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4.竜との出会い④

「ピピィ!」

「うわあっ!」


 産声をあげながら生まれたのは、見たことがない生物だった。

 トカゲのような顔に、アシカのような体、長い尻尾、緑色の体色といった外見的な特徴からは、この生き物がどういう生物なのか、あまり理解ができない。


「ピィ!」

「え? うわあっ!」


 そんなことを考えていると、謎の生物は私の胸に飛び込んできた。動けない私は、当然それを受け止めるしかない。

「ピィ……ピィ……」

「え、えっと……」


 謎の生物は、私にその体を擦りつけてきた。まるで、甘えるかのような仕草に、私は困惑することしかできない。

 ただ一つわかったことは、この生物から温もりを感じるということである。あの光の温もりは、この子の体温だったのだろうか。そんなことを、私はぼんやりと考えていた。


「ピィ……?」

「え? 何……かな?」


 そこで、生物は私を上目遣いで見つめてきた。改めて見てみると、意外と可愛い顔をしている。こうやってみいると、なんだか犬のようにも見えてきた。

 この子を犬だと考えると、どうして欲しいかはなんとなく理解することができた。恐怖もあったが、私はとりあえず謎の生物の頭に手を置いてみる。


「ピィ……」

「正解……なのかな?」


 私がゆっくりと頭を撫でると、謎の生物は気持ちよさそうな声をあげた。やはり、撫でて欲しいという仕草だったようだ。

 謎の生物の頭は、すべすべとしていた。毛は生えていないのか、生えていてこの感触なのか。それはわからなかったが、案外悪くない感触だ。


「でも、どうしよう……?」

「ピィ?」


 頭を撫でながら、私は色々と考えていた。

 恐らく、この子は危険な魔物という訳ではないだろう。私を襲ってこなかったのだし、そう判断してもいいはずだ。

 それなら、このまま森に返すべきなのかもしれない。ただ、生まれたばかりのこの子がこの森で生きていけるのかというのは、少々不安な所である。

 自然の摂理といえば、それまでなのかもしれないが、一度このように懐かれたのに見捨てるというのは、どうにも気が進まない。エゴだといわれても、この子に手を貸してあげたいと思ってしまう。


「親は、いないよね……」

「ピィ?」


 周りを見渡しても、この子の親は見当たらない。餌を探しに行っているなどと考えることはできるが、見当たらない以上、それに頼ることはできないだろう。


「ピィ……」

「うーん……」


 そんなことを考えながら、私は謎の生物の首を撫でていた。気持ちよさそうにしているので、ここも撫でていいようだ。

 そんな様子を見ていて思った。可愛いと。

 そう思うと、益々この子を助けたいという気持ちが強くなっていく。もう私には、この子を見捨てようなどという考えはとれないだろう。


「……仕方ないよね」

「ピィ……?」


 私は、ゆっくりと謎の生物を抱きながら、立ち上がった。

 とりあえず、この子は連れて帰ることにした。その後のことは、帰りながら考えればいいだろう。

 という訳で、私は帰ることにした。謎の生物は、特に暴れることもなく、私の胸で大人しくしていた。

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