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その少女、黒歴史製造中につき取扱注意!39

「今も逃し続けてると思うがな」

「い、いいんだよ! ボクの思いは来たるべき一人に届けばいいんだから! けど、ちやほやされる経験もしたかったかも……残念」

 荷渡と毒にも薬にもならないような会話をしていると、ようやく浮雲が行き先を決めたようだ。完全に道筋を把握したようで今度はずんずん進む。うかうかしていると置いて行かれそうなペースだ。

 上の階へ――浮雲はなぜかエレベーターやエスカレーターを使わず階段を上りだす。

 もちろん日ノ下と荷渡もその後を追うのだが、三階分上がった時に問題が起きた。

「ひ、日ノ下くん……ボクはもうだめかもしれない」

 しわがれた老人のような声。荷渡は肩で息をしており、足は産まれたての小鹿状態だ。

「どんだけ貧弱なんだよ!?」

「普段のBHEの活動は基本的にカウンセリング系だし……尾行って言ってもこういうハードな運動はあまりないからね……。肉体系の仕事は生徒会にカバーしてもらってたんだ」

 全然ハードではない。早歩きで階段を上っただけだ。

「どうするんだよ!? 置いて行かれるぞ!?」

「お、おんぶ」

「……」

「日ノ下くん、おんぶ」

 この死にかけの幼怪を前にして、それ以外の選択肢がないのは明らかだった。

「先に誓え。後から僕がセクハラしたとか言い出すんじゃないぞ」

「するする。イエスにだってサタンにだってサンタにだって誓うよ。なんなら指切りゲンマンもしとく? 嘘ついたらラーメンのハリガネ千本食べるよ」

「誓う対象が三つ中二つはあてになんねえし、なんで嘘ついたらラーメン食うだけなんだよ。……まぁラーメン千本はどんぶり五杯分だからな。一度に食えば罰ゲームになるか。わかったよ。ほら、さっさと乗れ」

 日ノ下がしゃがむとナマケモノのように荷渡は日ノ下の背中にしがみついた。

 負荷が増えた状態で日ノ下は階段を上がる。重さに関していえば、荷渡は軽くあまり問題にならないが、問題は密着性だ。以前、クローゼットに隠れた時は背中が主だったけれど、今日は逆。こっちの方が危ない部位が多く当たっているだけに緊張する。荷渡の胸の発育は遅れていてよかった。さして感触がない。

「はぁ、極楽極楽」

「温泉に入ったおじいちゃんか。落とすぞ」

 平日の放課後、荷渡は女子更衣室で寝ているが叩き起こして体を鍛え直してやろうか。そんな考えが日ノ下の頭をよぎる。

 浮雲が目的の階層に着くころには、いくら荷渡が軽いと言えど、日ノ下の足も生まれたての小鹿状態になっていた。

 浮雲のやつ……一階から九階まで上がりおった……。エレベータ使えよ田舎娘!

 九階は主に飲食店や喫茶店が集まっており、おしゃれ好きの高校生、大学生が好みそうな雰囲気があった。事実、大窓から中が見える喫茶店では談笑や勉強をしている学生が見て取れた。

 荷渡を降ろしてストリートの中を歩く浮雲の背中を追う。彼女は数ある喫茶店の中からとある店へ入っていく。

「……なんだよここ」

 その店の前で日ノ下は唖然とした。

 明るい色が多い造りになっているストリートに壁だが、一面黒塗りになっている。ストリートの統一感を完全に壊している店の入口の看板を見る。

<隠れ家敵喫茶店 葉隠れ>

 確かに他の解放的な喫茶店とは違って、中の様子をうかがえない。壁――と思っていたのは、近くで見ると実際ツルっとしたガラスのようだった。

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