35.伯爵家にて⑤
「うーん……やっぱり、変身魔法というのは、奇妙なものね。一応、魔法によって、姿を変えたように見せるというのはあるわ。でも、その子は本当に姿を変えているのよね?」
「え? うん、そうだよ。実際に、触れるし……」
「なるほど、確かに、そうみたいね……」
ミルーシャの疑問に答えるように、私はリルフの頭を撫でた。このように触れられるので、姿を変えたように見せているという訳ではないだろう。
「それなら、実際に姿を変えたということよね……それは、あまり聞いたことがないわね。少なくとも、一般的な魔法という訳ではないと思うわ」
「一般的ではない魔法なら、あり得るの?」
「ええ、それこそ、伝承とかそういうものになるんだけど、そういう魔法があったという話はあるわ」
「ああ、それは僕も読んだことはあるね」
「伝承か……」
姿を変える魔法は、伝承として出てくるようなものであるらしい。まさか、そこまで珍しいものだったとは驚きである。
ただ、リルフが竜であるとしたら、その竜という存在もまた伝承によって示されている。そう考えると、リルフが変身魔法を使えてもおかしくはないのかもしれない。
「あ、そうだ。リルフは、寝ると姿を変えるんだ。そこについては、何かない?」
「寝ると姿を変える……魔力が高い子供が、稀に睡眠中に魔法を使うということはあるわ。強い力を制御できずに、暴走させてしまうらしいの」
「それじゃあ、リルフは魔力の暴走によって、姿を変えているのかな?」
「それを魔法だとしたら、その可能性は高いんじゃないかしら?」
リルフの変身を魔法と仮定すれば、眠っている間に暴走させている可能性が高そうだ。その現象については、そこまでおかしいものではないのかもしれない。
「それと、リルフは小さな姿の時に、お湯に入って姿を変えたんだ。緑色だった体色が青色になって、それで口から水を出したんだ」
「……体色の変化はよくわからないけど、口から水を出すというのは一般的な水の魔法ね」
「うん、それは私にもなんとなくわかったよ」
リルフが水を出したのは、普通の魔法である。それは、私も理解していたことだ。
だが、どちらかというと問題は変身の方である。私達は、その謎が知りたいのだ。
「残念だけど、私では力になれないみたいだわ。それが魔法であっても、未知の魔法としか言いようがないわね」
「そっか……」
「ごめんね、フェリナ」
「あ、いや、気にしないで。ミルーシャは、何も悪くないんだから」
私に対して、ミルーシャは申し訳なさそうにしていた。しかし、別に彼女が悪い訳ではない。そのため、謝る必要などないのだ。




