67.王都にて⑨
「なるほど、それが竜の力という訳か……確かに、恐ろしい力ではあるようだな」
「そう思うなら、手を引いてくれないかな?」
「その選択はあり得ん。例えどれだけの力を持っていようとも、俺も自らの信念を貫くために引き下がることはできんのだ!」
ローディスはそう言いながら構えを取った。それに合わせて、私も構える。
だが、構えてからわかった。目の前にいる男は、何かをしようとしている。
それが何かはわからない。だが、とても恐ろしいものだとはわかる。それが理解できる程の気迫が、ローディスからは感じられるのだ。
「既に気づいているなら教えてやろう。これから俺の最強の技をお前達に見せてやる」
「最強の技……?」
「忠告しておいてやる。防御するべきだと。防御しなければ、お前達の体は引き裂かれることになるだろう」
「どうして、わざわざそんなことを言うのさ?」
「教えた所で、どうにかなることではないからだ」
ローディスは、自らの技に対して絶対的な自身を持っていた。恐らく、その自信に嘘偽りはないだろう。彼がこれから放とうとしている技は、とても強力な技であるはずだ。
私は、リルフの前に立ちながら構えを変える。忠告通り、防御に徹することにしたのだ。
防げないといわれたが、逃げる訳にもいかない。リルフを守るためにも、私は防御しなければならないのだ。
「……大した覚悟だ。ならば、行くぞ。我が最強の技を受けるがいい!」
「来る!」
ローディスは、大地を蹴ってこちらに迫ってきた。そこまで距離がある訳ではないため、彼はすぐに私の元に辿り着くだろう。
だが、不思議なことに、私には彼の動きがゆっくりに見えた。いや、彼の動きだけではない。自分の体も、世界の全てがその速度を変えたのだ。
「喰らえ……!」
彼がゆっくりとその剣を振り上げるのが見える。私は、それを防御するために剣を構えた。
直後に、私の腕に衝撃が伝わってきた。とても重たい一撃だが、別に防げない訳ではない。
「クロス……」
「え?」
ゆっくりとした視界の中で、ローディスの剣はその勢いを殺さないまま、私の剣を切るような軌道を取った。
その直後、ローディスはその腕を翻した。彼の剣が、再び振り上げられていく。もう一撃が来ることを、私はすぐに悟った。
「スラッシュ!」
「なっ……!」
ローディスの二撃目は、一撃目と交差するような攻撃だった。私は、一撃目を受け止めたままの体勢でそれを受けることになった。
というのも、ローディスの動きは高速だったのだ。私が構えを変えたりする暇もない程の刹那に、彼は攻撃を放ってきたのである。
一撃目の衝撃が残っている中、二撃目の衝撃を受けたため、私には二つの衝撃が重なって伝わってきた。
いや、私だけではない。この剣にも、重なり合った衝撃が伝わっている。その衝撃に、剣は耐え切れなかった。私の剣は、中腹部が砕け散り、折れてしまっていたのだ。




