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第88話

書籍発売しました!


書籍では、各ヒロインとのより密なエピソードも書き下ろした他、レリウスの大活躍などもあります! WEB版とは随分と変わっています!


試し読みもありますので、そちらで挿絵なども少しみられますので気になった方は見てみてください!



 ホーンドラゴンが討伐されてから、三日が経った。

 俺たちの仕事も完全に終了となった。

 その場で依頼達成の報告も完了し、俺たち冒険者の依頼は終了となる。


 これから街で遊んでいく計画をたてる者。

 すぐに次の依頼を探して冒険者ギルドを目指す者。

 親しくなった人同士で飲みに行く人が多いか。


 ……まあ、それは各パーティーが使用していたテントの撤去を行ってからの話だが。


「お疲れ様、レリウス」


 声をかけてきたのは、メアさんだ。

 彼女との仕事も久しぶりだった。なつかしさと同時に、彼女がさらに強くなっていることもわかり、俺も頑張らねばと思った。


「お疲れ様ですメアさん。メアさんはこれからどうするんですか?」

「ああ。今組んでいるパーティーと合流予定なんだ」

「そうなんですね。確か、オークションでほしいアイテムがあるといって、一時的に別れていたんでしたっけ?」

「そうだ。みんなと、ここで合流予定なんだ。レリウスはどうするんだ? すぐに、街に戻るのか?」

「いえ、俺はちょっと用事がありますのでまだしばらく街に残りますね」


 俺はフィーラさんのことを思いだす。

 昨日、あれからしばらく話をしていたのだが、一緒に劇を見に行くことになった。

 なんでも、貴族としていくつかチケットが余っているらしいのだ。


 俺もリスティナさんの演劇がどのようなものか気になっていたので、見にいくことにしたのだ。

 楽しみ半分、不安半分といったところだ。


 相手は仮にも伯爵家のご令嬢。

 下手なことがあれば、その後何があるか分からないからな。


 特に、フィーラさんの父親は「うるさい人」、みたいだ。

 あくまでフィーラさんが言うにはではあるが、俺までいらぬ誤解を与えてしまうかもしれないからな。


 できる限り粗相のないように、頑張るしかないのだが。


「そうか。レリウスは今後も冒険者として活動するのか?」

「はい、そのつもりですね」

「そうか。それならまた今度、どこかで会えたらいいな」

「そうですね……っ」


 俺も神器がなくても戦えている。

 その限界がいつ迎えてしまうか分からないが、限界が来るまでは冒険者として頑張りたいものだ。

 テントの撤去作業が終わった。


「それじゃあ、また今度だな」

「はい」


 街まで戻った俺とメアさんは、そこでそれぞれの目的地へ向かうため、別れた。

 


 〇


 

 しばらく街を見て歩きながら、クルアさんのもとへと向かう。

 クルアさんは今日も馬車を背に商品の販売を行っていた。


 こちらに来てから、ほぼ毎日休みなくだ。今販売しているのはポーションで、彼女の容姿も相まってか、冒険者たちがずらりと並んでいた。


 ここ最近、外の魔物たちへの対策としてポーションは高騰していたそうだ。

 クルアさんの店は他の店よりか気持ち安いため、冒険者たちが良く買いに来ているのだ。


「クルアさん、手伝いますね」

「え、あ、いいんですよレリウスさん!」


 表に並んでいるポーションはもう少しで終わりだ。

 こちらに来てから、大体暇な時間は、クルアさんの仕事を手伝っていた。

 初めこそクルアさんは迷っていたが、すぐに共に仕事を行う。


 残りのポーションの個数と並んでいる冒険者たちを数え、購入可能な冒険者までの列を整理する。

 俺の仕事はそのくらいだ。

 購入できなかった冒険者たちは、愚痴をこぼしていたがそれは俺が謝罪しておくしかない。


 俺が在庫を増やすことは可能だったが、あんまり大量にポーションを販売しても怪しまれる。

 そういうわけで、毎日決まった個数だけという決まりを設けていた。


 あとは、クルアさんがうまく誤魔化しつつ販売してくれている。

 夕陽が沈みきったところで、ポーションは完売となった。

 ……クルアさんのポーションも、他の街に比べて倍くらいの値段であるが、それでもみんな買っていってくれている。


 ただ、それも今日か明日くらいで終わりだろう。

 それ以降は値段も落ち着き、いつも通りの日常が戻ってくるはずだ。


「ありがとうございます、レリウスさん」

「いえ、このくらいのことは慣れていますから。今日で無事、冒険者のほうは終わりました。クルアさんは明日まで残る予定ですよね?」

「はい。……明日までであれば、まだポーションを高値で売れますからね。稼げるときに稼いでおく必要があります」

「わかりました。あと、荷台に補充しておきますね」

「はい、お願いします」


 クルアさんも店を畳むため、荷物を片付けていく。

 

「そういえばクルアさんって、お金はアイテムボックスで管理しているんですか?」

「はい。商人になる際に、多くの場合は師匠から貸してもらえますからね」


 世のアイテムボックスの八割は、冒険者ではなく商人が持っていると聞く。

 クルアさんもお金に関してはすべてそちらで管理しているそうだ。


「レリウスさんは、明日アルスゥス家の方とともに劇を見に行くんですよね?」

「はい」


 クルアさんには、アルスゥス家との関係について簡単に話している。


「……あー、ちょっと羨ましいですね」

「え、劇のことですか?」

「はい……何でも、今回の劇は身分違いの二人の男女が主役の恋物語みたいなんですよ……きっと切ない恋のお話なはずなんです。……その結末が見てみたいんです」


 意外だ。クルアさんはあまりそういったものに興味がないと思っていた。

 どちらかといえば現実主義で、真面目な子だと思っていたからだ。

 目をかがやせていたクルアさんは、それからはっとしたようにこちらを見る。


 首をぶんぶんと振って、頬を僅かに染めた。


「も、申し訳ありません。つい、語りすぎてしまって」

「いえ……俺もあまり劇についての情報がなかったので助かります。そういえば、席はまだ余っているみたいですし、アルスゥス家の方に一緒に見られないか頼んでみましょうか?」


 確かフィーラさんはそんなことを言っていたような気がする。


「そ、そんな失礼なことをお願いなんてできませんよ! ……それに、明日まではお金が稼げますから」

「……そうですか」

「ですから、楽しんできてください。それで、後で感想を聞かせてくださいね」

「……はい。わかりました」


 劇か。

 あまりそういったものを好んで見たことがない。

 どちらかといえば、女性向けの話が多いそうだけど、俺も楽しめるだろうか?


 けど、中々普段から見れるものじゃない。

 明日は、クルアさんの分まで楽しんでこようか。

 

 


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