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第五十九話 鬼畜からの試練再び

 おもちゃや本を爆買いしてから数日が経った。爆買いの翌日は西洋模造剣や、特上模造刀を眺めたり振ったりと大いに楽しんだ。


 特に特上模造刀は、孫六兼元の三本杉が綺麗に写されていてカッコいい。ラビくんもカッコいいと言っていたから、やっぱり刀の良さは世界を超え、種族を超えるようだ。


 そして予想通り、西洋模造剣と特上模造刀では習得スキルが違った。

 タマさん曰く、まだレベル一だが、《剣術》と《刀術》がステータスに加わったらしい。


 それとエルフ問題も進展した。


 タマさんが、ドロン農園計画が一向に進まないことに不満を持ち、ペットたちを丸め込むべく行動したのだ。


 曰く、エルフの有力者の娘である。

 曰く、生かしておけばエルフを釣れる。

 曰く、雑魚は労働力にするべき。

 曰く、そのうち奴隷商人が来る。

 曰く、エルフ以外は優先権を譲る。


 などなど、天使をやめたと言っても過言でもない鬼畜っぷりを発揮した発言により、タマさんは牢屋に収監中のエルフの所有権を獲得した。


 その後すぐにエルフたちは隷属の首輪をつけ、農奴へと転職を果たす。


 ドロン農園の場所は洞窟の北側に造った。元々エントさんがいた場所で、今はポッカリと拓けている上に、エントさんが吸収していた特濃魔力水が地中に浸透していたおかげで、ドロン栽培に必要な高濃度の魔素が土に含まれている。


 少々木々を伐採して整えてあげれば、十分な広さを持った立派な農園の出来上がりだ。

 すぐ近くにエルフ専用の小屋を造ってあげ、風呂やトイレも設置してあげた。常識的な奴隷の住む家ではないと言われたが、俺の常識のベースは前世だから問題ない。


 それに一緒に生活するのに、不潔だったり臭かったりするのは絶対にやめてもらいたい。人間らしい生活をすることが我が家の奴隷であり、決して粗略には扱わない。


 では、娼婦にはしないのか? という問題が発生するが、俺からは無理強いしない。何故かというと、時間や生活に余裕が出てくれば、人間の三大欲求が勝手に働くと思ってるからだ。


 男女を別にして、そういう行為を禁止にする。さらに、自作の薬の試供と称して使用させれば志願して来るだろう。


 俺はただ待てばいいだけ。


 え? 鬼畜だって?


 そりゃあ師匠が鬼畜だもの。弟子も鬼畜になるだろうよ。しっかりと薫陶を受けているのだよ。


 ちなみ、ドロン農園のドロンは今まで挿し木から育てたものではなく、農園専用に挿し木から始めるものだ。

 農園が失敗したときに、プランターで育てたものまで失ったら呑兵衛たちが発狂することが予想できたからだ。


 リスクはしっかり管理しておかなければならないと、タマさんが力説していたから間違いない。


 ここまでのことはタマさんが率先して計画し、俺やエントさんに指示を出していた。でもエルフはタマさんが見えないから、鬼畜っぷりを発揮する悪の権化は俺だと思っているようだ。


 別にいいんだけど……なんか損をしている気がするんだよな……。


「アーク! いつ町に行くの!?」


 オークリームを売る必要はなくなったけど、せっかく作ったから売ろうという話になり、鏡餅たちの持ち物も使えないものは売ってしまおうとなった。ついでに情報を集めたり、図鑑を見て実践できそうなもので、必要な道具もあれば購入しようとも。


 たとえば染めものとか。レシピがある食品系とか。呑兵衛たちは《醸造》スキルもあるから、お酒造りに興味津々だ。


 説得法が「ぶーちゃんたちも喜ぶと思うよ!」というもので、喜ぶ親分とオークちゃんを想像してしまい、見事に説得されてしまった。


 俺は服とか鍛冶の道具が欲しかっただけで、お酒のことは後回しでいいと思っていたのだ。でも漫画にハマったラビくんとリムくんが、漫画で紹介されたお酒に興味を持ち、タマさんという鬼畜に報告してしまったわけだ。


「馬車の改造を終えたらね」


 図鑑を見て解体しつつ、荷台部分を新しく造り替えている。奴隷の血や汚物塗れの荷台は使いたくなかったし、鏡餅やクソババアの刻印がつけられていたら面倒事になる。


 解体して隅々まで確認して、魔力の残滓も全て消してから手持ちの木材で新造する予定だ。アンティーク風の加工をして、新品の荷馬車に乗る子どもという悪目立ちも阻止する。


「いつ完成するの?」


「あと数日かな?」


「二日?」


「そんなに早くない。七日くらいかな」


「えぇーーー!」


「あと悲しいお知らせがあります」


「無視?」


「してません。悲しいお知らせは……タマさん、エントさん、スライムさん以外はお留守番です!」


 ――時間が止まった。確実に止まった……気がする。


「何でぇぇぇーーー!」


「ガルルゥゥゥーー!」


「シュルルルーーー!」


「ゲコォォォォーー!」


 まぁこうなるでしょうね。


「ハイドラさんたちは大きいから。町に行ったら魔王襲来とか言われそうだよ。ラビくんはお話する珍しい幻獣だから。リムくんはフェンリルだから。五歳以上であれば街門で従魔の届け出を出せば、仮の従魔証をもらえるんだ。でも、役人の強権を使えば子どもから珍しい従魔を取り上げることは可能だから、正規の登録ができるまではお留守番を願おうかなと……」


