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チートな私は友達が欲しい。  作者: 骨の色。
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天は十物くらいまでは許容する。

当時、大学生だった私は、アルバイトだったか、大学だったか、帰り道の途中で意識を失い、気づいたら知らない場所に居た。


そこは場所と言っていいのか、夢とも現実とも断言しづらい、言い表すなら辺り一面が白だったか黒だったか、ともかく不思議な空間であった。


声と言うにははっきりしない、まるで直接想いが届いてくると表現した方がしっくりくるだろうか。


【どんな願いでもひとつ叶えてやろう】


酷く傲慢さを感じる、心地いいとは言い難い、声とも思念とも言えないそれは、確かに私に向けたものであることは理解できた。


状況の説明をお願いしようとして、それが“願い”にカウントされては目も当てられないと、変なところにだけ頭が回った私は、


「ひとつと言わず、10個の願いを叶えてください」


”いくつでも“は流石に怒られるかな、なんて変な気を回しながら、その時の私は、個数を限定すればセーフだろうと謎の思考を展開し、何とも強欲で恥知らずな願いを宣った。


【】


一瞬の間を感じ、やっぱりだめかと半ば諦めかけたが、


【よかろう】


の一言で、世の中言ってみるもんだなと変に感心したものだ。


【しかし、制限をつけさせてもらう】


続く言葉に、まあそんなうまい話はないよなと苦笑したのだが、


【これ以上願いの数を増やすことはせん】


どうやら、願いの数を増やす想定はしていなかったようだ。


意外と人間味があるな、と思った。


それから、私は10個のお願いをした。


「私の現状の説明を詳細にお願いします」


【よかろう】


次の瞬間には、まるで最初から知っていたかのように、自分の現状が理解できた。


所謂、異世界転生、転移物のお決まりで、これから私の魂は剣と魔法の世界に飛ばされるようで、元の世界に帰ることは不可能であるらしかった。


そうか、帰れないのか、想定通りではあったが、いざ突きつけられると思うところがあった。


どんな願いでも叶うのではなかったのだろうか、と思ったのは内緒である。


「では、私がこれから向かう世界と私の役目について説明を詳細にお願いします」


【よかろう】


同じく、次の瞬間には全てを理解した。


まるで、その世界で一生を終えたことがあるような、そんな不思議な錯覚に陥るほどに、私はその世界について理解できたのだ。


よくあるファンタジー物と変わらない、所謂テンプレと言って差し支えない世界に、SFのような近未来的な要素が加わった、“剣と魔法と科学の世界”と言えばよいのだろうか。


なかなか面白そうな、心惹かれるものだった。


地球に帰れないことを吹き飛ばすかのような、心踊る内容だった。


そして、私の役目は、生を謳歌すること。


言ってしまえば、特になし。


まあ、魔王を倒せとか、世界を滅ぼせとか、無茶な役目が与えられなかったことにほっとした。


「最高の肉体をください」


【よかろう】


目の前に、色の白い、黒髪の人間が現れた。


全裸で目を閉じた状態で。


恐らく人間だろうと思ってしまうほど、完璧な見た目だった。


まるで人形のような、彫刻のような、異常に整った顔、身体。


大きな息子が存在を主張していなければ、思わず女性と勘違いしそうな、中性的な美しい顔。


身長は180cmを超えているだろう。

もしかしたら190cm以上かもしれない。

細マッチョと言うには細過ぎる気がするが、中々に引き締まった身体をしている。


なぜ、急に目の前に?


【おまえの望みの肉体を具現化したものだ】


肉体をくださいとは確かに言ったが、今じゃない。


向こうの世界に行ってからの、と言わなきゃダメだったのか。


【勘違いしておるようだが、その肉体におまえの魂をぶち込んで送る】


どうやら、願いは正しく伝わっていたみたいだった。


気を取り直して、


「ゲームみたいに、セーブ&ロードができるようにしてほしいです。」


【よかろう】


目の前の肉体の横にゲームのような画面が現れた。


[スキル:再走

・任意のタイミングを起点として登録可能、最大10

・登録した起点を任意のタイミング、または死亡した場合に選択可能、選択した起点に魂、記憶を送る]


セーブスロットは10個で、ロードでは魂と記憶を引き継ぐのか。


ということは、肉体的な損傷を持ち越すことはない代わりに、肉体のレベルが元に戻ってしまうわけか。


話は少し戻るが、教えて貰った知識で、向こうの世界には、魂のレベルと肉体のレベルというものが存在することがわかっている。


そのため、最高の肉体をお願いした訳で、肉体のレベルはゲームで言うところのレベルと変わらないと考えていい。


つまり、最初からレベル最大であらゆるステータスが他を超越している、と私は思っている。


望んだ肉体は確かにそういう物だったはずだから間違いないだろう。


そして、もうひとつの魂のレベルについてだが、こちらは少々説明が難しい。


何かとゲームで例えてしまっているが、この魂のレベルについてはゲームに置き換え難い。


肉体以外の成長についての指標と言うべきか、考え方や感じ方といった、言葉にしづらい曖昧なものについて、昨日と今日を比べてみれば、多少なりとも違いがあるだろう。


どちらが優れている、劣っているというものではなく、データで表せない変化を魂のレベルと言うもので表している、らしい。


らしい、としか言いようがないほど私もあまり理解できていなかった。


が、この再走のスキルに不利益は無いように思った。


「あらゆる生命の言葉を翻訳してお互いに理解できるようにしてください」


【よかろう】


ゲームのような画面、再走の下に新しく文字が浮かんだ。


[スキル:翻訳

・相手の発した言葉、またはそれに変わる伝達手段について、任意で日本語に置き換えて理解することが可能

・自分の発した言葉、またはそれに変わる伝達手段について、任意で指定して理解させることが可能]


それに変わる伝達手段とは、言葉以外の方法で意思疎通をとる存在がいるということなのだろうか、それとも読み書きや手話を通しての翻訳が可能ということだろうか。


質問も憚られるが、今までの問答で問題はないだろうと判断した。


お互いにどんな風に伝わるのか、非常に気になるが、これで少なくとも意思疎通に問題はないだろう。


これで願い事は折り返し地点だ。


「ステータスについて、隠すことができるようにしてください」


【よかろう】


[スキル:隠蔽

・任意の対象を認識できなくする]


非常に簡潔な文章だが、この書き方だとステータス以外も隠せてしまうのではなかろうか。


などと少し考えていると、


【残りは4つだ、はやくしろ】


なるほど、もうめんどくさくなっていらっしゃる。


気のせいではないだろう、少し怒気を感じた。


「では、続けて言わせていただきます

収納、感知、転移、治癒のスキルをください」


【よかろう】


機嫌を損ねて消されては堪らないと、矢継ぎ早に思いついた異世界物で定番のスキルを羅列した。


心なしかすっきりとした“よかろう”であったように思う。


[スキル:収納

・生命以外のあらゆる物体を異空間に収納、または取り出すことが可能]


[スキル:感知

・あらゆる対象を感知することが可能]


[スキル:転移

・あらゆる認識した空間に転移することが可能]


[スキル:治癒

・あらゆる怪我、病気に対して治癒することが可能]


めんどくさいといっても、これはないのではないだろうか。


スキルの説明にスキルの名称を使って一文で表してしまっているではないか。


こんなアバウトな説明で効果はきちんとあるのだろうか。


そんな私の心配など気にした様子もなく、その存在はやっと終わったとばかりに言葉を紡いだ。


【以上】


私の意識はそこで途切れた訳である。




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