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閑話 快楽からの地獄生活

内容の一部に不快な表現があるかもしれません。今回は神子の心情を神子視点で書いたので、どうしても無理だと思ったら飛ばしてくれて構いません。


後半にちょっとだけ神子の新生活を書いているので、そこだけ読めば物語的には大丈夫かと思います。


 ぼくは今代の神子。神に選ばれた存在だ。


 神もなかなか分かっている。ぼく以外に誰が神子になれる器を持っているというのか。


 答えは簡単だ。


 誰もいない。ぼくだけが神子になれるのだ。それにぼくは勇者以上の存在になれると思っている。

 神子になったこともない父上や聖職者は【勇者】の職業を持っていない神子は、【聖女】以外は存在しないから不安だという。


 獣人の迫害が復活するかもしれないデリケートな問題だと言って、何もない村に引っ越すことになった。


 彼らは分かってない。


 過去最大の神子にしようとして、大きな加護をぼくの体に入れたことが原因で病になってしまった。

 神は責任を感じ、病気が完治したら相応しい職業をくれようとしているのだ。それもきっと【勇者】以上の職業になるだろう。


 しかも職業がステータスに記載されたときは、ぼくの病気が完治したときだということだ。


 つまり父上たちがぼくを田舎の村に移して監禁しているということは、れっきとした神子虐待事件だということだ。


 この村に来てよかったことなど、ぼくに体を触って欲しいと思っている女が増えたことだけだな。

 泣きながらやめて欲しいというが、それが演技だということは使用人から聞いている。ぼくの趣味をよく分かっているなんて使用人の鑑だね。いつか褒美を取らすとしよう。


 ◇


 三歳頃から何もない田舎の村で過ごすこと二年、ついにぼくにも職業授与の儀式がやってきた。


 神子が活躍する英雄譚の一ページ目は間違いなく今日の儀式のことだ。

 職業をもらって活躍することを夢に見た、待ちに待った日である。神子という成熟した大人だというのにドキドキワクワクが抑えきれない。


 職業によっては魔術も使えるようになるというし。神子はやっぱり光魔術かな。火や雷もカッコいいよな。


 父上や母上も楽しみなのかそわそわと落ち着かない様子だ。

 その姿を見ていたら、今日という素晴らしい日を無事に迎えられたのは両親のおかげだと思い、神子虐待は許してやろうと心に決めた。


「では、大トリの神子様の出番ですね。父上、いってきます。下々の民よ、道をあけたまえ!」


 ぼくは神子なのだ。


 神に愛された愛し子なのだ。跪く必要はない。下々の民は本来ぼくにも跪く必要があるのに、ぼくの広い心のおかげで許されているだけということを分かって欲しい。

 それなのに先ほどから「祈り方が違う。職業を授けてもらえなくても知らないぞ」などなど、本当に煩わしい思いをしている。


 ぼくの祈り方こそ加護を受けるのに相応しいと何故分からない?


 神子になったこともないものには神子の偉大さが伝わらないようだ。


 さぁ、馬鹿どもは放って置こう。


 神よ、我に職業を授けるのだ。愛し子へと全力の愛をぶつけてくれたまえ!


「…………。あれ? すごすぎてまだ時間が足りないのか? 光らないのは何故だ!?」


 下々の民のように体が光らない。


 もしかして神子は下々の民と同じようにはならないのかもしれない。


「父上、父上! ステータスの確認を!」


「……伯爵閣下。本当にやるのですか?」


「……うーむ。簡易鑑定は可能か?」


「もちろんです」


 父上は何をケチケチしているのですか?


「職業の有無だけを確認します」


「うむー?」


 司祭が鑑定の宝玉を取り出し、手を置くように促す。光れば職業を得ているという。


 それくらいは説明されなくても分かっていたが、ぼくはついでにステータスを見たかったのになぁ。


「……光りませんな」


「手間を掛けた」


「――う、うそ……ウソだ……嘘だぁぁぁぁーー! 信じないぞ! 信じるもんかぁぁぁーーー! そうだ! ぼくを騙しているんだ! せっかく神子虐待を許してやろうと思ったのにッ! こ、これが! これが! これが、神子に対する行動かぁぁぁ――」


