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第八十三話 準備からの家臣宣言

 翌朝。目が覚めると、顔面にはいつもの丸いお腹が載っていた。その丸いお腹が言う。


「昨夜はたくさん(・・・・)お楽しみでしたね!」


 と。まさかモフモフに言われる日が来るとは思わなかった。


 若干恥ずかしい気持ちになり、朝の日課をこなしてから朝風呂の準備をし、彼女たちとお風呂に入る。もちろん、モフモフも一緒にだ。


 風呂から出たら、カーさんとネーさんを呼んで朝食を摂る。カーさんには親分やオークちゃん、白虎親子を招待することを頼む。

 幻獣や精霊が今日の夕方に出発することもあって、食事会は昼ご飯にしたのだ。


 カーさんは招待を終えた後は、残りのカードを処理する作業をさせられることが決定している。


 俺たちは食材集めだ。


 ラビくんの希望で、川イカの唐揚げが食卓に並ぶことは決定している。

 オークちゃんの好きなスモークチーズもあるし、今日はピザを焼こうかなとも思っている。お肉好きな狼兄弟や白虎ちゃんのために、牛ステーキやワニステーキも用意する。黄色ドロンのソースをかけたステーキだ。


 酸味が効いたソースが脂を洗い流すから、お肉を食べすぎてしまわないか心配だ。特に胃痛常習者のラビくんは。


「主様、私もお手伝いします」


「アーク殿、吾輩も手伝うぞ!」


「「ご主人様! 私たちも!」」


 家事スキルを得てから料理をするようになったメルや、元々料理に興味を持って手伝ってくれていたレニー、それから正式な奴隷となってやる気に満ちあふれているアイビーとローズが手伝いを買って出てくれた。


「……イカは大丈夫だっけ?」


 でもアイビーとローズは川イカが苦手だったはず。見なければ美味しいと言っていたが、仕込みはまだ無理だろう。


「「……頑張ります」」


「無理しないでね。他にもやることがあるからね」


「「はい」」


 準備は着々と進み、カーさんもカードの作業が終わり倒れ伏していた。アイラの監督は厳しかったようだ。


 ちなみに、我らが狼兄弟が何をしているかというと、ジャーキー衆と一緒にドロンの採取を行っている。ジャーキー衆は管理者に昇格するから、ドロンの収穫修めでもある。


 彼らも親分たちとの顔合わせも終わっているし、これからの連絡要員でもあるから、今日の食事会に参加する予定だ。


 つまり、餌付け第二弾である。


 今回は天使を鬼畜に堕としたドロン酒を振る舞う。抗う術がない美酒を味わい、こちら側に完堕ちするが良い! というのが、ラビくんたちの計画らしい。


 不在の間に、ドロン農園を荒らされないようにするためらしい。ドロン酒狂信者の目の前で農園荒らしをしようものなら、その者はきっと火刑に処されることだろう。


『来たぞ!』


「お待ちしてました! 熊姫様も来てくれたんですね!」


『うん! だって……今日でお別れなんでしょ? 【霊王】様捜しに行くんだよね?』


「うん……。【霊王】様を見つけたら紹介するね! ねっ、ラビくん!」


「――え? う、うん! もちろんだよ!」


『楽しみだな! ラ・ビ・く・ん!』


 親分は、ラビくんにも期待していると言うほど楽しみにしているようだ。

 ラビくんもやる気が出たようで、強い視線を親分に向けていた。俺も頑張らねば!


『私も来たわよ!』


「オークちゃん! そうだ! 渡しそびれていた装備を受け取ってもらえますか? 一応『自動サイズ調整機能』を付与してありますけど、不具合があれば今日中なら直せますので!」


『ありがとう! 楽しみだわ!』


 オークちゃんは、いつ何時何があっても大丈夫なように武具を常に身につけている。防具は普段着みたいなものだから、着心地の良さにもかなり気を遣った。


『これはいいわ! ありがとう! 大事にするわね!』


「命の方が大切なので、使い潰すつもりで使ってください! 次もいいものを創りますから!」


『ふふふっ。ありがとう!』


 オークちゃんが喜んでくれたことは本当に嬉しかった。少しでも恩を返せたかなと思う。


 次は親分のガントレットだ。


 親分にすぐ渡さなかった理由は、ガントレットを腕輪のように収納できないかと実験していたからだ。親分は普段から武器を身につけないが、緊急事態に武器を取りに行く暇などあるはずない。

