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第七十五話 作製からのやりすぎ

 クロエと出会ってから、もうすぐ一年が経とうとしている。


 つまりは十歳になり、旅立つときが迫っているということだ。使命である【霊王】様を見つける旅である。


 立つ鳥跡を濁さずではないが、やり残しがないように行動するというのが、この一年の目標だった。


 まずは、装備作製である。


 俺含む全員の装備とオークちゃんや親分の装備を作ったわけだが、服を作る際の糸の提供は綿花の高位精霊であるネーさんが、コンプレックスである大きい蜘蛛になって提供してくれた。


 蜘蛛糸ってだけでも高級品なのに、綿花の高位精霊の蜘蛛糸だよ? 飾るタイプの国宝級である。


 それを俺が自作した足踏み織機でカタカタ織っていき、染め上げたものを使用した。このために図鑑や教本をたくさん買ったのだ。


 それにしてもネーさんは相当イヤな思いをしたのか、未だに不安げに隠れて大きい蜘蛛になる。我が家には怖がったりする者はおらず、ラビくんなんかは、遊びに来た白虎ちゃんと一緒に背中でお昼寝していたし、エルフたちは土下座で拝んでいた。


 新人奴隷達はまだ家族になっていないから、現在は農園管理人となったエルフたちに管理されている。


 次に木材は、レニーさんがわざわざトレントになって、渾身の力を込めて作ってくれたものを使っている。そのせいか、レニーさんの髪の色のように深い緑色をしていた。


 続いて、金属については地属性の迷宮があるから、自分の魔力をリソースにして大量生産した金を、毎日コツコツ気絶訓練で人工神金属のヒヒイロカネにしていった。アダマンタイトよりは軽いが、少し重めの金属だ。しかし、強度と高い魔力伝導性を併せ持った最高の金属である。


 人工でも大量に使える機会に使わずして、いったいいつ使うというのか。今でしょ!


 ということで、多少他の希少金属も使うが、基本的に大量生産した人工ヒヒイロカネを使っていく。


 最後に、親分とオークちゃんにもらってから保留にしていた特殊鉱石以外の鉱石だ。魔宝石を使った加工もしていく予定だが、鉱石も金属と同じ迷宮産である。


 さて、まずはずっと保留にしていた特殊鉱石の加工だ。『世界の鉱石図鑑』を見る限りでは、永久不変という石言葉を持つ『クロムスフェーン』にそっくりだった。

 深いオリーブグリーンの中に、赤や黄色などがきらめく宝石である。


 この特殊鉱石をファルシオンにしようと思っている。といっても、曲刀であるシャムシールのようなタイプのファルシオンだ。曲刀の(きっさき)を両刃にすることで、剣術スキルも活かせる刀を作ろうと思っている。


 幅広で丈夫な斬ることに特化した武器に、突きも加えれば鬼に金棒である。


 まぁ日本刀に憧れがあるため、人工神金属製の刀も作る予定だが、ファルシオンをメイン武器にするのは変わらない。


 柄と鍔部分は人工ヒヒイロカネで作り、鞘は木材に脅威度五のアーマードブルの革を張って作った。

 留め具などは人工ヒヒイロカネで統一しているから、黒地の革に赤を帯びた金色が映える。


 柄にも滑り止め用にアーマードブルの革を巻き付けてあるため、ギラギラと主張しすぎない拵えになっている。大変満足だ。


 でも、タマさんに怒られた。


 曰く、《硬化》に使用する以外の全ての魔力を圧縮して刀身の鉱石に付与したせいで、聖剣以上の武器になってしまった。

 分かる者が見れば、一生つきまとわれるくらいの代物になったから、普段使いはやめた方がいいらしい。


 内包された魔力のせいで、剣を向けられただけで卒倒する者も少なくないそうだ。


 しかし、ラビくんたちが「圧縮した魔力が金色に輝いて綺麗だった!」とか、「魔力が刀身に入ったとき中の赤色が爆発して、燃え上がっていたの!」とか、それぞれ楽しんでくれたみたいだから良しとしよう。


 ファルシオンも元々強敵相手にしか使う予定はなかったから、普段は《ストアハウス》に収納しておけばいいと思っている。


 代わりに魔術発動体も兼ねている伸縮警棒を作って、標準装備として使用する予定だ。人工アダマンタイトで外装を作り、内部を人工ヒヒイロカネで作ったことにより魔力伝導性も良く、武器としての強度も申し分ない。