 そこからの記憶はない。どうやって帰ったのか、どうなったのか。


 ◇


 次の年、再び職業授与の儀式に参加した。今度こそと思ったが、今年もダメだった。


 今回も屋敷に帰った記憶がない。


 数日後、弟が生まれたことを知る。母親は美人でスタイル抜群のフロース義母様だ。ぼくの理想の女性といえばフロース義母様だといっても過言ではない。


 正直父上が羨ましい。


 他の使用人や兵士みたいに献上してくれてもいいのに。

 でも話を聞くと密通した結果生まれた不貞の子だそうだ。どうせならぼくのところに密通しに来てくれればよかったのに。


 そう思うとムカつくから神子の神力を味わってもらおう。


「ねぇ、金貨あげるから赤子にイタズラして来てよ。どうせ暇でしょ?」


 ただ立っているだけの暇してそうな使用人に一枚十万フリムという金貨を渡して、バレない程度に嫌がらせをしてもらうことにした。


 神の力とはすなわち金の力だよ。


 神にも選ばれ、金にも不自由しない高位貴族のぼくは、本当に選ばれた存在だということだ。

 だから混血の平民が弟にいるというのはぼくの名前に傷がつくということだ。


 まぁ一応神子のために冥土にいけるのだから、きっと素晴らしい来世があるだろうよ。


 ◇


 ぼく……いや私もついに十一歳の年になろうとしている。


 今日まで嫌がらせを続けてきた平民は何故かたくましく生き続けている。

 しかも使用人や兵士たちとも交流をしており、父上も表立って何も言わなくなった。


 聞いたところによると、あの兵士長が自ら組手相手に名乗りを上げるほどということだが、私の部下が言うには誰も相手しないから仕方がなくだそうだ。


 実際聞いてみれば、それはそうかと納得する。


 兵士長は現在我が家にいる戦力のうち五指に入るほどの猛者で、父上だけでなく現当主である御祖父様の信頼厚い人物だ。


 神子である私を見る冷たい目は恐怖だけでなく、心の奥まで見透かされているようで体が固まってしまう。

 そのようなすごい人物が自分から立候補するはずないのだ。


 そして今日は平民も職業授与の儀式を受けるようだ。何故我が伯爵家が平民の費用を出さなければならないのだ?


「兄上。初回は無料ですよ。初回はね」


 平民が神子である私の指摘に対して不敬にも言い返してきた。しかし気になる言葉を聞こえる。


 初回はだと。


 私もまだ職業を得ていないのだから初回である。それならば父上はなんのお金を払っているのだ?


「私も初回だ」


 平民は驚いた顔をしたと思ったら顔が震えだした。コイツは何か危ない病気でも持っているのか? と疑問に思った瞬間、衝撃的な言葉を聞く。


「言葉が足りなかったようですね。五歳のときに参加する儀式が初回です。兄上は何歳ですか?」


 わ……私は……まもなく十一歳だ。


 じゃああれは私のための費用……? 毎年なのか? 毎年払い続けているのか?


 父上に確認するも強制的に黙らせられてしまった。それに加え、私が将来に思いをはせていないかのような言いように思わず声を荒げてしまった。


 思えば平民が生まれてから何もかも上手くいかないようになった気がする。もしかしてコイツが魔王ではないのか?


 だとしたら今日このあと追放するときに確実に殺しておけば将来的に楽になり、遊んで暮らせるようになるのでは?


 追撃部隊には頑張ってもらわなければ。


 個人的に将来に思いをはせているときに、平民が戻ってきて職業を得たという。


 私が得ていないものを平民ごときが得ているはずがない。すぐさま教えるように命令するも、命令に従わないどころか父上まで味方に引き込むとは……。


 父上も父上だ。


 何故平民の肩をを持つようなことを言うのか。……まさかすでに洗脳魔術を使われているのではないか? マズい……マズいぞ!


 ここは大人しくしていて屋敷の方で包囲して討伐すれば良い。

 ただ気がかりなのは誰が洗脳済みなのか分からないということだろう。とりあえず帰ったら考えよう。


 今回も屋敷に帰った記憶がない。


 でも今回は目覚めがいつもと違った。体が軽いのだ。まるで生まれ変わったかのような、脱げないでいた重石つきの衣服を脱いだような感覚に病気が完治したことを実感する。


 もう少し早ければ今日職業を得られたかもしれないが、今日は病気の完治をだけを喜ぼう。

 職業を得た喜びは次回に持ち越そうと思う。幸せは何回来ても嬉しいということだね。


 心も体も毒素が抜けたように晴れやかで、今なら下民にも優しくなれそうだ。


 さぁ、平民を優しく追放しに行こうではないか。


 ◇


 何故神子である私が……。神子が完治したという素晴らしい日に、こんなにも一方的に暴行を受けなければならないのだ?


 あの平民でも私の素晴らしさに気づいたというのに……。何故父上が私を殴るのだ!


 いつもの使用人が何かを父上に言い、母上を責めたと思ったら私が殴られていた。

 つまり二人の罪を私が背負ったということか? 神子の私がか……?


 ありえない。こんなことあってはならないのだ。何故……何故神は私にこのような試練を与えたのだ? 私がいったい何をしたというのか?


 自問自答を繰り返しているうちに私の意識は暗闇の中に落ちていくのだった。


 ◇


 目が覚めると神殿契約を強制的に結ばされて、事情が分からないまま叔父上の武術指南を受けることになった。


 王家の武術指南役である叔父上は、普段王家相手にしているような接待指南ではなく地獄の指南を敢行してきた。


 食事と睡眠以外は生活に必要な風呂など以外は訓練場で槍術を学んでいる。

 たまに組手を行うことがあるが初心者に対するものでない威力の突きを行い、毎回意識を飛ばしていた。


 まだ職業を得ていないのだから、槍術を学んでも使うかどうかなんて分からないじゃないかと思い、叔父上に訴えたのだが無駄に終わる。


 それもこれもすでに死んだ下民のせいだ。


 何人かの兵士がこそこそと平民と比べだし、職業関係なく一歳の頃から武術訓練をやっていたと叔父上に密告して、十一歳の選ばれた神子様ができないはずないと言い出したのだ。


 私は、私のおかげで魔王を早期発見でき、すでに始末したのだから強くなる必要はないと主張した。


「……魔王は魔物の王ですよ。魔物は人型でも職業を得ることはできません。種族特性スキルもありません。神子様がおっしゃる人物は赤子のときに鑑定を受けていますし、職業もいただいています。つまりは魔物ではありません」


 と言いながら笑われた。


「では座学も必要でしょう!?」


「十一年間座学をしてきたはずです。それに今、魔王の正体について授業したばかりです。これで続きができますね」


 結局、私の地獄は変わらず続くのだった。



お読みいただきありがとうございます。

次回から新章に入ります。


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