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第三十一話 密談からの同盟締結

「……よし! 行ったね! リムくん、ちょっとこっちに来て!」


「ガウ!」(分かった!)


 ぼくは霊王だからね。幻獣や知性ある魔獣と話すなんて簡単なんだ。

 でも人間にも《念話》というユニークスキルがあるから、今のうちに言ってはいけないことを教えておかないと事故が起きてしまう。


 アークは《心話》スキルがあったし習熟度も高かったから、いつ《念話》スキルが生えてもおかしくない。


「いい? ぼくのことを霊王様と呼んではいけません。ぼくは幻獣だということを貫き通すつもりだからね。ぼくのことはお兄ちゃんとでも呼んでくれればいいよ!」


「ガウーー、ガウガウー!」(えー、霊王様は霊王様だよ!)


「くっ! ぼ、ぼくのことを霊王様って言うとお別れしなきゃいけなくなるかもしれないんだよ!?」


「ガウ? ガウガウー!」(え? 喜んでくれるよ!)


「喜ぶかもしれないけど、霊王様なんて呼ばれたら……ぼくが家出するよ」


 ぼくは友達や家族が欲しいんであって、配下が欲しいわけじゃないんだ。せっかく見つけたずっと一緒にいてくれそうな友達に様付けされたら……辛くて辛くて毎日泣いちゃうよ。


「それにリムくんだって本来は狼の王種であるフェンリルなんだよ? 特殊属性の個体が複数しかいないフェンリルの中でも、君は特に珍しい存在なんだ。アークを奴隷にしてまで君を欲する可能性があるってことをアークに言うよ? そしたらリムくんだって様付けになるんだ!」


「……ガウー」(……ズルいよー)


「なんとでも言うといい! ぼくのことを霊王様って言わなければ、お互いが笑って過ごせるというものだよ!」


「……ガウー、ガウ?」(……分かった、兄ちゃん?)


「そう、それでいいんだよ!」


 よし。これで事故を防ぐことができるだろう。


「それと小さくってなれる?」


「ガウ! ガウガウッガウ?」(うん! でも戦闘力は低くなるよ?)


「低くなってもいいから小さくなれば一緒に生活できるね。一緒に寝れるかも!」


「ガウ? ガウガウ!」(本当? なるなる!)


 嬉しそうに頷くとすぐに小さくなり、普通の狼ほどの大きさになった。翼も小さくなり邪魔にならない大きさだ。今の状態でもぼくを乗せられそうで、それも嬉しく思う。


 初めての弟との生活も、アークとの生活並みに楽しみである。


「喜んでいるところ申し訳ありませんが、夜は一緒に寝れませんよ? 彼は気絶訓練をするようなので、魔力供給の経路が切れてしまい、強制送還されることは間違いないでしょうから」


 唐突にかけられるタマさんの言葉。


 驚きを通り越して焦っているのだが、表に出さないように必死に取り繕わなければならない。


「い、いつからそこに……?」


「始めからですね」


「き、聞いてた……?」


「……何をでしょう?」


 始めからいて聞いてないなんてことある? つまりは聞いてないフリをしてくれるってことでいいのかな?


「…………」


「……夜以外は一緒にいられると思いますよ。日中は膨大な魔力を消費する一助になるでしょうから、率先して顕現することをオススメします」


 やっぱり触れないようにしてくれるみたいだ。


「話し合いが済んだタイミングで話し掛けたのは、一つお願いを聞いてもらおうかと思いまして」


「な、何かな?」


「ドロンの果実の栽培を彼にしてもらいたいのですが、彼には《農耕》のスキルがないのです。幸いなことに森属性を得たようですので、成長促進の魔術は使えそうです。魔力水もあって地属性もある。彼は農耕をするために生まれてきたのではないかと思えるほどです!」


 す、すごい興奮している。


 お酒の話をしていた気がするけど、ドロンの果実の栽培もお酒のためならぼくにメリットはあるのかな? 説得のときに理由がないと困るよ?


 若干脅迫されている感じがしないこともないから、断ることはできそうもないしなぁ。


「もちろん、ラビくんたちにもメリットがありますよ?」


 ぼくの考えを先読みしたかのように、すでに回答を用意しているとは……。


「ラビくんは甘いものが好きだという情報を得ています。彼はドロンの果実で甘味を作るつもりのようです。しかし材料のドロンの果実は無限にあるわけではありません。わたしは師匠権限を使用してドロンの果実を確保させていただきます。ですが、ラビくんたちとも友好な関係を築いていきたいので、独り占めはよろしくないとも思っているのです!」


「じゃあ……分け合えばいいんじゃないかな?」


「ドロン酒は元々彼が父母に感謝を伝えるために造ろうとしているのです。そのおこぼれをわたしがもらいます。残ったものがモフモフに行くのですよ?」


「だから……父母以外で分け合えば……」


「……戦争が起きますよ? そして言いたくはないですが、ラビくんの隠していることがアルテア様にバレます」


 ここでまさかの脅迫……!?


 友好な関係をって言ってたじゃん! 嘘だったの? あれは嘘だったの!?