 多少重くなったが、元々そこまで長くない上、警棒内は空洞になっている。対人戦に置いては、魔力なしで魔金属以上の盾にぶつけなければ問題はないはず。


 収納時はどこにでも隠しておけるだろうしね。


 他には、家族の証として全員分にお揃いの魔術発動体を作った。人型になったのだからという理由から、指輪型の魔術発動体である。一応人化が解けても良いように大きめに作り、サイズ変更の付与をしている。


 人工ミスリル製の指輪には、我が家の象徴たるドロンの果実をあしらっている。一人一人専用の木箱に入れてある。


 あと、魔術発動体繋がりでもう一つ。


 当初、棒術を習い始めていた頃は「斉天大聖」とか言いたくて始めたのだが、少し予定が変わってしまった。


 木材で六角棍を作り、基本六属性分の関連模様を一面ずつ彫っていき、両端に人工ヒヒイロカネ製の石突きを作る。

 彫り込んだ部分に特殊鉱石を流し込むように加工していく。一面ずつ各属性の魔力を流し込んだあと、無属性の魔力で全体を包んで完成させたのが、俺専用の魔術発動体である。


 光と闇属性が不足していたが、ラビくんが手伝ってくれたのだ。

 なんとラビくんは『空理属性』という特殊なもので、光と闇の複合属性らしい。さらに器用なラビくんは分割ができるという。


 人間のように魔術を使えることに疑問がないわけではないが、竜種も妖精族も使えると言われ納得した。


 魔力が不足するかもしれないと言われ考えた作戦は、俺がラビくんに魔力を放出して、ラビくんが各属性に変換するというものだ。


「ふわぁぁぁぁぁーーー!」


 と声を上げながら加工する姿はバカっぽく見えるが、同時に可愛くもあった。レニーさん含む三人の共同作業で作った六角棍は、とても素晴らしいできとなり、俺のお気に入り第一位になったのだ。


 深い緑色の六角棍を、俺が渾身の無属性の魔力で覆ったから木目が金色に光っていて、そのコントラストがすごくカッコいい。


 それに加え、各属性色を含んだクロムスフェーンと人工ヒヒイロカネが相まって、神秘的な存在感を放っている。

 ファルシオンとは違って、ギラギラせずに自己主張をしていた。……結果、怒られることになってしまったが、後悔はない。


 あとは見様見真似で創った特上模造刀風の刀や、円盾などの予備装備と、防具を兼ねた一張羅だ。


 パキスタンの正装風の服を二着作った。深い緑色と、深い青色の服だ。靴は女王ワニの革が大量にあるため、足甲も兼ねたブーツを作った。ブーツは服で隠れる予定だから、金を持った貧弱商人のフリをするつもりである。


 鬼畜天使の農奴を釣るためにはエサが必要なのだ。


 シャルワニ、シャルワル、ドゥバッタって言うのかな? ゆったりしたズボンに、ゆったりした長めのシャツ、詰襟の丈の長いコート。それに三メートルくらいの共布で作ったスカーフ。


 全てに付与用の魔術陣と、擬装用の柄をあしらった刺繍を金糸で入れてある。緑色の方は植物がメインで、青色の方は精霊や星がメインの刺繍になっている。まぁ目立つところは定番の刺繍にしているけど。


 ただ、満足したものができたこともあり、汚れない付与をしているとはいえ、予防しないのはどうかなと思い始めた結果、お揃いパートツーを製作した。


 脅威度五のワイバーンの革がずっと保留になっていたから、これでフード付きのローブを製作する。

 脅威度五の下位の方で、女王ワニたちの革よりは防御力は劣る。しかし、ゴツゴツしたワニよりも加工しやすく軽いので人気素材なのだ。

 防刃力も高く魔術防御も兼ねているし、複数の付与も可能である。


 何より、我が家のみんなが好きな色である深い緑色なのが大きい。


 ラビくんはネーさんの糸で裏地をつけた、フード付きのポンチョケープをにした。とても可愛く、攻撃力が増してしまった気がする。


 リムくんやネーさんには刺繍を施したスカーフに、サイズ変更の付与をつけたものを贈った。特にリムくんは従魔登録証をつける必要があるから、バッチをつけられるようにという理由もあってスカーフにした。


 当たり前だが、他の家族の分も忘れていない。


 巴御前に憧れているアイラさんにはズボン状になった水色の袴姿用の着物と、アイラさんの綺麗な鱗のような青を使った甲冑である。草摺(くさずり)には本人希望の鬼の顔を飾る。竜角があるため兜はない。武器は薙刀に、打刀と脇差しだ。


