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第六十五話 商会からの使用規制

 俺たちはコウさんの案内で町を馬車で移動する。目指しているのは、クソババア系列を除いた商会で最大規模の大型商会だ。


 王都に本店を構えていて、ここ辺境伯領の領都では、主に魔境の希少素材の仕入れや、洞窟から南に行ったところにある迷宮の素材や武具などの買い付け業務をしているらしい。


 買い付けるための資金源確保のための商品を、個人所有の船で大量に運んできているらしく、かなり手広く商売をしているようだ。

 船を使った旅客輸送もしているようで、近い将来にお世話になるかもしれないから、できるだけ良い子どものフリをしようではないか。



『アークは何を買うつもり? ぼくはお酒!』


『知ってるよ。忘れてないから大丈夫だよ。俺はね、唐揚げが大好きなラビくんたちのためにも、大量の小麦粉を買って帰りたいと思っているよ』


『唐揚げ! ヨダレが出ちゃうよーー!』


 可愛い……。


『他は?』


『調味料などはもちろんだけど、布や糸を含む裁縫道具や各種生産業に必要な道具と、浄化機能付きの錬金釜が欲しい』


『錬金釜? 何で?』


『洞窟にある寸胴鍋がドロン酒用から薬用に変わったけど、料理用として使いたいんだよ。もちろん調理器具も追加で買うけど、大量に作れて、魔力を込めるだけで綺麗にしてくれる道具が欲しいなって』


『なるほどね! 陽光樹の葉の抽出液もたくさん作れるようにだね!? さすがだよ!』


 腕の中で「うむうむ!」と独自解釈をするラビくん。可愛い以外の言葉が見つからない。


「そろそろ着くが……いいのか?」


「えぇ。カモよ、ありがとうと感謝しています」


「……まぁ店の敷地内では何もして来ないと思うがな」


「帰りが楽しみです! さぁ、爆買いならぬ貴族買いしましょう!」


『おぉーー!』


 ◇


「えぇーと……お客様、本当によろしいんですか?」


「はい。ここから、向こうまで壁までの道具一式を各種一つずつ購入します! 村で職業訓練が始まって、適性検査をするそうです!」


「でしたら、初心者向けの入門セットの方がよろしいのでは? こちらは本職用の高級品ですから、少々値が張りますよ?」


「えぇ。ですが、高級なものに触れることも勉強だという方針なんです。僕自身も緊張で手が震えています」


「……村までの警備は大丈夫ですか?」


「えぇ。野営することなく帰れるように体力がある馬を二頭借りてきましたし、護衛も三人いますので」


「さようで御座いますか……。分かりました。お買い上げありがとうございます」


「いえいえ、お気遣い感謝します」


 よし! 多少変な子と思われたかもしれないけど、当初の予定通り鍛冶道具一式や革細工用の道具一式など、生産職用の道具を全て購入できた。


 何もお金が大量にあるから貴族買いをしているわけではない。お金があることも理由の一つだが、町に入ったときからスキル習熟のために《鑑定》を発動し続けている。


 いつの間にかつけてくれた【霊王】様の加護のおかげで、使えば使うほどスキルレベルが上がっていくから、常に複数同時展開しているのだ。


 今回は《観察》から派生した《鑑定》スキルに力を入れていた。習熟度によっては生物や人物、物品にステータスなどの情報を得ることができる素晴らしいスキルである。


 森の中以外にあるものの観察も習熟に必要だったこともあって、道具一式を選ぶ際もずっと《鑑定》していた。


 すると、初心者用のものは安いが、壊れても飽きても惜しくない程度の造りだったり、中古がほとんどだったのだ。


 対して、本職用のものはそれぞれ専門の職人が造った道具で、大切に使えば長い間使えるものだった。どうせ買うなら、初期投資が多少多くなってもいいものがいい。


 だから、絶対に引かない意志を持って店主にお願いした。


 ちなみに何故店主が対応しているかと言うと、コウさんに帰る宣言されたおっちゃんの商会だからだ。目の前の店主は支店長で、あっちは会長さんだ。


 支店長はコウさんの正体は知らないらしいが、最大の便宜を図るように指示されているようで、とても丁寧な対応だった。この人が邸で対応していたら、会長さんは真っ白にならなくて済んだかもしれない。


