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第二十八話 従魔からの大量購入

 タマさんとの交渉はじっくり話し合うことなく終了したが、モフモフくんは俯いたまま考え込んでしまった。


「そうだ。モフモフって何?」


「こっちではあまり言わないのかな? 毛皮があってフワフワモコモコの可愛い生き物のことを言ったり、毛皮自体のことを言ったりする言葉だよ。君もモフモフで、霊王様はモフモフの王様だから大きなモフモフなんだよ」


「……霊王は大きいの?」


「そうだよ。巨大な獅子か虎か狼……いや熊かもしれないな」


 やっぱり王様っていうくらいだから、巨大な獅子が最有力候補だろう。


「誰かに聞いたの?」


「聞き忘れたから妄想しているんだよ。だってアルテア様にモフモフの王様って言われたから、モフモフの量も特大級なんだって思って」


「そ……そうなんだ……」


 もしかしてさらにヤバいやつって思われたかもしれない。


「ぼくもモフモフなんだけど……守ってくれる?」


「もちろん! モフモフに助けを求められたら断らないのがモフリストの信念だよ!」


「じゃあずっと一緒にいてくれる? 一人にしない?」


「モフモフが離れたいと言っても説得していてもらう!」


「ヤバいやつですね……」


 モフモフとの会話の最中にディスられるも、これだけは譲ることはできない。モフモフロスは俺の精神に異常を来すもので、もう二度とあんな苦しみは味わいたくない。


「じゃあ……じゃあ……従魔契約してくれる?」


「いいの!? 俺はしたい! 契約してくれるなら是非ともお願いしたい!」


 餌付けしなくても従魔を得ることができてしまった。これは奇跡だ。アルテア様の加護のおかげに違いない。


「ぼくに名前をつけて」


「名前……」


 真名が言えないからかな? 話せるモフモフなんて珍しいもんね。


 兎はラビットだから……ラットは、ねずみか。うーん。決めた。


「名前は『ラビ』にする」


「うん……? うん! よろしくね!」


 俺の体とモフモフ改めラビくんの体がほのかに光り、契約が完了したことが分かった。


 やった! ついにやった!


 苦節五年。ついにモフモフ従魔をゲットした。今日もモフモフフワフワのラビくんを抱いて眠れるとか、幸せすぎるだろう!


「あっ! じゃあついでに商会名も考えて【ストアカード】も作っちゃおう。それでお猿さんたちが恵んでくれたお金でおもちゃを買って遊んでみよう!」


「それでお酒が造れるようになるのなら構いませんが、時間がかかるなら酒造りを先にしませんか?」


「……本当に天使?」


 俺と従魔契約したおかげでラビくんにもタマさんの声が聞こえたようで、《カスタマーサポート》の窓口が表示されている宙に浮かぶ板を見ている。


「えぇ。アルテア様の守護天使をさせていただいてます。先ほど『タマ』という名をいただきましたので、そうお呼びください。お互いに真名を呼ばない方がよろしいでしょう?」


「……うん! 分かった! ありがとう!」


「どういたしまして」


 何やらタマさんはラビくんのことを知っているらしい。あいさつを済ませていたみたいだったが、俺も一つ思いついたことがあって二人にお願いしてみることに。


「そういえば俺も名前がバレないようにしたいんだけど、何でもいいから偽名をつけてくれない?」


「アクナイトって一文字違うだけでアークナイトになるから、『アーク』ってどう?」


 旧約聖書に登場する契約の箱という意味では、モフモフを守るという誓いを貫くと言う名前として相応しいけど……。


 神子と合体すると『ノアの箱舟』という意味になるんだよな……。でもモフモフにもらった名前だし、神子は近い将来いなくなるから気にしないようにすればいいか。


「……ダメ?」


「そんなことないよ! これからはアークって呼んでね!」


「うん!」


 可愛い。


 頷くときにうさ耳が揺れて可愛さが倍増する。モコモコと動く姿を見たらリフォームせずにモフモフを堪能したくなる。


「じゃあ俺の職業についてだけど、俺はおもちゃを買うことができる職業なんだ。別の世界から転生してきたから、そのおもちゃも別の世界のおもちゃなんだけどね。しかも遊んだおもちゃに関係するスキルを習得できるおまけつき!」


「す……すごい! でもおもちゃってなに?」


「そ……そうか。知らないよね。遊ぶための道具なんだけど……。あっ! 本も買えるよ!」


「本は分かるけどな」


 なかなかおもちゃって伝わらないものなんだね。まぁ俺も知らないおもちゃがあったら「これ何?」って思うことあったからな。


「とりあえずカードを作っておもちゃを買ってみたらどうでしょう?」


「そうですね。そうしましょう!」


「じゃあぼくが考えた名前言ってもいい?」


「お願いしようかな。さっきの偽名もカッコよかったし」


 耳で顔を隠すラビくんは、どうやら照れているようだ。「そうかな~」って声が聞こえる。


「そ、それでね。名前は『ラビナイト商会』なんだけど、どうかな?」


「なるほどなるほど。いいと思うよ!」


 日中仕事して夜におもちゃで英気を養うということから、兎と夜をかけたのかな? 夜を表す月には兎がいるというのは、どの世界も共通なのかもしれない。


 それなら将来的な店舗も、夜に営業する食事処におもちゃで遊ぶプレイルームを設置する形式にしようかな。


 ラビくん、天才じゃないか!


