28.変身の謎⑥
「えっと……どういうこと?」
「ピィ?」
突然の変化に、私は困惑していた。
それは、リルフも同じであるようだ。明らかに、自分の変わった体色に戸惑っているような仕草をしている。
「ピィ……ピィ、ピィ」
「え? 何? 見ていて欲しい?」
「ピィ」
そこで、リルフが私に体を見ていて欲しいと示してきた。わざわざそう示してきたということは、何かをするということなのだろう。
リルフは、私とは反対の方向に顔を向けた。さらに、その口を少し開きながら、その表情を強張らせる。
「ピィ!」
「うわあっ!」
次の瞬間、リルフの口から水が出てきた。口を細めて、そこから水を一筋の線にして吐き出したのだ。
口に水を含んでいたなら、その芸当はおかしいものではない。しかし、リルフはそのようなことはしていないので、この水はこの子の体内から放たれているということになる。
「ピィ……」
「す、すごいね……」
「ピィ……ピィ……」
水を吐き出して、リルフは少しだけ疲弊していた。その姿を見て、私はあることを思いつく。
先程の水は、魔法なのではないだろうか。そう考えると、あの現象は納得できる。魔法であるならば、水を作り出すこともそこまで不思議なことではないからだ。
疲れているのも、生物に宿るエネルギーであり、魔法を使うのに必要な魔力を消費したからだと考えられる。
全ての状況が、先程の現象が魔法であると示している気がした。しかし、仮に今のが魔法であるとしても、私は困ってしまう。
「うーん……そうだ。ねえ、リルフ。明日、ミルーシャの元に行こうか?」
「ピィ?」
「ミルーシャは、火の魔法の名手なんだ。火の魔法に長けているラナキンス伯爵家の中でも、最も才能があるといわれているくらいに」
「ピィ?」
「あの一家は、代々そういう一家なんだ。火の魔法で、あの地位に就いたといわれているくらいに、皆得意らしいよ。まあ、メルラムには残念ながら、その才能はなかったみたいだけど……」
「ピィ……?」
私には、魔法のことはよくわからない。ある程度のことはわかるが、今はそれでは駄目だ。
という訳で、ミルーシャを頼ることにした。魔法関係なら、彼女に聞くべきだろう。火の魔法に長けており、今でも精進を欠かさない彼女なら、魔法についてよく知っているはずだ。
「いいかな? リルフの謎について、少しくらいはわかるかもしれないよ?」
「ピィ!」
「そっか。それなら、決まりだね。それじゃあ、今日はお風呂に入って、早く寝て。明日に備えようか。幸いといっていいかはわからないけど、お客さんも来ていないからね」
「ピピィ!」
リルフの返事も聞けたので、私はこの話を終わらせることにした。後は、明日考えればいいだろう。




