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第82話


挿絵(By みてみん)

こちらの作品の表紙になります!

イラストはなかむら様、レーベルはカドカワBOOKS様、発売日:4月10日となっております!

是非とも買っていただけると嬉しいです!


 ランクが一つ違えば、実力も大きく変わってくる。

 それは人間はもちろん、魔物もそうだった。


 マグマスコーピオンの一撃に、俺は剣を合わせる。

 速いが見えないほどではない。

 弾かれた次の瞬間に、ギャルベロッサさんのほうにポーションをいくつも投げておいた。


「それで、全員の治療を行ってください!」

「わ、わかった!」


 ギャルベロッサさんが受け取る。マグマスコーピオンが俺のほうに大きく跳躍してきた。

 取り出した別の剣をマグマスコーピオンに投げつけるが、弾かれる。

 シルバーソードでも、その甲殻を破ることは難しい、か。

 

 何度かの打ち合いのあと、治療が終わった冒険者たちに視線を向ける。


「ここは俺が足止めしますから、全員森の外に避難してください!」

「……くっ、すまねぇ!」


 ゴンさんたちが顔を顰め、外へと向かう。

 ……ここにいる魔物たちは俺たちの手に負える相手ではない。

 それを理解しているからこその逃走だ。


 俺は剣をいくつも作り、身体能力を高めていく。

 今の俺が到達できる限界まで到達したが、マグマスコーピオンとどうにか切り結べるほどだった。

 ……まずいな。

 今の俺ではレベルが足りていない。

 

 もっと強くなる必要があるだろう。

 俺はミスリルソードに、ウェポンブレイクを付与する。


 飛びかかってきたマグマスコーピオンをとびこえ、剣を投げつける。

 同時、破壊する。


 マグマスコーピオンに大きなダメージが入ったのがわかった。

 零れ落ちたミスリルを回収し、再びミスリルソードを作製する。


 やはり、作製した際の経験値効率は非常に良い。

 それを何度か繰り返すと、レベルは25に到達した。

 マグマスコーピオンが振りぬいた爪をかわし、その関節部分に剣を落とした。


 ミスリルソードが、マグマスコーピオンの装甲に深く入る。

 剣が抜けない。

 マグマスコーピオンの口元がにやりと歪んだ。

 

 爪が振りぬかれたが、すぐに回避し、俺はウェポンブレイクを発動した。


「ギャン!?」


 さすがに、間近で受けたウェポンブレイクにマグマスコーピオンも耐えきれなかったようだ。

 爪が砕け飛び、落ちた。

 

 俺はミスリルを回収し、再び剣を作り上げる。

 片腕を失ったマグマスコーピオンが威嚇するようにこちらを睨んでくるが、その隙に壊れた片爪を解体する。


 それによって獲得したマグマスコーピオンの爪を用いて、ミスリルソードを強化する。

 出来上がった剣は、マグマスコーピオンミスリルソードだ。


 その剣を鞘から抜いて、何度か目で見る。

 ……かなり、性能はあがっているようにみえるな。


「ギャア!」


 マグマスコーピオンは俺の剣を見て、苛立ったようだ。

 自分の体の一部を、その場で武器の一部にされたからだろうか。


 マグマスコーピオンが飛びかかってきて、尻尾を振りぬいてくる。火が噴き出し、周囲を焼き払うが、俺はそれをかわした。

 レベルアップの影響もあるからか、もうマグマスコーピオンの速度は怖くない。


「くらえ!」


 回避し、背中側に回った俺が剣を振り下ろす。

 これまでよりも切れ味があがっている。その証拠に、マグマスコーピオンの背中をすっと切り裂いた。


「ガ、アア!?」

  

 さすがに、それだけのダメージを受けてマグマスコーピオンが動けるはずもなく、その場で倒れた。

 死んでいるのを確認してから、解体を行い、素材を回収する。


 結構いい素材が手に入ったな。

 喜ぶのは後だ。今は冒険者たちと合流しなければならないだろう。


 俺は装備品を確認しながら、森の音がする方へと歩いていく。

 そのときだった。こちらへと何かが弾き飛ばされてきた。


 それは少女だった。俺は反射的に彼女を受け止め、弾かれる。

 ……痛った。なんなんだ?


 俺がちらと視線を向けると、彼女はくぐもった声をあげた。

 手には神器が握られている。見た目は小さいが、これでも職業と神器を授かれるような年齢の子、ということなんだろう。


 少女を起こそうとしたのだが、足音が近づいてきた。

 視線を向ける。そこには二足歩行の細身のワーウルフのような魔物がいた。

 ワーウルフ……と思ったのだが、随分とやせ細っている。

 そいつは両腕を広げるように吠えた後、こちらへととびかかってきた。


 ……仕方ない。

 俺は装備品をいくつも取り出して、周囲に転がしながら跳躍する。

 少女を抱えたままの跳躍だったが、ワーウルフをかわすのに十分だった。


 ワーウルフは俺を追いかけようとしてきたが、


「ウェポンブレイク」


 周囲が大爆発に巻き込まれた。

 ワーウルフを吹き飛ばした俺は、その生死を確認するより先に、少女の体にポーションをかけた。


「……あ、あれ? あたし――」

「よかった、目が覚めたみたいですね」


 ……さすがに死んではいないとおもっていたが、それでも不安ではあった。

 俺がほっと胸をなでおろしていると、少女が驚いたようにこちらを見てきた。


「あ、あんたが助けてくれたの?」

「はい。……といっても、まだ魔物はいるみたいですけど――」


 ワーウルフはあのウェポンブレイクの爆風の中でもまだ生きていたようだ。

 それでも、満身創痍といった様子である。

 ワーウルフがこちらを睨みつけていた。


「……嘘、あんたアレにあれだけのダメージを与えたの?」

「まあ、そうなりますね」


 ワーウルフが吠え、こちらへと飛び掛かってくる。

 俺は少女を抱えたまま、その攻撃をかわしていく。


「もう、一人で動けますか?」

「……う、うん」


 その返事を聞いた俺は飛び乗った木の太い枝に着地し、少女をそこに置いた。

 それから、剣を二本取り出し、ワーウルフへと飛び掛かる。


 ワーウルフが迎えうつように爪を振りぬいてきた。

 速い。

 さっき戦ったマグマスコーピオンよりも速い。なんとか剣を当てたが、弾かれる。

 

 わざと剣を捨てた。それをウェポンブレイクで爆破する。

 さすがに、誰かに見られているからといって加減できる相手ではない。

 俺の一撃を受けたワーウルフは、それで体力の限界を迎えたようだ。その場で膝をついた。


「……凄い」


 気づけば少女が神器を持ったまま、こちらへと近づいてきていた。

 彼女をちらと見ると、少女は慌てた様子で視線を外した。


「ちょうど、冒険者を探していたんです。……誰か知りませんか?」

「……冒険者の人、なの?」

「まあ、そうですね」

「……そう、なのね。助けてくれて……あ、ありがとね」


 ぺこり、と少女は頭を下げた。

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