「決まりだね! さすがラビくん!」


「えへへ。照れる~!」


 ついでにモフモフするために頭を撫でる。


 手が幸せを感じて狂喜しているよ。吸い付いて離れないほどのモフモフを持つラビくんは、もしかしたら天使なのかもしれない。


「早速設定しよう」


 商会名を『ラビナイト商会』にする。商会長は俺の名前になっていて、ラビくんの名前の横には秘書という表記がついていた。


 二人しかいないんだけどね。


「まずはアレを買わなければ。おままごとセットを……」


「何故それを……? そして酒造は?」


「知育玩具しか買えない今、他に料理スキルを習得できそうなおもちゃは想像できないからです! このモダンなデザインのキッチンセットなら、男の子であっても恥ずかしくないだろうからこれにします。それと酒造は後ほど」


 ――《カタログ》――

 商品名 モダン風キッチンセットDX

 購入額 一五,〇〇〇 フリム

 詳 細 本体 調理器具 食器各六組

 カート


 商品はサムネイル表示で、画像をタップすると詳細が表示されるようだ。購入する際はカートのアイコンをタップするという簡単操作である。


 ただ一つ気になった点がある。


「タマさん、これって何でいくつもの種類や値段設定に素材の違いなんてあるんです? デザインは分かりますが……」


「あぁ……まぁ言ってもいいでしょう。種類は好みで購入してもらうためです。値段は素材やセット詳細に関係あります。素材は高品質や本物に近ければ近いほどスキル習得時間と、習得時の初期レベルが変化します」


「たとえば?」


「まだ買えませんが、一〇〇フリムで売っている空洞の剣と木製の剣、それから金属製の模造剣では値段が全く違います。しかし、模造剣が一番本物に近いので習得も早い上、習得時にはすでに見習いを終えたレベル三は確定しています。その代わり高額になる可能性もあります」


 本物に近いものを買おう。量より質大作戦だ。


 レベルが低いスキルを大量に持っていても結局器用貧乏で終わりそうだし、最大値にあげることを目標にしてスキルを増やしていこう。


「ついでに解体スキルの習得が見込めそうなおもちゃも買おう。他にもこれとこれと……」


 結果、ラビくんと遊びたいおもちゃがありすぎて爆買いしてしまった。


 ――《カタログ》――

 商品名 モダン風キッチンセットDX

 購入額 一五,〇〇〇 フリム

 詳 細 本体 調理器具 食器各六組

 カート


 商品名 解体パズル 四点セット

 購入額  八,〇〇〇 フリム

 詳 細 ブル ボア バード フィッシュ

 カート


 商品名 お医者さんセットDX 

 購入額  五,五〇〇 フリム

 詳 細 本体 可変式診療ベッド

 カート

 

 商品名 ぬり絵セット

 購入額  二,〇〇〇 フリム

 詳 細 イラスト二〇枚 白紙一〇枚

 カート


 商品名 お絵かきセット

 購入額  二,〇〇〇 フリム

 詳 細 十二色クレヨン 白紙二〇枚

 カート


 商品名 おりがみセット

 購入額    一〇〇 フリム

 詳 細 一五〇枚入り

 カート


 商品名 魔核泥団子キット

 購入額  五,〇〇〇 フリム

 詳 細 一〇〇個入りセット

 カート


 商品名 ねんどシリーズ「ベーシック」

 購入額  一,八〇〇 フリム

 詳 細 色つきねんど 加工道具

 カート


 商品名 ねんどシリーズ「保存食」

 購入額  一,八〇〇 フリム

 詳 細 色つきねんど 加工道具

 カート


 商品名 ねんどシリーズ「製菓」

 購入額  三,〇〇〇 フリム

 詳 細 色つきねんど 加工道具

 カート


 商品名 ハンドボールセット

 購入額  五,〇〇〇 フリム

 詳 細 ゴールネット ボール 各一つ

 カート


 商品名 世界のはじまり

 購入額  三,二〇〇 フリム

 詳 細 絵本 神話 オススメ

 カート


 合計額 五二,四〇〇 フリム

 カード  二,六二〇 ポイント


 このような内訳になったのは、個人的にも驚いている。おかげで四人の兵士の手持ちのうち、約三分の一を使ってしまった。まだ口止め料の十万があるからマシだが、知育玩具にこんなにお金を使ったのは前世を含めて初である。


 いくつかはスキルを狙って購入したものもあるが、ラビくんと一緒にできそうなものを選んでいたのは本当だ。


 最後の絵本は購入画面の一番下にあなたにオススメの本と出ていたから購入したのだが、まだ本を購入していない俺にオススメってことで、アルテア様からのメッセージのような気がした。


 そして地味にポイントがありがたい。


 タマさん曰く、一ポイント一フリムとして使用できるようだ。


 ちなみに、通貨は世界共通で単位はフリム。貨幣価値は円とほぼ同額らしく、ドルのように変換しなくて済むのはありがたい。


 霊樹札 一枚 = 一〇,〇〇〇,〇〇〇

 金 貨 一枚 =    一〇〇,〇〇〇

 銀 貨 一枚 =      一,〇〇〇

 銅 貨 一枚 =        一〇〇

 穴鉄貨 一枚 =         一〇


 貨幣の種類は五種類で、紙幣も使われているのは異世界ならではの素材が使用されているからだった。


 霊樹札は精霊樹からできており、燃えない、破れない、濡れない、重くないという魔力紙と同じ効果を持つ。そのため大金が動く豪商以上の商会や、国家などの組織の運営に使われることが多いらしい。


 平民が使用するのは銀貨までで、穴鉄貨は子どもの小遣いや貧民の日当として使用されることがほとんどということだ。


 タマさんメモは素晴らしく分かりやすい。


 ついでにずっと気になっていた、あのナイフについて聞くことにしよう。



お読みいただきありがとうございます。


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