その少女、黒歴史製造中につき取扱注意!18
頭の中がもう無茶苦茶だ!
学校では幼怪の二つ名を持っているが荷渡も一応女子であり――密着しているという事実。
上に乗られても大して重くなく、華奢な体が日ノ下の中にすっぽり収まる。荷渡の跳ねた寝ぐせは日ノ下の頬をこする――背中は腹に密着している――柔らかみにとぼしいがお尻が下半身に押し付けられる――視覚が暗闇で奪われている分、触覚が必要以上に情報を伝えてくる。全体的に肉付きに乏しいが、それでも柔らかい。
さらに天津の香りに覆いかぶさるように荷渡の匂いが日ノ下の鼻孔に満ちた。不健康な見た目をしているくせに、女子らしい石鹸とミルクが絡み合ったいい匂いだ。
こいつ、恥ずかしいとか思わないのか? 少なくとも僕はいろいろと悶絶ものだ!
そんな思考も天津の部屋に入ってきた足音にかき消された。
気づかれたか――?
息を殺す。
バレても保険はあるが、それは本当に正常に機能するのか? 天津が説明するだけで誤解が解けるのか? 物わかりのいい両親なのか?
停学処分、退学、転校――。
様々な不安が脳裏を駆け巡る。見つかりたくない。密着した荷渡の背中にはきっと日ノ下の心臓のバクつきが伝わってしまっている。
こんな時でも荷渡は平静を保っているのだろうか?
ふと、そんな疑問が浮かんだ。真っ暗で表情が見えないけれど、荷渡ならこの状況でもニマニマ笑っているような気がした。
ふいにズボンの膝の部分に力を感じた。制服のズボンを荷渡が強く掴んでいるのだ。
クローゼットの前に、足音の主が立つのがわかった。
もうだめか。
日ノ下のズボンを掴む手の力が一層強くなる。
「ちょっとお父さん! 勝手に私の部屋に入らないでくださいよ!」
制止。
「あー、すまんすまん。なんか音がした気がしたんだ。泥棒でも入ったんじゃないかって思ってな」
「もーまだボケる年じゃないですよ。ほらほら、出てってください」
「……うう、最近冷たいぞ」
お父さんと思われる足音はどしどしと外に出ていった。
クローゼットの扉が開くと、窓から差し込む夕日の中に神々しく天津が立っていた。この時ばかりは、変態ロリコン漫画家が女神に見えてしまった。