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刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。  作者: 木山楽斗


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57.進化した竜⑤

 私は、リルフとともに部屋に戻って来ていた。お風呂に入ってさっぱりしてから、今は二人でベッドに寝転んでいる。

 ラナキンス伯爵との約束により、明日は王都に向かわなければならない。そのため、今からゆっくりと休息するのだ。


「ふぅ……」

「あの、お母さん?」

「うん? どうかしたの?」


 私が落ち着いていると、リルフが話しかけてきた。なんだか、少したどたどしい感じだ。

 何か話しにくいことがあるのかもしれない。私は気持ちを切り替えて、リルフの話に構える。


「ご、ごめんなさい……」

「え?」


 リルフは急に謝ってきた。それがあまりに唐突だったため、私は少し困惑してしまう。一体、リルフは何を謝っているのだろうか。


「どうしたの? 急に?」

「えっと……勝手に抜け出しちゃって、ごめんなさい」

「うん? ……ああ、そっか、そういうことか」


 リルフの言葉で、私はやっと謝罪の意味を理解した。この子は、夜中に一人で抜け出したことを謝っているのだ。

 なんというか、私の頭からはその事実がすっかりと抜けていた。色々とあり過ぎて、リルフが抜け出したという前提が吹き飛んでいたのだ。


「そうだね……まあ、確かに勝手に抜け出すのはいけないことだったかな」

「うん……」

「今度から、何かあったら相談すること。一人で悩んで勝手なことはしないで欲しいな」

「わかった……そうする」


 私は、ゆっくりとリルフの頭を撫でる。

 色々と思いつめた結果、この子は私の元を飛び出していった。それが、私達のことを思ってのことだということはわかっている。だが、それでもそういうことはやめて欲しいのだ。

 リルフが私達のことを思っているように、私達もリルフのことを思っている。その思いがある限り、そんな選択はして欲しくないのだ。


「ねえ、お母さん?」

「うん? 何?」

「どうして、ボクがあの森にいるってわかったの?」

「え? ああ……」


 リルフの質問に、私はすぐに答えることができなかった。なぜなら、私自身もその答えがよくわかっていなかったからだ。

 私は、どうしてあそこにリルフがいると思ったのだろう。あの時は、あそこにいるという確信すら感じていた。今考えてみれば、それは不思議なことである。


「どうしてだろうね……でも、リルフはなんとなくあそこにいるんだって。思ったんだ」

「なんとなく……そうなんだ」


 考えてもわからないので、結局私は素直に言うことしかできなかった。

 そんな私の回答に、リルフは何故か満足気な表情をしている。この答えでその表情をするというのは、どういうことなのだろうか。

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