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第三十二話 栽培からのドロン酒

 ――《カタログ》――

 商品名 ブーメラン 三点セット

 購入額 三,〇〇〇 フリム

 詳 細 くの字 三叉 円盤型

 カート


 商品名 ミニトマト栽培キット

 購入額   八〇〇 フリム

 詳 細 種 土 肥料 プランター

 カート


 商品名 採掘体験キット 『宝石』

 購入額   八〇〇 フリム

 詳 細 本体 ハケ ミニツルハシ

 カート


 商品名 採掘体験キット 『化石』

 購入額 一,〇〇〇 フリム

 詳 細 本体 ハケ ミニツルハシ 箱

 カート


 商品名 多目的布 五枚セット

 購入額   四〇〇 フリム

 詳 細 生成り色

 カート


 合計額 六,〇〇〇 フリム

 カード   三〇〇 ポイント


 ラビくんたち(・・)が欲しいという栽培キットと、リムくんと遊ぶためのフライングディスク含むブーメランセットを購入する。


 ついでにラビくんが気になった採掘体験キットも二つ購入することに。「一緒にやろう!」の言葉を聞いたら、購入以外の選択肢は存在しないのだ。


 おまけで幼児が遊ぶための布を購入した。六,〇〇〇フリムちょうどにできそうだったし、なぜか農作業をさせられようとしていることを察して、汚れても構わないエプロンのようなものを作ろうと思ったからだ。


 しかし返品不可の商品が届いたあと、創作系のおもちゃ以外の加工は不可能だということに気づく。おもちゃはおもちゃとして使うか、スキル習得のために使うか、商品のアイデアとして使うかのどれかしか使用できないのだそうだ。


 つまり、模造剣買って研いだりも魔術を付与したりもできないというわけだ。


 仕方がないから布自体で遊ぶことにしようと思い諦めた。


「それでなんで栽培キット? お肉派じゃん。なんか嫌な予感がするんだけど」


「そんなことないよ! お肉が好きでもドロンの果実も好きだし、野菜が嫌いってことでもないしね!」


「じゃあすぐ終わるだろうからミニトマトの種を植えちゃうね」


「うん!」


 なぜそんなに嬉しそうなのかと不思議に思いながらも、説明書を読みながらプランターに土や肥料を入れ、最後に種を植えていく。


 魔力水をあげたら、あとは放置する。


「じゃあドロン酒を造りますね。ただ完成した後に相談があるんですけど……」


「なんです? 今言ってください」


「俺の《ストアハウス》って時間停止機能が標準ですよね? 熟成ができないのですが、いいですよね? たぶん必要はないかと思いますから」


「……それについては後ほど確認して参りますから、気にせず造ってください」


 ……失敗したときが恐ろしい。


「前世の酒造とも今世の酒造とも違いますから、温かく見守っていてください」


 とりあえずハードルは下げておく。


 俺の酒造方法は料理などの食品系のスキルではなく、《調合》スキルを用いた酒造方法である。お酒は『百薬の長』と言われているし、薬っぽいお酒は前世にもあった。養○酒は代表的なものだろう。


 美味しくなかったけどね。


 でも今世の薬酒は美味しくあって欲しいのだ。ドロンの果実という最高の食材を使うのだから。


「期待しています!」


 全然ハードルが下がらない。


「まずはこれです。『消毒の実』を使ってアルコールを搾り出します」


 今世での消毒液に使われるバスケットボールくらいの果実だ。気になっていて表面は結構硬い。上から降ってくる消毒の実で怪我をした後は、消毒の実で作った傷薬を塗るという経験を誰でも一度はするほど有名な果実だ。


「今回は楽ですね」


 アルコールの移動を念じながら【リムーブナイフ】を果実に突き刺し、巨大リュックから取り出した寸胴みたいな鍋の内側にコツンと(きっさき)を当てる。


 すると、何も入ってなかった寸胴に並々とアルコールだけが移動した。高純度のアルコールだから作業が楽になる。


「リムくん、すごい!」


「素晴らしい活躍です!」


「ガ、ガウゥゥゥゥ!」


 ナイフとリムくんは関係ないって言っていたのに、二人が褒めるから恥ずかしそうに顔を隠していた。


「次は臭い消しの葉です。平民がお風呂に入れなくてもあまり気にしないのは、お湯に潜らせたこの葉っぱをタオル代わりに体にこすりつけるからです。鬼の住処時代の前半はお世話になっていました。こちらはお湯に潜らせた後、表面の皮を剥いてからアルコールにつけ込み、アルコール特有の匂いを取ります」


「どれくらいつけるのです? ナイフは?」


「ナイフは一回なのでしょ? 匂いよりも純度を取ったので、今回は臭い消しを使います。たくさん使えば早いですから、三十分くらいじゃないですか。その間にドロンの果実の下処理をしますので、無駄な時間ではありませんよ」


「……必要なのですね。ならば仕方がないですね」


 必死すぎるだろ……。


「楽しみだねー!」


「ガウウーー!」


 チビッ子二人も何故か楽しみにしている。もしかして飲むつもりか? チビッ子は大丈夫なのか? 飲めないのは俺だけなのか?


