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刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。  作者: 木山楽斗


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37.怪しげな集団①

 伯爵家に行ったが、リルフの変身の謎はわからなかった。この子の真実は、まだまだ解き明かすことができないようである。

 わからないことを必要以上に考えても仕方ないので、私達は宿屋に帰ることにした。ミルーシャとメルラムも同行している。二人とも、あまり家で大人しくしていたくないらしく、宿屋に遊びに行くと言ってきたのだ。


「さてと……」


 私達は、裏口から入って中の様子を窺う。もし接客中だった場合、静かにしなければならないからだ。


「ここに……いるのは、わかっている」

「だから、そんなのは知らないって……」


 宿屋に戻った私達の耳に聞こえてきたのは、口論のような声だった。エルッサさんと誰かが言い争っているようだ。

 なんというか、あまりいい雰囲気ではないようである。厄介なお客さんでも来ているのだろうか。


「……あれは?」

「うわっ……」

「なんだろう……?」


 私とミルーシャとメルラムは、宿屋の受付にいる者達を見て、それぞれ声をあげた。

 そこにいたのは、黒いローブを着た怪しげな者達だった。それぞれ、動物を模した仮面をつけており、どう見てもまともな人達だとは思えない。


「……む? あいつらは?」

「まさか……」


 そんな怪しげな人達は、私達の方に顔を向けてきた。何やら、ざわざわしている。その視線は、リルフに向いているように思える。


「フェリナ! 逃げなさい!」

「エルッサさん!? ……いや、はい!」


 そこで、エルッサさんが大声をあげながらこちらに走ってきた。驚いた私だったが、その必死の形相が、何か緊急事態であることを告げている。

 という訳で、私は逃げることにした。裏口のドアを開けて、他の三人に合図を出す。


「皆!」

「ええ!」

「あ、うん!」

「リルフも!」

「え? あ、うん……」


 ミルーシャやメルラムは、すぐに理解してくれた。しかし、リルフはこの状況に色々と混乱しているようで、すぐに反応してくれなかった。

 きっと、リルフ自身もあの者達からの視線は感じていたはずだ。それも関係して、すぐに私の言葉に反応できなかったのだろう。

 私は、そんなリルフの手を引きながら逃げる。エルッサさんも合流して、五人での逃避が始まった。


「待て!」

「逃がすな!」


 すると、直後に怪しげな者達の怒号が聞こえてきた。どうやら、私達を追いかけて来るつもりのようである。


「エルッサさん、あいつらは!?」

「わからない……けど、トカゲに似た生物がここにいるだろうって、迫って来て……」

「トカゲに似た生物……」


 裏口から出て行き、私はエルッサさんに事情を聞いた。その言葉を聞いて、私はすぐに理解する。あの者達の狙いは、リルフなのだ。

 何故リルフを狙っているのか。それは、まったくわからない。

 だが、あんな怪しい者達に引き渡して、いいことがないことは間違いないだろう。エルッサさんの判断通り、逃げるべきである。

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