ミルーシャ?」


 地上に降り立った私達に、ミルーシャの声が聞こえてきた。声の方向を見てみると、ミルーシャとメルラム、それに兄貴がいる。


「皆、どうしたのさ?」

「どうしたのさ? じゃないでしょう? 急に空から降って来て……」

「ああ……まあ、そうだよね」


 どうやら、皆私達が空から降り注いできたから急いで駆けつけたらしい。それは、当然のことである。皆、私達がこんな風に帰って来るなんて、思っていなかっただろう。


「えっと……皆に、話さなければならないことがあるんだ」

「話さなければならないこと?」

「うん、とりあえず、宿屋に戻ろうか……」

「え、ええ……」


 これから、皆にはもっと驚くようなことを伝えなければならない。王都であった出来事を聞いて、皆はどう思うのだろうか。

 そんなことを考えながら、私は皆とともに宿屋へと向かうのだった。

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