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拝啓!マリア スクロドフスカ様

作者: 凡 徹也

尊敬する貴女に、出せない手紙を書きました。

是非、天国で読んで下さい。

 拝啓、マリア・スクロドフスカ様。貴女ほど素敵な人は中々居ません。あなたは政情不安定な時代、ロシア占領下のポーランドで生まれましたね。小さな頃から頭脳明晰、成績優秀でありました。とはいえとても貧しい暮らしでした。それでも勉学が大好きだった。そして、自分が進学したい気持ちを抑えて先ずは働いてお姉さんの学費を援助しましたね。その代わりに学校を卒業して働いたら今度は自分を学校に通わせて欲しいと約束し、願いを込めて。

 でも、お姉さんは学校を卒業するとさっさと好きになった男性と結婚してしまい、その約束は反故にされてしまった。裏切られた気分で悲しかったでしょう。それでも向学心に情熱を絶やさなかったあなたは、パリで医院を開業した姉夫婦を頼りに最低限の資金を持って電車で自由の国フランスへと渡りました。そしてその自由で開放的な精神への憧れから先ずは自らの名前を「マリア」から「マリー」へと改名され、名門のソルボンヌ大学へと入り夢中で勉学に励みましたね。そして同じ化学の道を目指すピエールと出会い恋仲となり結婚された。貧しくとも幸せな日々でしたね。そして質素な生活感覚を持つ2人は、その頃最もトレンディな乗物だった自転車に乗っての新婚旅行に行かれた。実にあなたらしいし、センスも良かったのですね。

 その後、2人は共同で研究を行いましたね。一時期「錬金」…つまり化学合成で金を作ろうとしましたね。勿論それは無理なことでした。だって、現代でもそれは不可能なのですから。それでもお金持ちに憧れるその気持ち、小さな頃から貧しかったあなたのことですもの、無理はなかった。僕にもその気持ちは充分に理解できます。

 あなたは結局「金」の合成は叶いませんでしたが、その研究姿勢を貫いた先であなたは素晴らしい発見をされました。それは輝く物質「ラジウム」という放射性物質でした。その功績が認められ、あなたは夫と伴にノーベル賞を頂く事になりました。金は造れませんでしたがそれが化学者としての「金メダルの栄誉」となりましたね。でも、受け取るその時のあなたの手はただれていましたね。誰も理由も知らずのまま。

 ただ、悲しいことにその後間もなく大切な最愛の夫を、馬車に轢かれるという不幸な事故で失うことになりました。とても悲嘆されたでしょうね。それでもあなたはくじけずに夫の意志を受け継ぎ研究を続け、更に金属ラジウムの分離に成功され、再びノーベル賞を受賞された。歴史上、生涯に2度ノーベル賞を受けた女性はあなただけしかいません。とてつもなく凄い事なのですよ。素晴らしい。

 若い頃、ロシア占領下の屈辱と、貧しさを味わったあなたでしたがその後の絶え間ない努力でとうとう裕福にもなれました。そして名声も得られました。あなたの人生は素晴らしいものとなりました。あなたは自身の人生をどう思われていたのでしょうか?きっと亡くなる瞬間、あなたは思いきりの笑顔で旅立たれたのでしょう。だって、他の誰も真似できない功績を残されたのですから。

 その勲章と言えるかどうか…あなたは生涯に200シーベルトもの放射能を浴び白血病で亡くなられた。時を経た現在でもあなたの遺骨からは放射能が検出されています。どれだけ被爆されていたのか、当時は放射能の恐ろしさは全く知られていなかったのですから無理はありません。その事であなたの存在は骨になってからも科学の進歩に貢献しています。

 今は天の世界に居るあなたから下界をご覧になって、世界の核兵器や原発事故のことどう思っているのか、意見を聞きたいと思ってはいるのですが、僕にはそんな能力は有りません。是非、同じ時代に生きてお会いしたかった。とても残念に思います。

 それでもあなたのことはこれだけ時が流れても世界中の誰もが存在していたことを知っています。歴史上の最も偉大な女性として。今では世界中の人々があなたのことを「キュリー夫人」と呼んでいます。敬愛を込めた素敵な呼び名ですね。そう!あなたの事ですよ。

 あ~本当に素敵なお方だ、貴女は。マリア…いや、「マリー・キュリー」様。貴女ほど素敵な生き様を魅せてくれた女性を僕は他には知りません。僕も、そして世界中の皆があなたの事大好きです。きっとこの先もずーっとですよ…

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