「お連れ様の購入品はどうしましょう?」


「荷車を一台売ってもらうことは可能ですか?」


「荷車でいいんですか?」


「はい。馬を分けますので」


 支店長は一瞬だけ口をあんぐりと開けて固まるも、すぐに気を引き締め直して少し大きめの荷車を用意した。その荷車に酒樽を次々に乗せていく。


 この状況から分かるだろうが、ラビくんたちは別のところにいる。食料品コーナーという楽園に。


 俺は酒樽の量を見て、急いで馬車のところに向かう。馬車を荷物仕様に変更するためだ。


 自分の馬車から出した風を装いながら、《ストアハウス》から魔境産の木材を出して荷車の荷台の高さを増やす。


 こっそりと森魔術を使い、少しの木材で強度を保てるようにする。重量を増やしすぎては車輪が埋まってしまい、動かなくなってしまうからだ。


 アイラさんを外して荷車に移動させる。


「ヒヒーン!」


 その際、スリスリと体をこすりつける仕草をするアイラさん。馬の姿だから可愛い。


「ブルルッ!」


「怒らないで。あとで行くから!」


 アイラさんを荷車に繋いだ後、メルさんを一頭引き用に繋ぎ直す。当然、満足するまで撫でてあげた。


「……お客様。少々御相談したいことがあります」


「お酒の量ですか……? すみません! そろそろ止めます!」


「いえ! そうではなく……」


 ん? 外では話しにくいことか?


「中でお聞きした方がいいですか?」


「お願いします」


 ついでにストップを伝えに行く。


『もう無理! 小麦粉が載せられないよ!』


『何故……《ストアハウス》を使えないんだろうか……』


『クソババアのせいだから!』


『クソーー!』


 もう追加できないようにラビくんを抱き上げ、食料コーナーから回収していく。


「それで、相談とは?」


「あの荷車を補強した木材は魔境の木材では?」


「……えぇ、そうです。村が近くにありますので」


 ――しくった。魔境の素材を買い付けに来ている商人なら、魔境の素材に気づかないわけないか……。


「商会の船を新造する予定でして、その材料に魔境の素材を使いたいのです。しかし冒険者に依頼を出しても中層以上の木材と偽って、外縁の木材を細かく切り分けて持ってくる次第でして……」


「細かく持ってきたら船を造れないでしょうに……」


「仰るとおりです。精々木工に使う程度でしょうが、私どもの依頼とは関係ないので、一向に入手できないのです」


「……仮に僕が持ってて提供したら、『辺境の冒険者でもできないことをやった者がいる。それは誰だ?』と、いらない詮索を受けることになりえません。僕は制限がある十歳未満の状態で無駄に目立ちたくはありません。今は利発な子どもが大金を持っているくらいでしょう。しかし、中層以上の木材を丸ごと持ってきた場合、有用なスキル持ちで戦闘力がある子どもになってしまう。貴族にも目をつけられては僕の人生は終わってしまいます」


 便宜を図れって言われてる手前、交渉しにくいだろうな。


「……えぇ、分かります。しかし……」


『アーク! ここで《ストアハウス》を使えるなら、まだまだ買えるね!』


『冒険者に依頼を出してなかったら売ってたけど、クソババアのお膝元でスキルを使うのはなぁ……。あと五年弱は島を出れないんだよ?』


『何で?』


『十歳未満は領境や国境を超えてはいけないんだよ。人口減少や人材流出を防ぐためにね。後日バレたら、強制送還されて犯罪奴隷になることも。十歳になったら学園に行ったり、国籍がない冒険者になる者もいるから大丈夫なんだけどね』