 だから普段から持ち運べるように、形状記憶と形状変化を応用したものを研究していた。完成がギリギリなってしまったが、満足いくものができたのだ。


『腕輪を両腕にはめて魔力を込めればいいんだな?』


「そうです! 魔力を使うのは三パターンだけです。魔力を流して《収納》または《解放》と念じるだけで、腕輪とガントレットのどちらかになります。そして、ガントレット形態で親分の魔力を流して攻撃すれば、特殊鉱石製の爪や人工神金属に付与した特殊効果が発動します!」


『良いぞ、良いぞ!』


 可愛い……。すごく喜んでくれている。あまりはしゃがない親分が、珍しくはしゃいでいるのだ。可愛いくないはずない。


「ほら、ジャガーくんのも!」


 親分についてきたジャガーくんは、今まで一言も発さずにブスくれていた。俺に一歩先を行かれたのが相当悔しいようだ。


『――は? 頼んでないけど?』


「君が組手をしてくれたおかげで、正式な子分になれたからね。そのお礼だよ」


「素直じゃないなーー!」


「しっ!」


 茶化すラビくんの口を塞ぎ、ジャガーくんに装備を押しつける。


『まぁくれるならもらっといてやるよ!』


 ツンデレジャガーくんは、口では仕方がないと言いながらも喜んでいた。頬がピクピクと痙攣していたからな。


 プレゼントを渡した後は、食事会の開催である。しばらく味わうことができないだろう温かくて楽しい食事の時間を、後悔しないように思う存分楽しもう。


 ◇


「美味いっす! 美味いっす! 美味いっすぅぅぅぅーー!」


 ドロン酒を飲んだジャーキー衆が雄叫びを上げている。彼らもドロン酒の前に屈してしまい、何故ドロン農園が大切にされているのかを、身をもって理解させられていた。

 その結果、地獄の刑務官たちの作戦は達成され、彼らはドロン農園を死守することを誓っていた。


『この川イカのレシピをもらいたいんだが、いいか?』


 と、親分が言う。


 親分は川イカの唐揚げが大好物の一つだからな。酢味噌は匂いがキツいから苦手らしいけど、ニンニクの香ばしい匂いはたまらなく好きなんだそうだ。


「もちろんです! レシピ集を作ったので、親分のところの料理人に渡してください! オークちゃんのもありますからね!」


『すまんな!』


『あら! 私も? 嬉しいわ!』


 白虎ママに用意していないのは、カーさん経由で引っ越し先の料理好きに渡したからだ。パンダ大精霊様も喜んでくださったらしい。


 熊姫様はオークちゃんと一緒にチーズ系を食べ続けている。特にピザがお気に入りのようだ。


 ジャガーくんの面倒はラビくんがしている。我が家の食いしん坊筆頭が「アレ食べな! コレ食べな!」と、次々と目の前に置いていた。


 女性陣はタマさんを中心に食べたり、オークちゃんと話したりと全員が楽しい時間を送っていた。


 そんな楽しい昼食会の終盤に親分から声がかかる。


『話がある。ちょっとこっち来い!』


「はい! 今行きます!」


 いつもの挑発するような顔や面倒そうな顔ではなく、真面目で真剣な顔だった。

 他のみんなも気になったようで、意識がこちらに向いてるのが分かる。


『いいか? アーク、お前は俺から《具現化》を継承した。しかもその若さで第二形態までをだ。ここ最近の子分の中では群を抜いている』


 マジか……。親分が褒めてくれている……。やばい……泣きそうだ……。


『だから、お前には俺から〈天〉の称号を与える。アーク、俺――【武神獣】ゼオレスが〈霊魔天〉の称号を授け、家臣であることをここに宣言する!』


 膨れ上がる親分の闘気と魔力が大気を震わせる。森がざわめき、親分の宣言を祝福しているようだ。


「私――アークは〈霊魔天〉の称号に恥じないよう、生涯をとして精進していきます!」


『うむ。励めよ!』


 片膝をつき、右手を左胸に当てる礼を取りながら宣誓する。


「ちょ、ちょっと! ぶーちゃん! 進化してたの!?」


『当たり前だろ? 【武帝獣】って呼ばれるのが慣れてたから放置してただけ。そもそも【武帝獣】っていつの話だよ。【霊王】が封印される前だろ? 俺もそこまで怠け者じゃないから、進化しててもおかしくないだろ!』


