表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/116

第十七話 完成からの調査終了

本日5話目です。

 森の調査をした日から数日が経ち、家もほとんど完成した。


 小屋自体は予定していた六畳一間だが、棚としても使えるロフトベッドを作り、ベッド下のデッドスペースを道具置き場や着替えなどの荷物置き場に。


 さらに家の中央奥に女神像を置き、家に帰れば視界全てが女神様で埋まるようにした。


 扉の両脇に換気用の鍵付き木窓を設置。入口の扉を入って左手側がロフトベッドで、右手側が作業台と作品棚になっている。


 ここまでが小屋の中の構造で、石畳にした敷地面積は九メートル四方である。つまりまだまだ土地は余っているのだ。


 その余っている北側の部分にはほとんど使わないけど、異世界平民版キッチンのかまどと石造りのシンク、作業台と水瓶を設置した。


 北側は基本的な生活を送るには必要な設備を集めた生活エリアにしているから、湯船と洗い場が分かれたお風呂に、スライムポットン式トイレもある。


 トイレは一応木製の扉にしたが、風呂はイビルプラントの葉っぱを重ねてカーテンのようにした。

 扉の防腐処理ができず、葉っぱの方が防水力が高かったからだ。


 他には荷車の駐車場や薪置き場に大型の道具置き場など、倉庫も兼ねた小屋らしい設備もちゃんと用意した。


 俺のあとに女性が入居してもいいように建物に隠れた西側に物干し台も設置し、洗濯しやすい動線も確保する。


 反対の小屋の南側は森からごっつぁんしてくる素材や木材専用倉庫である。家の入口は屋敷の方を向いた東向きにあるのだが、倉庫の入口は西向きのみである。


 理由は簡単。


 西にある森からもらってきたものは柵を越えて、そのまま家の裏手に置いていたからだ。

 東側に回ってものを置いたことがなく、あまり必要性を感じなかったわけだ。


 ただ俺がいなくなった後は東側から物を入れることが作ったあとに気づき、現在は言い訳作りのため倉庫の東側に物置スペースを作っている。


 その他の設備は家の裏手である西側の地面は土に戻して個人の訓練場にした。まもなく森に入るのに、整地された地面で慣れてはいけないと思ったからだ。

 訓練場の守り神として残した石畳の上にオークちゃんと熊親分の木像を設置し、二体の真ん中に休憩用の椅子を置いている。

 位置的に説教やアドバイスをもらえているように感じるのではないかという自己暗示のためである。


 実際には自分で反省点や改善点を見つけるのだろうが、師匠に指導されて怒られているとイメージしてみたら俯瞰して自分を見れるのでは? と思ったからだ。

 人間は自分を守るために無意識下で言い訳してしまう生き物であると聞いたことがあるから、それに対する対策である。一人で訓練しているゆえの問題だから仕方がない。


 ちなみに石造りのエリアは全て屋根がついているし、土の地面よりも高さがある。雨への対策と神子からの投擲対策である。

 石壁も敷地内の荷車も出入りする東側の一部と、訓練場がある西側を除いた全てをグルッと囲っている。


 そもそも南北に設置された設備は外壁を防御用の石壁に利用できないかなと思って作ったもので、構造体も兼ねているため家を作ることは許可していないと言われても、これは外壁ですと言えるのだ。


 向こうも誰かさんの投擲物によって家が破壊されたことは把握しているだろうから、外壁をつくってはいけないとは言えないだろう。


 それゆえ我が新居は立派な一軒家にバージョンアップを果たすのだった。


 当然我が家は問題になった。


 忠臣メイドがドロンの果実の干し果実を取りに来たときに教えてくれたんだけど、神子が騒いだそうだ。それも周囲に当たり散らす大騒動。

 ボロ小屋でももったいないと主張していて壊したのに、今度は石造りの豪邸に生まれ変わっていると思ったらしい。


 豪邸ではないけど、俺の立場からそう判断したようだ。どれだけ上から目線なんだ? と思わずにはいられない。


 今回の騒動で使用人に多くの怪我人が出たことにより神子派でなかった使用人たちから不満が続出し、問題の収集のため養父が初めて神子を怒鳴ったらしい。


 俺でも怒鳴られたことはないよ?