「うぅぅぅ……いつまで……?」


「…………十歳まで」


「待てるかぁぁぁぁーーー! ずっと一緒って言ったでしょ!? ぼく、黙ってるから! いいでしょ!?」


「ガル!? ガルゥゥーー!」


「仕方ないよ! 小さくなっても翼が生えた珍しいフェンリルなんだから!」


 裏切り者とでも言われたのかな? それとラビくんはすでに行けると思っているみたいだ。さすがにダメとは言いにくい……。


 それとスライムさんがハイドラさんたちに詰められている。早く助けてあげねば……。


「スライムさんは途中から馬車を引くために必要なんだよ。まさかお馬さんになれるとは思わなかったよ」


「イム、頑張ったの!」


 この頑張ったが意味することは何かというと、馬型の魔物を積極的に狩って吸収していたことを意味する。それも一緒に行動できるようにと、普通の馬に近い姿の魔物を狙って。


 だからか知らないが、スライムさんが変身する馬は少し特殊な馬で、見た目は農耕馬のようにガッシリしているのに、速力や体力は軍馬以上で、魔法も使える。ハイスペックなお馬さんである。


 これは取り上げられるか? と思ったが、馬車には必要不可欠な上に、タマさんが太鼓判を押したから大丈夫だと思う。

 見た目が農耕馬で馬車を引いてきたのに取り上げたら、政敵につけ込む隙を与えることになったり、民の不満や不信に繋がったりとリスクの方が大きいだろうとのことだ。


 最悪、スライムになって逃げればいい。馬車は自作扱いだから収納できるしね。


 よって、スライムさんは同行することになる。


 エントさんは断る理由がなく、本人も行きたいと言うから許可しただけ。


 理由があって仕方がないことだが、とてつもなく言いにくかったのだ。ハイドラさんたちの落ち込み具合が酷いし、リムくんなんか拗ねてしまった。


 本当にどうしよう……。


 ◇


 悲しいお知らせをしてから三日が経ち、まもなく馬車が完成する。ラビくんがお手伝いまでして急がせたからだ。


 ハイドラさんたちはスライムさんを連れて旅立った。《変身》というレア能力を持つスライムを捜しに。スライムさんも抜け駆けという負い目があるようで、断ることなく同行していた。

 スライムさんが行く理由は同族を売ることではなく、生け捕りする際の捕獲兼運搬担当だ。


 リムくんはまだ拗ねている。


 洞窟の入口で丸まって無言の抗議をしている。それが可愛くて仕方がない。抗議が抗議になってないのだが、三日も粘り続けたリムくんに救世主が降臨した。


「グォ!」


「親分!」


「ぶーちゃん!」


「グォオォォォ!」(違うわぁぁぁ!)


「あれ? ぶーちゃんだよね?」


「グォ!」(違う!)


「おっかしいなーー?」


「……呼び方が嫌なんじゃないかな?」


「そうなの?」


「グォグォ!」(さすが子分だ!)


 ラビくんもデブ扱いされると全力で否定するくせに……。それに、親分は熊さんとしては普通体型だと思うけどな。


「……グォ?」(フェンリルは?)


 キョロキョロと周囲を見渡すが洞窟の陰に隠れているせいで、リムくんを見つけられなかったようだ。


「町に一緒に行けないと言ったら拗ねちゃいました」


「グォグォ?」(何で行けない?)


「フェンリルは珍しいから取り上げられるからです」


「グォグォ?」(違うならいいのか?)


「普通の狼なら大丈夫ですが、変身系の能力は持ってませんよ」


「グォ……グォ!」(ふむ……連れて来い!)


 そういえば酒宴のときに神器の話をしたな。覚えていたのかな? 結構酔っていたような気がするけど。


「リムくん、親分が呼んでるよ! 町に行く話を聞いて考えがあるみたいだよ!」


「ガルッ! ガルーー!」


 スクッと立ち上がって目にもとまらぬ速度で走って行くリムくんを追って、俺も急いで親分のところに戻った。


「アーク! 《擬態》が得意な魔物がいるから、これから狩りに行くって!」


「俺が戦うの?」


「ううん。自分が欲しい物は自分で手に入れろって言ってたから、リムくんが自分で狩ると思うよ! でも能力は神器を使ってあげてね!」


「もちろんだよ! それにしても相変わらずスパルタだな……」


「ぶーちゃんだからね!」


「グォ!」(違う!)


 否定する割りには背中にラビくんを乗せてあげ、俺とリムくんの訓練を兼ねた狩りが始まった。


 ちなみにエントさんも同行する。


 森に入るならドロン酒関係の薬草などを採取しろとタマさんが指示を出したのだが、親分のスパルタ訓練はそれどころではない。

 そこで、暇だというエントさんに同行を頼み、採取をしてもらうことに。


 ノシノシ進む親分についていくと、そこは以前連れてきてもらった深層の入口。

 少しの躊躇もなくズンズン進んでいく親分だが、俺は一歩一歩神経をすり減らしながら進んでいく。フェンリルであるリムくんも余裕はないようで、気を張り詰めているように見える。


 エントさんはさすがに格が違い、フラフラと欲しい薬草を採取しまくっている。採取法は図鑑の漫画で予習していたらしく、綺麗な状態で採取できているようだ。


 タマさんの褒めまくっている声が聞こえてくるため、辛うじてエントさんの行動が分かる。


「グォ!」(ここだ!)


 神経がすり減りすぎてどれくらい経ったか分からないが、周囲の魔素が濃いことから大分奥まで来たことだけは分かる。


 そして、そこは巨大な水場の近くにある岩場であった。



お読みいただき、ありがとうございます!

ブックマーク登録と評価もしていただき、三日連続で狂喜乱舞しています!

こんなにいいことがあるとは……。

これからもますます頑張れます!

ありがとうございます!

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