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6.刷り込みで母親に?②

「ねえ、フェリナ。あなた、刷り込みというものは知っている?」

「刷り込み? えっと……」


 そこで、エルッサさんはそのようなことを言ってきた。

 刷り込み、その言葉は聞いたことがある。確か、動物が最初に見たものを親だと認識するといった現象だったはずだ。

 何故、エルッサさんがそのようなことを言ってきたのか。それを考えて、私はある結論に達した。


「つまり……この子は最初に見た私を、親だと思っているということですか?」

「ええ、そういうことだと思うわ。その子にとって、あなたはお母さん。だから、怖くない。そういうことなのではないかしら?」

「お母さん……?」


 エルッサさんから告げられた言葉に、私は困惑していた。私が、この子のお母さん。それは、なんともいえなくなるような言葉だった。

 だが、それは事実であるような気がする。この子が私を怖がらず、他者を怖がる理由は、それだけで説明できるからだ。


「ピィ?」

「あら? 少し私に興味が出てきたのかしら?」

「もしかして、私がエルッサさんと仲良さそうにしているから……?」

「多分、そうね。お母さんと仲良くしているなら大丈夫だと思ったということかしら?」


 エルッサさんは、ゆっくり謎の生物に手を伸ばした。腕の中で、小さな体が少し強張った気がするが、先程よりは怯えていない。

 エルッサさんの手が触れて、その頭をゆっくりと撫でていく。特に抵抗もしていないので、この子は彼女のことを受け入れたということだろう。


「ピィ……」

「あら? 意外とすべすべとしているのね……少し、羨ましいくらい」


 エルッサさんは、興味深そうにしていた。この子の体は、触り心地がいい。すべすべとしていて、確かに羨ましいものだ。

 そう考えて、私はこの子の体が人間の肌と似ていることに気づいた。益々、不思議な生き物である。


「可愛いわね、この子」

「そうですよね」

「ピィ?」


 エルッサさんの言葉に、私は同意した。

 この子が、どのような生物なのかは、まったくわからない。だが、可愛いということはわかる。

 その見た目もそうだが、仕草などに対しても、そのように思う。甘えてくる仕草には愛らしさに溢れているし、撫でられるのが好きというのも可愛らしい性格であるといえる。

 このような生物が、危険な生物であるとは考えたくはない。人間に対しても、恐怖はあるが敵意はないので、恐らくそういう生物ではないと思うのだが。


「とりあえず、この子を飼うのはいいけど、ちゃんと面倒を見るのよ? 命を預かるということは、きちんと理解しなさい」

「あ、はい。それは、わかっています」

「そう……それなら、いいわ」


 私の言葉に、エルッサさんは笑顔を見せてくれた。

 彼女の言う通り、命を預かるというのは責任が伴うことだ。その意識をしっかりと持って、この子と向き合うべきだろう。

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