『貴族は?』


『お出かけできるのが貴族の特権だよ』


『……マジか。お酒……と唐揚げ……』


『太るよ?』


 すでにちょっと丸くなっているけど。


『ぼくは太らないんだよ? 魔力に変換してるんだからさ!』


「とりあえず今回は無理です。村で話し合ってからでないと。それにまだ個人的な商取引を許されてませんので」


「……分かりました。無理を言ってしまい、申し訳ありませんでした」


「いえ、大丈夫です」


 相談が終わった後は、ギリギリ載る量の小麦粉や砂糖などの調味料を購入したり、布や古着などを錬金釜の中に入れて詰め込んでいったりした。

 最後は、上から被せる革で押さえつけるように固定して完成だ。動くか分からない馬車の完成である。


 仮に動いたとしても一頭引きではないはずだ。


 とりあえず町の外まで頑張ってもらおう。外に出れば《ストアハウス》を使えるからさ。


「……この度は大量購入していただき誠にありがとうございます。またのお越し心よりお待ちしています」


「こちらこそありがとうございました」


 道具一式を買いあさったこともあって、普通に一千万フリムを超えた。荷車を買ったのもあるけど、特に錬金釜が高かった。浄化機能は予想していたよりも高価な部類らしい。


 あとは呑兵衛たちのお酒とおつまみが大きい。高級酒とかも気にせず購入していたからね。あのインターセプトした袋からお金を出しているラビくんは、とっても可愛かった。


 店員のお姉さんも同じように思っていたことだろう。「可愛い兎さんですね」と、言われたからね。


 さて、馬車は二台。片方は荷車だけども御者は必要だ。そちらはアイラさんが引き、コウさんが御者をして先行する。

 もう一台の自前馬車はメルさんが引き、レニーさんとイムさんが乗る。


 イムさんたちは俺が乗る馬車がどちらかと気にしているが、もちろん自前馬車の方だ。荷車の方はスペースがないからだが、乗る前にやることがある。


 馬車を押す。車輪が転がればどうとでもなる。地魔術で地面を持ち上げるし、表に回れば町中は石畳だ。《身体強化》で支えるフリして押してあげればいいだけ。


「では、また」


「お待ちしています」


 荷が満載の馬車に乗っているせいで好奇の視線に晒されたが、無事に町の外に出て帰路につく。……金魚のフンをくっつけて。


「止まれーー! お前が大金を持っていることは分かっている! 命が欲しければ大人しく着いてこい!」


 無視して進む。行きと違って爆走できないから急ぐ必要があるからだ。


「おい! 聞いているのか!?」


「聞いていますよ。お話しは移動しながらでもできるでしょ?」


「クソ! 舐めやがって!」


 賊は五人。全員馬に乗ってるとか、お金持ちの泥棒なのかな? 農奴か死体か……悩むな……。


 そうだ! 検証第三弾をしたい!


 死ぬようなものじゃないと思う。……多分だけど。


『アーク、《武威》を試そうとしている?』


『何で分かったの?』


『ぼくらは一心同体だからね!』


 可愛い。本当かどうかは分からないけど、どうでも良くなるほど可愛い。


『アークは《武威》を使わない方がいいと思うよ』


『《威圧》みたいなものでしょ?』


『近いけど違うよ。《威圧》は個人の経験に基づいた闘気や殺気を放って脅すスキル。対して《武威》は、《威圧》に追加効果を加えることで味方の士気を高めるんだよ。だから群れのリーダー以上は持ってるよ!』


『追加効果って?』


『倒した敵を想起させるんだよ。《武威》を受けた相手は、最低でも女王ワニの姿が見えるはず。倒せば倒したほど増えていくしね!』


『……じゃあ親分がやったら……』


『ぶーちゃん? ぶーちゃんはリムくんが吸収した《王威》以上のものを持ってるはず』


 ……やめておこう。十分必殺技だ。


 目の前にワニの大群が見えるんでしょ? 気が狂うでしょうよ。


 ここは新魔術を試すことで我慢するとしよう。


「雷よ、《雷撃》」


「グッ――」「ガッ――」「ウッ――」


 それぞれうめき声を上げながら落馬していた。見た目のおかげで簡単に仕留められたな。


 雷魔術は複合属性ということと、攻撃力が高いこと、ドM勇者の属性ということから獣人に人気だ。しかし、山火事の原因にもなるということからエルフは忌避する属性である。


 たとえ火属性と風属性を持っていたとしても、風属性しか使わないというのが一般的だ。五歳児くらいのハーフエルフが雷魔術を使うはずがないという先入観から、彼らは避ける暇もなく魔術を喰らうことになった。


 個人的にはドM勇者の属性だと思うと使いたくなくなるけどね。


「タマさん、欲しい?」


「いらないわ」


「了解です」


 ということで五人は、メルさんとアイラさんが仲良くペロリしましたとさ。馬は一応連れて帰る。


 二体がペロリしている間に収納できる物は全て《ストアハウス》に入れ、馬車を軽くして爆走して帰った。


「ただいまー!」



お読みいただき、ありがとうございます!

ブックマーク登録と評価もしていただき、狂喜乱舞しています。

しかも、なんとブックマークが百人を超えたのです!

すごく嬉しいです。これからも頑張ります!

お付き合いいただければ幸いです!

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