43.怪しげな集団⑦
私は、リルフとともに自室にいた。話し合いの結果、今日は兄貴もこの宿屋に泊まってくれることになった。
これで、あいつらが来てもすぐに対応してくれる。それは、私にとってとても頼もしいことだ。
しかも、ミルーシャもメルラムも残ってくれることになった。二人とも、リルフのことを心配してくれているようだ。それも、私にとってとても嬉しいことである。
「……リルフ、大丈夫?」
「え? あっ……うん、大丈夫だよ」
そんな皆に心配されているリルフは、とても大丈夫そうではなかった。あの出来事が起きてから、心ここにあらずという感じなのだ。
それは、当然のことではあるだろう。あんな出来事があって、そう簡単に立ち直れるはずはない。
だから、私はこの子をしっかりと支えてあげなければならない。この子の不安を少しでも払えるように、傍にいてあげるべきなのだ。
「そういえば……お母さん、少し聞いてもいいかな?」
「うん? 何かな?」
「アラーグさんは、お母さんのお兄さんなの?」
「え? ああ……」
そこで、リルフはそんなことを聞いてきた。
そういえば、この子にはまだそのことを説明していない。はた目から見れば、確かに私と兄貴は兄妹に見えるだろう。私が兄貴と言っているのだから、それは当然のことだ。
だが、私と兄貴は実の兄妹という訳ではない。私としては、それに勝る程劣らない程の絆があると思っているが、血の繋がりはないのだ。
そのことを話すには、私の過去から話す必要がある。元々話そうと思っていたことなので、丁度いいのかもしれない。リルフに私の過去も含めて、話を聞いてもらうことにしよう。
「リルフ、実はね……私は、孤児院の出身なんだ」
「孤児院?」
「親のいない子供達が引き取られる場所……かな? 私も、そして兄貴も、そこの出身なんだ」
「……そうなんだ」
私の言葉に、リルフは少し落ち込んでしまった。確かに、あまり明るい話ではない。それも、仕方ないことだろう。
私としては、これを暗い話だと捉えたことはあまりない。生まれた時からそうだったから、そういう風には思わないのだ。
ただ、他者から見ればどう見えるかは今までの経験から大体わかっている。リルフの反応についても、理解することはできる。
「兄貴は、頼りになる人でね……まあ、だから、孤児院では兄貴と言われていたんだ」
「それで、お母さんもそう呼んでいるんだね……」
「うん……兄貴は、孤児院を出た後、王都に行って騎士になってね。その後、こっちに帰って来たんだ。駐在騎士として、この町を守るために……」
兄貴がこの町に戻って来てくれたのは、私にとってとても嬉しいことだった。やはり、同じ孤児院出身の人と一緒の町で暮らせるのは喜ばしいことだったのだ。




