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その少女、黒歴史製造中につき取扱注意!17

「物置にはなかったぞ」

「りょーかい。こっちもいまだに見つからずだね。後三分で作業を済ませるよ。そろそろ天津ちゃんの話のネタが尽きそうだし」

 天津とその母親の会話はスカイブを通じて常に日ノ下達に伝えられている。確かに母親が訝りだしており、引き留めるのは厳しそうだ。

 日ノ下は天津の両親の部屋に移動する。大きなダブルベッドが目に入ったけれど、できるだけ意識しないようにする。上品なインテリアが多く、ホテルのような雰囲気が漂っている。

 さっきの物置と違い、探す場所は極めて少ない。

 ぱっと見で隠せるのはベッドの下か死角クローゼットくらいだ。量を考えればベッドの下はまずない。本命はクローゼット。

 変な物が――たとえば夫婦の秘密に関する物が出てきませんように。

 そう願いながらクローゼットを開けた。

「あっ――」

 吊るされた外着の下にフィギュアやポスターなどが詰められた段ボールが置かれていた。よくよく見ればグッズの大半が幼い見た目をした女の子のフィギュアやポスターだ。将来犯罪を犯して世間からの偏見を深める材料にならないことを祈るばかりだ。

 そのアイテムの中にクッションがあり、持ち上げると綿以外の異物が入っているのがわかった。

 見つけた――目的は達成した。

 一刻も早くこの家から出たい。早足に部屋を出ながらイヤホンのマイクに向かって報告する。

「目的の物を見つけた。これより帰還する」

 ついついスパイっぽい言い方になってしまった。が、荷渡からの反応がなかった。おかしいなとは思いつつも、日ノ下は階段を降りる。階段半ばで下から上がってきた荷渡とばったり出会った。

「どうした? もう見つ――」

「シーッ!」と、口に右手の指を当て荷渡は上、上と左手で指す。

 わけがわからないままに荷渡に押され、三階の天津の部屋にまで移動する。

「どうしたんだ?」

「天津ちゃん達の会話聞いてなかったの? お父さんが帰ってきたんだよ」

 探すのに夢中になっていて、垂れ流しになっていた天津と母親の会話は気に留めなくなっていた。下の階から足音が響く。

「隠れた方がいいね――。ほら、クローゼットに入るよ」

 焦っていた日ノ下は言われるがままに天津の部屋にあったクローゼットに入る。幸い、下の方に人一人分入れるだけのスペースがあった。ハンガーに吊るされた服から天津の香りがする。

 いい洗剤使ってるせいなのか――上品な香りだ。

 匂いに気を取られていた日ノ下は荷渡がどこに隠れるつもりなのか考えていなかった。このクローゼットには一人分のスペースしかない。

「ボクが小柄でよかったね。ほら、上に座るよ」

「ちょっと待て――おま」

「静かに」

 ソファに身を預けるかのように日ノ下のひざの上に座り、クローゼットのドアを閉めた。

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