 メルさんは盾役なので重装備だ。基本は女王ワニの革鎧だが、部分的に人工ヒヒイロカネも使っている。動きよりも防御を重視している造りだ。またしても、黒い革にヒヒイロカネの色が映える。


 武器は円盾と戦斧に、予備で小剣を用意した。


 円盾と戦斧は特殊な形状にしている。まずは円盾の方だが、防御する面に希望があった鬼の飾りをつけ、口の部分から魔術を放てるようにしている。


 ガン・シールドと呼ばれているような感じである。さらに、盾を構えたときに前方が確認できないのは不便だろうと考え、鬼の目が映したものを盾の内側に投写するように付与した。


 あらかじめ魔力を充填しておく必要はあるが、便利な機能だと思う。


 戦斧は形状だけだ。片手でも振るえるような大きさまで縮めたハルバード状の武器だが、片側は斧で反対側がハンマー状になっている。もちろん、先端は槍だ。


 斬撃が効かない相手が出てきたら、叩き潰せるようにと考えハンマーも用意した。


 イムさんは革鎧がベースの忍者装束である。

 胸当てと手甲や足甲は、聖銀と呼ばれるチタンに酷似している金属を、人工神金属のように加工したものだ。手の甲の部分に鬼の顔と狼の顔の飾りを、それぞれの手につけて欲しいと要望を受け、その通りにした。


 ただの飾りではつまらないから、それぞれに魔力を込めれば障壁が発動するように付与する。機動力重視の防具は防御力が低いからね。


 色は艶消しの黒で統一している。イムさんらしい色で、とても似合っていると思う。


 武器は外装を俺のファルシオンと同様にした、神器を大きくした短剣を二本と、短弓サイズの複合弓だ。彼女は収納魔術を使えるから、弓を持っていても邪魔にはならないはず。


 矢筒は魔力を込めると矢ができる仕掛けになっている。その他には、スローイングナイフなどの暗器を専用のホルダーと一緒に用意する。


 レニーさんは悩んだ。美人のお姉さん系魔術師にスリット入りのドレスを着せようと思ったが、冒険には不向きのスタイルで侮られそうだ。


 そして喧嘩を買い、災害が起こる。


 地獄を体験した身としては回避できることは、絶対に回避するのが務めである。


 そこで思いついたのが、薄くて丈夫で軽くて伸縮性があるワイバーンの翼を使い、お尻から首元までチャック式の全身タイツを作った。チャックは機械もなければ、加工も面倒だったから教本を見ながら地魔術で複製した。


 スライダーは二つだから、トイレ時に全裸にならずに済むはずだ。

 もちろん、全身タイツの上から女王ワニの皮で作った革鎧を装備するのだが、太もも辺りまでのもので、動きを阻害しないようになっている。胸当てはイムさん同様に、人工神金属に加工した聖銀だ。


 要望で、胸当ての心臓があるだろう部分に鬼の顔を飾って欲しいとのことだ。パーティーメンバーで、お揃いにしたいのかな?


 武器は長杖と、予備で伸縮警棒と神器風のナイフだ。外装は違うようにしたが、中身は見た目がほぼ同じになっている。イムさんのを見て欲しくなったのかな。


 長杖を俺の六角棍同様の加工をし、持ち手部分と石突き部分は完成した。

 あとは、杖の上の魔術発動体だけだが、鈍器にも使えるように太陽の形になった。

 太陽を表す火が揺らいでいる部分を六つにし、それぞれの属性を持つ魔宝石を結晶化した【魔宝結晶】というものを、基本属性分だけ根元に埋め込んだ。


 この【魔宝結晶】というものは、抽出した後に球体にならなければ失敗という、高難度の加工技術が必要で、加工技術自体が秘伝のものだ。しかし、俺には【神の技術書『細工』】の自由閲覧権があり、加工するためのスキルもある。


 ミスらなければ作れるはずのものである。


 結晶内は属性ごとに竜巻が起きたり噴火が起きたりと、それぞれ違った光景を見ることができる。普段は迷宮で採れるかもしれないレベルの宝らしい。


 これらをヒヒイロカネで作った太陽で一部露出した状態で覆い、持ち手と太陽の間には無属性の【魔宝結晶】をはめ込む。太陽の表面に模様で隠した魔導回路を引いて完成である。


 そしてまたもや怒られるはめに……。まぁ抱きしめるほど喜んでくれたからいいけどね。



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