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その少女、黒歴史製造中につき取扱注意!11

 そういえば――荷渡妖怪説の中に彼女が旧校舎で突然姿を消すという噂があったけれど、これが原因なのかもしれない。更衣室の扉は廊下の角を曲がった先にあり、更衣室の先にあるのは非常口だけだ。女子更衣室のドアには使用不可の張り紙があるので、そこに入ったとは考えられない。

 ドアの前で日ノ下はあたりを見渡す。

 外の窓から見える位置にはないし、人通りも少ない。よっぽどへましない限りは見つからないだろう。それでも細心の注意を払って日ノ下は更衣室に滑り込んだ。

「ようこそ、BHEの拠点に」

 女子更衣室の基本的な造りは、新校舎にある男子更衣室と変わらなかった。けれど、気のせいかもしれないが甘い香りがする。部屋の窓にはめられているのは曇りガラスだが日当たりはよく、部屋の中は明るい。

 更衣室は改造が施されており、本来ない物アイテムまでたくさんある。

 校長室に置かれているような二人用ソファがセットであり、骨董品と言って差し支えないブラウン管テレビが置かれている。そのテレビの前にはゲーム機がある。唯一壁際に遠慮するようにロッカーが置いてあるが、雰囲気としては更衣室ではなく事務所だ。

「歴代のBHEのメンバーがコツコツインテリアを調達したんだ。結果、けっこう居心地のいい環境になったよ。ここは自由に使っていいよ。本来持ち込みがダメなゲームもここなら持ち込み放題さ。生徒会は黙認してくれるからね。魅力的でしょ?」

「……確かに魅力的だが、やっぱり精神的なデメリットが大きいんだよな」

 証拠に右耳がまだ少し疼いている。

「まぁまぁ。そのうち君も入ってよかったって思えるようになるよ。調教して」

「おい、最後不穏な言葉が聞こえたぞ」

「さて、拠点の紹介も終わったし、早速調教兼BHEの仕事のチュートリアルといこう」

 上機嫌に指を振りながら話す幼怪に日ノ下は冷めた視線を送る。荷渡は使い勝手のいい部下が手に入ったと思っているのだろう。

「今日は常連さんから呼び出しがあるんだ」

「BHEの常連ってなんだよ。黒歴史製造機かそいつは」

「まーね。仕事柄、黒歴史を作ってしまうんだよ」

「仕事柄……? ぱっと思いつくのは作家の類か?」

「正解。しかももうすぐ商業作品も出すし、一応プロだね」

「それは凄いな……少し会ってみたいかもしれない」

「お、日ノ下くんノってきたね! 旧校舎の屋上で待ち合わせしてるからさ、行こうか」

 言って荷渡は更衣室の扉に手をかける。

「そういえば……出る時は外を見られないのか? ばったり出会ったら目も当てられないんだが」

「残念ながら、出る時はほぼ運だね。一応扉に耳を当てて外に人がいないか確認くらいはできるけど」

「……」

「ま、大丈夫さ。わざわざこんな旧校舎の端っこにまで来るような人はいないよ。来るとしたらかくれんぼしてる変わり者くらいさ」

 学校を卒業するまでに女子更衣室を出入りする変態の汚名を着せられずに済むのだろうか……。こんなことになるなら女に産まれたかった。

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