 曰く、老朽化して倒壊した建物を業者に代わり修繕改築しただけで何も問題はない。

 曰く、調合や修繕などの仕事をして屋敷の外に住んでいることから居候ではない。他の使用人と同じである。

 曰く、家に仕えてくれている使用人に怪我を負わせることの方が問題で、勇気と慈愛の心を持つ勇者がしていい行為ではない。


 などなど、ブチギレまくったことで神子の実母が謝罪し神子も謝罪をすることになった。

 養父は神子から賠償を出すことで誠意ある謝罪にさせたかったようで、実母と神子に渡されている交際費から捻出するように指示して終結させたらしい。


 言わなくても分かるだろうが、神子親子は納得していない。何もかも全て俺が悪いと思っているらしい。

 でも文句を飲み込まざるを得ない事態が屋敷内で発生しているという。


 それは神子交代説である。


 武術の訓練にも自主的に参加し、個人的にも研鑽を積んでいる。家も建てれて育児放棄の立場に立たされても泣きわめくことなく、誰かに手を借りることもせず被害が及ぶ気遣いもできている。当然使用人に手を出すこともしない。


 それに引き換え現在進行形で神子をしている人物は、部屋に引きこもる以外は小言を言うための散歩をして歩行訓練だと言い張る。夜中に一人でトイレにも行けないビビりくんで、すぐに騒ぎを大きくする。多くの神子派使用人を取り込んで全てやってもらう。暴力的にも年齢的にも使用人に手を出す。相手が既婚者でも関係なく。


 そこで使用人の一人が呟いた。


「神様も間違えることってあるんだな」


 この言葉が一気に広がり、神子抹殺からの交代劇があるのでは? と、ささやかれているようだ。


 その憎しみを引き受けるのは俺なのだが……。


 あと忠臣メイドが気になることを言っていた。

 養父の沸点が低かった理由についてなのだが、養父の側近で戦友でもある従者が先日亡くなった。

 死体の傷から魔物によるものだと判明したが、実力者である従者がボロボロにされるような魔物は周囲には存在していない。間違いなく危険地帯で魔物と遭遇したのだと推測できた。


 ではなぜ危険地帯に行ったのか?


 この問題を解決しようと会議に会議を重ねていたところに、神子が騒ぎを起こしたのだ。そりゃあ怒鳴りたくなるよな。


 まぁ問題の従者殿は俺についていた尾行者だろうな。危険地帯では通れるルートがあるんよ? それを知らないと猛者の配下に縄張りを侵害したと判断されるんよ。


 このルートこそが決闘場に入場するための入場口なのだ。それぞれのボス専用の入場口があるのだが、俺は確実に通れる熊親分のルートを使ったのだ。


 それでも方々から飛んでくる威圧や殺気に耐える必要があるのに、彼は縄張りに直接侵入してしまったのだ。その先は言わなくても分かるだろう。


 ご苦労様である。


 ◇


 あれからもう二年が経とうとしている。


 いろいろ調査した末に判明した護衛業なるものは、狂言盗賊であった。

 護衛役と盗賊役に分かれて街道を行き来する商人から金をせしめているのだ。


 当たり前だけど、盗賊行為をすればステータスに犯罪行為が乗り、称号欄に盗賊や殺人者などと表記される。つまりは人生が終了する。

 あのとき神子派兵士が嫌がったのは罰則での配置転換は盗賊役が確定だからで、ほとんど犯罪奴隷みたいなものだからだ。

 でも狂言盗賊だから失敗しない盗賊家業であることは間違いない。


 ではなぜ人気がないか分かるだろうか?


 商人は個人的にも護衛を雇っているのだが、事前調査でも分からず凄腕の護衛だった場合、護衛役の者たちが手を抜いていたとしても盗賊に人権はなく、実力がなければ捕まるか殺されるのだ。


 その死体の投棄場所があの洞窟や周辺の森であるらしい。洞窟は物資や違法奴隷の保管庫も兼ねている。さらに次のターゲットや作戦なども行われているらしい。


 魔物に傷を上書きしてもらったあと回収して、森の調査中の事故として記録を改ざんすることで証拠や証人を消しているらしい。

 一定周期で変わる娼館の奴隷も違法奴隷で楽しんだあと、奴隷商に払い下げるという悪辣な商売をしている。


 これを知ったとき、長男の実母は悪魔なのでは? と思ったほどだ。


 そんなこんなで迎える職業授与の儀式。


 ついに追放のときがやってくるのだ。個人的には追放ではない。モフモフ探しの旅に出発するという感覚である。


 早く会いたいなー!


 まだ見ぬモフモフに抱かれる夢を見ながら、翌日の職業授与の儀式に備えて今日も気絶するのだった。



お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