その少女、黒歴史製造中につき取扱注意!33
「日ノ下くんってさ、意外と聞き上手だよね」
「どこがだよ。へたくそだぞ」
「自分でそう思っているだけだよ。あの猿人類と話をするのは、ボクにはきも過ぎて無理だよ。浮雲ちゃんの妄想だって突き放さずに聞くし、天津ちゃんの話にも意外と付き合う。どんなにくだらなくても聞けるってのは大事なことだよ」
「まぁ、褒め言葉として受け取っておくか」
開いていた教室のドアに影が差した。青木が戻ってきたか、はたまたこのクラスの生徒かと呑気に考えていたが、そこに現れた人物を見て日ノ下は固まってしまう。
「日ノ下――仕事」
無表情を張り付けた浮雲がそこに立っていた。若干怒気のオーラを纏っている気がする。文化祭実行委員の仕事は今日はもうないので、怒られるようなことはしていない。
だとしたら、誰に怒っているのか――推理するまでもなく荷渡にだろう。
「文化祭実行委員の仕事はもうないと思うんだが」
「案練る」
『クラスの出し物の』
「なるほど」
それならばさっき別れる前に言えばよかったのに、とは日ノ下は思わなかった。浮雲は荷渡と日ノ下が一緒にいるのをどこかで見かけて、戻ってきただろうから。また助けようとしているのだ。
「荷渡、この後に活動はなかったよな」
「うん、今のところはないよ。けど、なに? 浮雲ちゃんのとこに行く気なの?」
「うっ……」
荷渡に再び機嫌が悪くなる前兆。
だが、荷渡の口元には変わらず例の笑みが張り付いていた。気味悪い笑みだが、これがある間は本気で怒っていない。
「いいよ。別に」
許可が出たのは日ノ下にとっては予想外だった。
『勝ったわ。二連勝よ二連勝。幼怪って言われてる割には大したことないわね。こいつがラスボス的存在かと思っていたけれど、違うみたいね』
浮雲はいつも通り無表情だったが、満足気だ。
「日ノ下くんの罰ゲームは週末にボクとデートすることだから、忘れないでね?」
「なっ!?」と、浮雲が珍しく驚きの声を上げた。
「デートじゃなくてBHEの活動をするだけだろ」
「ま、ボクと一緒に週末を過ごすのには違いないさ。それがわかっているならいいよ」
「……ッッ! ッッ!!」
『このちび女! まな板としてショッピングマーケットに売られてしまえばいいのに!』
「どーしたの浮雲ちゃん。言いたいことあるなら言いなよ」
浮雲が声を出して長い文章を話出す姿が見られるかと思ったが、反論は結局出てこなかった。様子から察するに、今回は荷渡の勝ちのようだ。