「二つ名は……? 誰がつけたの? そんな種族いないでしょ!?」


『種族も変わった。プネウマベアという可愛い名前の種族になったぞ。二つ名はアルテア様がつけてくれたんだ! 割と最近だけど、夢に現れて話したぞ! 【霊王】をよろしくとも言われたな!』


「そ、そうなんだ……! でも大層な称号をつけたね! まさか〈天〉の称号を与えるとは……。反対した子が多いんじゃない? みんなの憧れだもんね!」


『反対? 知らんな。弱いやつは【天武】に入れんからな。実力で証明出来ない者の言葉に価値はない。騒ぐだけなら赤子でもできる。付き合うだけ時間の無駄だ』


「すでに〈天〉の字を持ってる者たちは?」


『あぁ、生後十年以内に《具現化》を成功させた者がいるなら話を聞くと言ったら、何故か全員黙り込んでしまった。ふぅ……やれやれだ』


 ラビくんと親分が話している内容を聞いていると、何やらとてつもなくすごい称号をもらってしまったことが分かる。

 何故ラビくんが詳しいとかはこの際横に置いとくとして、俺はこれまで以上に研鑽を積まねばならないようだ。


『おい! これで勝ったと思うなよ! オレも絶対に称号をもらって、すぐに抜いてやるからな! 筆頭家臣になるのはオレだからな! 覚えとけ!』


「筆頭家臣というと虎の兄さんを超えると……。俺も負けるつもりはない。抜くというのなら、次も追いつき俺が先を行く!」


『何だと! この野郎!』


『ちょっといいかしら?』


『――え! あっはい!』


 ジャガーくんもオークちゃんと手合わせしてボコボコにされたらしく、オークちゃんに対しても従順だ。若干女性恐怖症でもあるらしい。

 親分のところの女性陣は怖そうだもんな……。


『私からもお話しがあるの』


「はい」


『アーク、今日までよく頑張りました。武術の鍛練は日々の積み重ねだから、これからも続けていくことになるでしょう。でも、私から教えることは全て伝えました。私――【戦鬼将】イルリスが〈皆伝〉を与えます』


「……ありがとうございます」


 厳しくも優しく温かい指導があったから、今まで投げ出すことなく続けられた。結果、親分からも認められた。


 オークちゃんには感謝しかない。


『それと、彼女たちを大切にするのですよ。女の子を泣かせたら怒りますよ』


 優しく丁寧に言われているのに、めちゃくちゃ怖い……。


「はい! 大切にします!」


『よろしい!』


 その後、白虎親子とも談笑してお開きになった。それぞれと再会の約束をし、別れのあいさつを済ませる。

 俺たちも翌日の朝早くに洞窟を発ち、船にのるため町に行く予定だ。


 ラビくんには最終日くらい気絶訓練をやめればと言われたが、一度やめてしまうと今後も理由をつけて休みそうだと思い、気絶後に起こしてもらうようにお願いする。


 しばらく従魔たちやエルフ娘たちと会えなくなるから、お互い満足いくまで愛し合おうと思っているからだ。


 衣類関係のスキルを習熟したときに、可愛くてセクシーな下着も作っており、それらを全てプレゼントした。


 まぁ俺も目の保養という名のプレゼントをもらっているわけだが。


 普段とは違った姿に可愛さや健気さを感じ、体力が尽きるまでお互いを求め合うのだった。



お読みいただき、ありがとうございます!

ブックマーク登録と評価もしていただき、楽しい毎日を過ごせて感謝しています!

本当にありがとうございます!

次話で今章が終わり、数話の閑話を挟んだあと次章になります!


引き続き読んでいただければ幸いです!



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