「わたしがバラすわけではありません。勝手にバレるのです」


「……どうゆうこと?」


「ドロン酒は未だかつて成功していなかった飲み物です。それが完成したとなれば御神酒として奉納しなければなりません。アルテア様もお酒は好きですし、定期的に飲みたくなるはずです。それほどのものがドロン酒なのですよ。過去の微妙なものでさえ、幻の銘酒として世界で名をはせたのですから」


 はぁとため息が漏れ聞こえ、不満だということがあふれ出ている。


「それが天界で広まったら、呑兵衛たちが催促をしに様子を見にくるでしょう? わたしがアルテア様に根回しをすることで、隠蔽することも可能なんですよ? でもそれにはある程度の量が必要なのです。そこの干し果実を食べてご覧なさい。甘味はそれ以上の味ですよ?」


 ぼくもドロンの果実くらいは食べたことあるけど、お腹も空いてたし圧力がすごかったからリムくんと一緒に食べてみた。


「うんまぁぁぁーー!」


「がうぅぅぅーー!」(うまぁぁぁーー!)


「そうでしょう! もっと欲しくなるでしょう? しかも魔力量を少しずつ増やしてくれるし、干し果実にすることで魔力を凝縮しているのか、魔力回復効果もあるのです。これは魔境でしか採れないのですが、彼の強さではここら辺のものしか採取できず、いつか採り尽くしてしまうのです。そして待っているのは絶望です!」


「なるほどなるほど! モフモフのおねだりが必要ってわけだね? でもスキルの狙い撃ちってできるの?」


「……わたしが誘導します!」


 いいの? それはダメなヤツでは……?


「じゃ、じゃあぼくもお手伝いしようかな!」


「……どのような?」


「加護を付与して称号がつけば、スキルの習得速度と習熟速度が通常の五倍になるんだ!」


「……それでは最近の勇者が弱かったのは……」


「ぼくの称号がなかったから半人前だったんだよ」


 霊王であるぼくの加護による称号は〈勇者〉。ママに選ばれた神子が勇者の職業を得て努力を積み重ね、ぼくが努力に見合った称号を授けることで、勇者の本当の職業授与の儀式が終了する。


 称号の〈勇者〉は最上位の加護しかつかないから、限界まで努力をしたと判断できなければその者は勇者(仮)としてしか意味をなさない。


 その点、アークが言っていたドM勇者は本当の勇者であったのは間違いない。


 でもアークに言われた今なら分かる。ドMだったから努力できたのかな? って。


 そんな加護を今回アークに内緒でつけるのには理由がある。長命種の中には儀式の本当の意味を知っている者がいて、ぼくを捜し出して加護を強要するかもしれない。


 ぼくはアーク以外の人間をまだ信用できないから、他の人につけるなんて御免である。

 魔王誕生の時期につき一人だけという制限があり、付与者が仮に死んだとしても条件は変化しない。


 さらに、モフモフを守るために最強になるって断言したアークの助けになるかもしれないなら是非もない。


「なるほど。アルテア様の自業自得という言葉がしっくりくるほど納得です。でもバレちゃいますよ?」


「……そこは従魔契約のときみたいに一緒に隠蔽に協力してくれると助かるんだけど……」


「……そうですね。ドロン酒のためですからね。その代わり甘味も分け合いましょうね!」


「うん! いいよー!」


 こうしてぼくらは『ドロン同盟』を結成したのだ。



 ◇◇◇



「ただいまーー! ご飯食べた?」


「うん! おいしかったよー!」


「ガウガウーー!」


「それはよかった。早く《料理》スキルを習得して、もっと美味しいものを食べさせてあげるね!」


「うん!」「ガウ!」


 洞窟に帰った俺に抱きついてくる可愛いモフモフを抱きしめ愛でる。そして気づく。


「……リムくん、小さくなった?」


「ガウ!」


「リムくんは小さくなることで魔力消費を抑えられるけど、戦闘力が落ちるから気をつけてって言ってたよ。でも洞窟内で一緒に過ごせるから、普段は小さい方がいいでしょ?」


「もちろん! じゃあアレも買わなければ!」


 リムくんと遊ぶための道具といえば、アレを外すことなんてできまい。前世でもお世話になりました。


「ぼくも買って欲しいものがあるんだけど、いいかな?」


「いいよ! 何にする?」


「その前にやりたいことがあるんだ。服をめくって狼の刻印を見せて!」


「ん? いいよ」


 服をめくるとラビくんに見えるようにしゃがむ。


「ラビマーク!」


 プニっとという感触が刻印があるところから感じて服をずらして確認すると、ラビくんが刻印に肉球パンチをお見舞いしていたのだ。


「何してるの?」


「ぼくのマークもつけたかったの!」


 か、可愛い! 可愛すぎる!


「つ、つけれた?」


「うん!」


 ラビくんは満足げに頷いていた。


 俺も予想外の幸福イベントに大満足して商品を購入していった。



お読みいただきありがとうございます。

ブックマークと評価もしていただきありがとうございます。

とても嬉しく思っています。

これからも励みます。

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