62.王都にて④
「さて、早速で悪いが、本題に入らせてもらっても構わないだろうか? お主達には、いち早くこの事実を知ってもらいたいのだ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「うむ……」
国王様は、すぐに本題に入ろうとしていた。その様子を見ていて、私は気づいた。国王様も、ラナキンス伯爵のように少し焦っているのだ。
どうやら、これから話すことは、とても重要なことであるらしい。伯爵だけではなく、国王様も焦るようなことなのだから、それは間違いないだろう。
当然のことながら、それはリルフに関することであるはずだ。この子の正体が、何か国を揺るがすとでもいうのだろうか。
「フェリナよ。お主はそこにいる子……リルフが何者であるかということについて、何か予想などをしているだろうか?」
「予想ですか? えっと……友達から、もしかしたら竜なんじゃないかと言われて、私もそうなんじゃないかと思っているんですけど……」
「なるほど……その予想は正しい。その子の正体は、まさしく竜なのだ」
「リルフが……竜……」
国王様の言葉に対して、私はそれ程驚いていなかった。そのことに関しては、事前にある程度予想していたからだ。
竜でなかったなら驚いていただろうが、竜だったのならば、なんというか納得である。やはりそうだったのかという感想しか出てこない。
だが、きっと重要なのはここからなのだろう。リルフが竜であることが、どういうことなのか。国王様は、今からそれを話してくれるはずだ。
「……リルフは、ただの竜ではない。特別な竜なのだ」
「特別な竜?」
「豊穣の竜、災禍の竜……その呼び方は、様々ある。だが、その性質を一番わかりやすく表しているのは、転生竜と呼ぶことが正しいだろうか」
「転生竜……転生? それって……」
「転生竜は、その生を何度も繰り返す。知識を引き継ぎながら、生を繰り返すことで、より強大な力を得ていくのだ」
「なっ……!」
国王様の言葉に、私は驚いた。知識を引き継ぐ。その性質が、リルフの現状と合致していたからだ。
リルフは言語を理解し、様々な知識を有している。知識を引き継ぐというなら、それは納得できることだ。
「ボクが……転生竜?」
驚いているのは、リルフも同じだった。今、この子は何を思っているのだろうか。自分の正体を聞かされて、どう思っているのだろうか。
それに納得している可能性はある。この子も、自分が知識を持っていることに対しては疑問を持っていた。転生という言葉は、その答えとなるだろう。だから、納得しているのかもしれない。
あるいは、納得していないのだろうか。いくら言葉で伝えられても、自分が生まれ変わっているなんて、納得できることではないかもしれない。
そもそも、国王様が本当のことを言っているかはわからない。彼を信頼しきれている訳でもないので、その言葉が嘘の可能性はある。
だが、リルフの現状と一致しているため、私は結構信じてしまっている。国王様の裏がなさそうな雰囲気も相まって、私は彼の言葉を受け入れてしまっているのだ。




