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2.竜との出会い②

 朝食の準備を終えて、少し仮眠を取ってから、私は町外れにある墓地まで来ていた。

 この墓地には、私の大切な人達がいる。今日は、そんな人達に近況報告をすることに決めたのだ。


「お父さん、お母さん、私は元気にやっています……」


 私のお父さんとお母さんは、私が物心つく前に亡くなっている。

 お母さんは、元々体が弱かったらしく、私を出産した時に亡くなったそうだ。お父さんは、それから少ししてから、事故で亡くなったらしい。

 祖父母も既に亡くなっていたことから、私は天涯孤独になった。そんな私は、町の孤児院で育ってきた。


「シスターも、私のことは心配しないでね」


 そんな孤児院のシスターも、ここにいる。シスターラルーファ、彼女は、私や他の孤児達の親代わりだった人だ。

 彼女が亡くなってから、もう三年にもなる。十二歳だった私も、もう十五歳。なんというか、あっという間だった。


 シスターが亡くなってから、孤児院は取り壊されることになった。この町を統治する貴族が、そういう判断をしたのだ。

 もちろん、そこで暮らしている人達の生活は、貴族も保証するつもりだったらしい。ほとんどの子が、里親や他の町の孤児院に引き取られているため、それは間違いないのだろう。


 だが、私だけは引き取り手が見つからなかった。貴族にとって、唯一の誤算が私だったのだ。

 といっても、私に何か特別な理由があって引き取られなかったという訳ではない。単純に、引き取り手の数と引き取られる子に差があったというだけだ。


 実際、最後に決まった子と私は、一つの孤児院にどちらかしか入れないという状況だった。私の方が年が上だったため、譲ったのだが、もしかしら彼女と私は逆になっていたかもしれない。

 もっとも、そんなのは絶対に嫌だった。私より年下の彼女が残れば、私よりも苦労することは理解できたからだ。

 孤児院の皆は、私にとって兄弟のような存在である。そんな人達に苦労して欲しくはない。私が残ったのは、当然のことなのだ。


「エルッサさんのおかげで、生活は困っていないからね……」


 残った私は、エルッサさんの元で働かせてもらうことになった。従業員の一人がやめたため、丁度人手が欲しかったらしいのだ。

 住む場所を提供してもらい、給料も貰っているので、今は生活に困っていない。大変だと思うこともあるが、別に苦労をしている訳でもないのだ。

 だから、きっとシスターも安心してくれているだろう。亡くなる少し前、私達のことを心配していたが、今の私達を見れば、きっとそう思ってくれるはずだ。


「三人とも、私は今、幸せだからね……」


 他者から見れば、私の境遇というものは、不幸なのかもしれない。でも、私はそう思っていない。私の人生は、充分に幸せだと思っている。

 確かに、両親を失ったり、育ての親を失ったりしたのは悲しいことだ。しかし、いい人達に恵まれて、きちんと生きていけているのだから、人生が不幸だなんて、思わないのである。

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