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第83話


「それで、キミは……魔物から逃げようとしていたのですか?」

「違うわ……。この魔石を破壊しようと思っていたんだけど――」


 そういって、少女が指さした先には、黒い魔石があった。

 禍々しい魔力を生み出す魔石……それは先ほど俺が破壊したものと似ていた。

 というか、たぶん同じものだろう。


「俺も森の外で魔物と対峙していたときに、同じものを見ました。破壊なら、任せてください」

「手伝ってくれる? ここで魔石にダメージを与えていると、魔物が湧いてきて妨害されるのよね」

「手伝う、といいますか……」


 俺は神器であるハンマーを取り出し、すっと叩きつける。 

 その瞬間、魔石が砕け散り、俺のアイテムボックスに回収された。

 一瞬の出来事だった。少女が目を見開いた。


「え、え!? いいい今なにしたの!?」

「……俺のハンマーだとこれの破壊が可能なんです。どうにも、相性が良いみたいで」

「な、なるほど……そんなことがあるのね。相性……かぁ」


 とりあえず、納得してもらえたようだ。

 別に少女の言う通り破壊するのを手伝ってもよかったが、それでまた先ほどのような魔物に襲われたら敵わない。


「とりあえずこれで、あたしの仕事は終わったわね……あとはみんなと合流しないと、ね」

「みんな、というのは冒険者の方たちですか?」

「まあ、その人たちもそうだけど、どっちかっていうと騎士たちね」

「……なるほど」


 ということは、騎士の仲間だろうか?

 確かに彼女が身に着けている服は、冒険者というよりはどこかの学園の生徒、という感じにも見える。

 あれだろうか? 騎士育成学園の生徒が、騎士と一緒に援軍としてきたとかだろうか?


 少女が前を歩き、俺もその後ろをついていく。


「そ、その……あたしの名前は……ベニーって言うんだけど……あ、あんたの名前ってなんていうの?」

「俺は、レリウスっていいます」

「れ、レリウス……ね。そうなんだ」


 俺の名前をうわごとのようにつぶやき、頬を染めるベニー。

 一体どうしたんだろうか。

 俺は首を傾げながら、彼女とともに歩いていく。


 さっきの魔石を確認してみる。

 俺が回収した魔石は、迷宮クリスタルと書かれている。

 ……騎士と言っていたし、渡しておいたほうがいいよな。


「ベニーさん、さっきの魔石なんですけど……これって何かわかりますかね?」


 俺はポーチから迷宮クリスタルを取り出す。ベニーさんはそれを掴んで眺めていた。


「うーん……ちょっと分からないわね。とりあえず、魔物を召喚する危険な魔石であることはわかったけど――」

「……そうですか」

「とりあえず、騎士に渡して調べさせてみるわね」

「お願いします」


 ベニーさんはそれをポケットにしまった。

 もう一つ、持っていたがそちらはとりあえずまだ渡さなくてもいいだろうか。


 迷宮クリスタルを作成するのにも、俺ではまだレベルが足りないのか難しいようだしな。

 ベニーさんとともに歩いていくと、開けた場所に出た。

 冒険者と騎士が疲れた様子で座り込んでいて、こちらを見ていた。


「ベニー様! 良かった、無事破壊できたのですね!」

「……ええ、そうね。こちらの冒険者の協力があって、なんとかって感じだったわ」

「そうですか……っ! ありがとうございます」


 騎士の一人が立ち上がり、俺のほうまできて頭をさげた。

 そんな彼に、ベニーさんが先ほどの魔石を渡した。


「この魔石なんだけど……無事破壊、っていうか力をなくすことができたのよ。調べてもらうことって可能なの?」

「……これは――以前、自分が迷宮研究所でみた魔石に似ていますね。独特な強い魔力を感じられますね……っ」

「迷宮を作るための魔石ってこと?」

「はい。クリスタルと呼ばれるもので、確かにこれなら魔物を大量に生み出すこともできるかもしれませんね」

「……けど、迷宮の魔石って、学園にある迷宮三つしかないのよね? それ以外は全部失敗しちゃったって聞いたわよ?」

「失敗はしました。……ただ、その魔石の行方までは……私たちも調べてみないとわかりませんね」

「そう……なのね」


 ベニー様、と呼ばれているということは、それなりにお偉いさんなのだろうか?

 今度から俺もベニー様と呼んだほうがいいだろうか。


「とにかく……ありがとうございます」


 そんなことを考えていると、騎士が改めてお礼とばかりに頭を下げてきた。

 冒険者や騎士たちとともに俺は森からキャンプをしている場所まで戻ってきた。


「レリウス! 無事だったか!」

「おまえがいなかったら、オレたち全滅してたよ! ありがとな!」


 笑顔とともにゴンさんとギャルベロッサさんが抱き着いてきた。

 俺は苦笑しながら、彼らの抱擁をとりあえず受け入れておいた。

 冒険者と騎士たちがキャンプ地で新しい編成について考えているようだった。


 ひとまずは例の魔石を探すことに注力したいといった話を聞くことになった。

 重要な話については、上の人たちがしている。


 俺はゴンさんたちとともに自分たちのテントへと戻ってきた。

 

「それにしても、レリウス。おまえ、本当強いな」

「……そう、ですかね?」

「謙遜すんなって」


 ……あまり他の冒険者と一緒に戦う機会自体少なかったからなぁ。

 以前のラビットカンガルーと戦ったことで、それなりに自分の力が強いのは分かっていたが、ランクC、B級の魔物と戦えるほどとは思っていなかった。

 冒険者としても何とかやっていけるのかもしれない。


「そうだ。夜の見張りは俺たちでしてるから、レリウスとメアはゆっくり休んでな」

「……いいんですか?」

「おう。なんかあったとき、レリウスが動けないほうが問題だからな。オレたちはまたあとで休むぜ」

「……わかりました。ありがとうございます」

「いいってことよ」


 ゴンさんが微笑みながら背中を叩いてきた。


「あっ、そうだ。夜食として、こちらでも食べてください」


 せめて、と思い俺は自分の宿で出されているハンバーガーを作ってからゴンさんたちに手渡した。


「おっ、アイテムボックスってのは本当便利でいいな。ありがたく頂くぜ!」

「……滅茶苦茶うめぇなこれ!」


 二人は嬉しそうにそれらを食べていってくれた。

 出来立てだし、かなりおいしいだろう。

 メアさんが俺のほうをじっと見てきた。


 口元によだれが見える。


「わ、私にもくれないか?」

「……これから寝ますけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ!」


 ……朝起きてから食べようかと思っていたが、そういうなら渡しておこうか。

 俺はメアさんにもハンバーガーを渡す。

 すると彼女は目を輝かせてかぶりついた。





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