58.進化した竜⑥
「そういえば、お母さん、ボクのことが怖くはない?」
「え?」
私が自らの疑問をリルフに聞こうか迷っていると、先にリルフから新たな質問が投げかけられていた。
自分のことが怖くないかどうか。その質問の意味も、私にはよくわからない。リルフのどこに怖がる要素があるというのだろうか。
「あんな風に変身して、すごい力があって……そんなボクが、お母さんは怖くないのか、気になって……」
「ああ、あの変身のことを気にしていたんだね」
「うん……」
リルフが気にしていたのは、自分が大きな姿に変身していたからのようだ。
あの姿を見ても、私のこの子に対する印象は大して変わっていない。少し変わったが、それは別に恐怖だとかそういう感情ではない。
「あはは、それなら心配することないよ。私は、リルフのことが怖いなんて思っていない。質問されて、意味がわからないと思ったくらいにね」
「そうなんだ……」
私の答えに、リルフは安心したような表情をした。その表情を見ていると、私も嬉しくなってくる。
その表情を見ていて、私はあの変身のことを思い出す。そういえば、あの怪しい集団はリルフのことをとても怖がっていたのだ。
それを見ていたから、リルフは私も怖がっていると思ったのかもしれない。なんというか、つくづく迷惑な人達である。
「というか、お礼を言わないといけないよね。あの時、助けてくれて、ありがとうね。リルフのことが怖くなったりはしていないけど、少し印象が変わったよ。頼りになるってね」
「お母さん……」
「ああ、でも、まだまだ甘えん坊だね」
私の言葉を聞いて、リルフはその身を寄せてきた。そうやってすぐに私の胸に飛び込んでくる部分は、本当に変わっていない。
「……話をするのは楽しいけど、そろそろ休んだ方がいいかも」
「あ、そうだね……王都に、行くんだもんね」
「不安?」
「少し……」
リルフの不安は、当然のものである。私だって、王都に行くには結構不安だ。
でも、行かないという選択肢は取れない。その選択肢は、王国を敵に回すからだ。
もっとも、リルフに危害を加えられるようなら、私は王国を敵に回しても構わないと思っている。穏便に済むならそれでいいのだが、いざという時は二人でどこか別の国にでもいかなければならないだろう。
「大丈夫、私が一緒だから……」
「お母さん……」
私は、リルフを抱きしめる力を強くする。この子は、絶対に守ってみせる。例え、誰を敵に回しても。
「うん、大丈夫だと思う……お休み、お母さん」
「リルフ……うん、お休み」
リルフの言葉に、私はゆっくりと応えた。こうして、私達は明日に備えて休むのだった。




