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5.刷り込みで母親に?①

 私は、宿に帰って来ていた。まずは、エルッサさんに事情を説明しなければならない。

 基本的に優しい人だが、この子に対して、どういう反応をするのかは、正直言ってわからない。

 だが、隠すこともできないので、とにかく話してみるしかない。そう思って、私はゆっくりとエルッサさんの元に向かう。


「エルッサさん、ただいま帰りました……」

「あら、フェリナ。帰ったのね……え?」

「あ、あはは……」


 エルッサさんは、私の胸に抱きかかえられている生物に対して、目を丸くしていた。ここに来る道中、何人かに見られて同じような顔はされていたので、その反応自体はある程度予想できていた。

 問題は、ここから何を言われるかだ。少し緊張しながら、私は彼女の事情を説明することにする。


「実は、森でこの子を拾って……」

「この子って、その子は一体なんなの?」

「わかりません……ただ、卵から生まれたばかりで、そのまま置いていくと、あんまりいい結果にはならないと思って……」

「その、話がまったく入って来ないわ。少し、落ち着かせて……」

「あ、はい……」


 エルッサさんは、何度か深呼吸をしていた。どうやら、色々と混乱しているようである。

 状況を考えると、それは当然のことだ。お墓参りにいった従業員が、見たこともない生物を抱えて戻ってきた。彼女からすれば、訳がわからないだろう。


「えっと……つまり、捨て猫を拾ってきたみたいな話なのよね?」

「あ、はい。まあ、そういうことだと思います」

「うーん。まあ、あなたが動物を飼いたいというのなら、それはあなたの領分だから、特に言うことはないのだけれど、問題はその子がどういう生き物なのかわからないということね」

「そうですよね……」


 エルッサさんは、すぐに状況を理解してくれていた。私が驚く程に落ち着きながら、現状を整理してくれていた。

 こういう時にすぐに落ち着けるのは、人生経験が豊富だからなのだろうか。こういう大人になりたい。状況とは関係なく、私はそんなことを思っていた。


「新種の生き物なのかしら? だとしたら、大発見ともいえるけど……」

「ピィ……」

「あら? 怯えているのね……」

「そうなんです。町に入ってから震えていて……」


 エルッサさんは、私の腕の中にいる小さな命が震えていることに気づいた。ここに来るまでもそうだったのだが、この子はずっと震えていたのだ。


「多分、人間が怖いんでしょうけど……」

「……あなたは平気という訳ね」


 町に入ってから震え始めたので、恐らくこの子は人間が怖いのだと思う。

 しかし、そう考えると疑問も浮かんでくる。人間が怖いなら、私の胸に何故飛び込んできたのだろうか。

 この子の行動原理が、よくわからない。一体どうしてこの子は、私のことだけは平気だったのだろうか。

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