「……二人は飲んでも大丈夫なの?」


「もちろん! ぼくらは幻獣だからね!」


「……ガウ!」


「リムくんは生まれたばかりじゃん」


 リムくんは不安そうにラビくんを見ると、ラビくんは「任せて」というかのように頷き前に出る。


「リムくんは神器生まれだから、アルコールや各種毒は全て分解できるんだよ。能力もあるから体調が悪くなっても、体内の異物を《移動》させて排出すればいいんだから!」


「ガウ!」


 ラビくんに頬ずりしてお礼を言うリムくん。モフモフ二人の可愛い光景に見入っていると、厳しい指摘が飛んできた。


「手が止まっていますよ」


「……すみません」


 俺の新しい師匠は、今までの師匠にも劣らず厳しい師匠のようで、酒造の最中に気を抜くと怖い威圧を飛ばして来るということが判明した。スキルの画面越しの威圧とはとても思えない圧力だった。


 気を抜かず集中してお酒を造ろう。


「表面の皮を剥がした後に出てきたスポンジみたいな葉の中身が膨らむまで、アルコールの中につけておきます。その間にドロンの果実の皮をよく洗ってから皮を剥き、果肉を軽く潰していきますよ」


「つ、潰すのですか!?」


「はい。アルコールと混じりやすくするためです。決して汁状にしてはいけません」


 誰も手伝える人がいないから一人で説明しながら造っていく。下ごしらえは結構重労働なのだ。


「臭い消しの葉は取り出してウェットティッシュにしましょう。一応アルコールにつけておいたわけですし」


 別の容器に臭い消しの葉を移して一度手を洗う。これからはドロンの果実の工程に入るから、アルコールの臭いを移さないように気をつけなければならない。


「ここでドロンの果実の皮を入れて香りつけを行います。その間、ドロン酒製造において重要と言えるポイントその一を行います」


「重要……。それをしなければドロン酒は完成しないということですね?」


「その通りです! この工程ともう一つの工程を省くと、何かよく分からない果実のお酒が出来上がると思うのです」


「なるほど……」


 そもそもドロンの果実に似ている果実の存在を伯爵家の書斎で見つけていた。そちらは林檎みたいな食感の果実で、『カリスの実』と呼ばれている。一応高級果実だが、魔境でなくても育つそうで、育成している貴族も多いらしい。


 伯爵家も例に漏れず育成していたから比べてみたのだが、栄養素が豊富ということ以外は全くの別物だった。魔力が含まれている感じもしなかった。


 そしてアルテア様から聞いたドロンの果実の育成方法である。魔素が濃いところになり、濃ければ濃いほど甘くなる。内包される魔力も多くなるということでもある。


 つまりは魔力や魔素が必要不可欠ということだ。


「ここが魔境の森でよかったです。まさか『陰陽草』と『陽光樹の葉』があるとは。これがなかったらドロン酒は完成しなかったでしょう」


「それは何ー?」


「『陰陽草』は回復薬を作る際に使われる安定剤と保存剤を兼ねているもので、最高級素材なんだよ。欠損の回復もできる再生薬などにも使われている超希少素材なんだ。『陽光樹の葉』は体力回復薬の高級素材で状態異常も回復するんだよ。一番すごいところは臭いもクセもなくて、どんな素材とも合わせられるところかな」


「そ、それがないと今後はお酒が造れないの……?」


「そうなるね」


「な、なんですって!?」


 ぶっちゃけドロンの果実よりも希少性が高く、特に陰陽草が希少で、あったこと自体が奇跡だと思えるほど貴重なのだ。本来は酒造に使うような薬草ではない。


 薬師さんに知られたら殺されるかもしれない案件だ。この薬草があれば多くの人を助けられるはずだと言われること間違いない。


「この二つの薬草の成分抽出を行うのですが、めちゃくちゃ面倒なのでナイフで終わらせます。……なんかドロン酒を造るために神器を得たような気がしないでもないけど、かなり助かっていますね」


「……どうすれば……」


「どうしよう……」


「ガウー……」


 三人は希少素材についてどうするか相談しているようだ。俺は女神様に奉納して、両親代わりの熊親分とオークちゃんに飲ませることができればいいと思っているから、そこまで切羽詰まってはいない。


 だって飲めないし。


「下ごしらえは全て終了したので、まもなく完成ですよ。完全な完成にはまだ時間がかかりますが」


「楽しみです!」


「ぼくも飲んだことないからなー!」


「ガウガウー!」


「リムくんは初めて飲むものになるんだね!」


 三人は相談を中断し、俺の近くに集まってきた。それにしてもスキルの板が自由に空中を移動する姿は、今世でもトップスリーに入るほど不思議な光景だ。シュールとも言える。


「皮を取り出し果肉を入れます。果肉を潰さないように軽くかき混ぜて行きます。そして重要ポイントその二。特濃魔力水を少々加えます。ポイントは水っぽくならないように、量ではなく質を選択することが最重要ポイントです」


 土木工事のせいで一割くらいないから、この後の土木工事を考えて全開時の七割くらいでいいかな。リムくんの顕現にも必要だしね。


「水よ、《清水》」


 ポトリと少し大きめの雫が一滴寸胴に落ちる。たった一滴なのに、かなりの質量を持っていそうな特濃魔力水はドプンッと寸胴のアルコール内に沈み込んでいった。


「特濃魔力水を入れたら陽光樹の葉の抽出液を入れて軽く一混ぜ。そのあとすぐに陰陽草の抽出液を入れて軽くもう一混ぜで完成です。本当は冷暗所でもう少し置いて、果肉が完全に溶けたあとにこす必要があるんですけどね。最後まで仕上げたものが本当のドロン酒です」


「こ……これが幻のドロン酒……なのね……」


 聞いてない……。


「アルコール度数はかなり高いので気をつけてください。でも二日酔いにはならないし、お酒なのに体にも悪くないものになっています」


 親分にはずっと元気でいて欲しいからね。



お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク登録と評価もありがたいです。

これからも頑張ります!

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