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第79話

 ルッコスの街に着いた。

 俺たちがついたのは街付近だった。

 ただ、俺は冒険者として街外で仕事をする必要があるので、一度そちらに向かう予定だった。


「ここまでありがとうございました!」


 リスティナさんがぺこりと頭を下げる。

 

「気にしないでください。劇、頑張ってくださいね」

「はい! 頑張ります! クルアさんもこれからお仕事ですよね? 頑張ってくださいね」


 とりあえず、リスティナさんを無事街まで連れてくることができてよかったな。

 あとは、クルアさんにちょっかいをかけられないことを祈ろう。


「レリウス先輩も、無茶しないでくださいね?」

「わかっています」


 リスティナさんとクルアさんは心配そうにこちらを見ていた。

 ただ、俺はそれなりに戦えるほうだ。それほど大きな問題はないだろう。

 二人と別れ、街の外に向かう。


 馬車で街に入るまでは来ていたが……確かに酷い状況である。

 外にはいくつものテントがあった。

 避難者たちがこの場に集まっているのだ。


 この街での被害は今のところない。

 ただ、皆故郷から逃げてきたため、空気が重たかった。


 俺はそんな人たちを眺めながら、歩いていく。


「緊急依頼を受けた冒険者たち! こっちで点呼をとるから集まってくれ!」


 ギルド職員だろうか。

 その人が肩に妖精を乗せ、紙を持っていた。


 俺も列に並び、妖精と共に一緒にいた冒険者にギルドカードを手渡した。

 ギルドカードを手渡された冒険者はそれを確認してから、俺のほうに手渡してきた。

 これで、正式に依頼は受領したことになる。


「よし、全員いるな。ここにいる者たちにはランクごとに分かれて行動してもらう! すでに、先に入っていた冒険者と組むようにパーティを編成しているから、詳しい仕事に関しては同じパーティの人に聞いてくれ」


 それから、ランクごとに合わせ、パーティが編成されていく。

 まず高ランクのものたちはなるべく後の街から少し離れた場所での警戒を行うことにしているようだ。


 俺たちに比較して、危険な役回りになるようだが、今のところ死者は出ていないようだ。

 逆に俺のような低ランクの者はこの近辺の周囲の警戒を行うことになっている。


 まず高ランクの者達が周囲の魔物と戦い、その後にそれを突破してしまった魔物を俺たちが討伐する。

 それが基本的な流れのようだ。


「……あっ、レリウスじゃないか!」


 懐かしい声が聞こえた。

 そちらを見ると、犬耳が特徴的な獣人――メアさんがいた。


「あれ、メアさんじゃないですか? どうしたんですか?」

「依頼を受けたのだが、まさかキミも一緒だったとはな」

「そうですね。一人ですか?」

「ああ。今組んでいたパーティの人たちは、少し用事があってな。別行動をしているんだ」

「そうですか」

「どうやら、一緒のパーティみたいだな」

「はい、お願いします」

「それじゃあ、向かおうか」


 メアさんとともに、配属されたパーティへと向かう。

 色々と話したいことはあったけど、今は仕事中だからな。


 またあとで、聞いてみようか。

 俺が入ったグループはランクDとEの二人がいる。


 俺たちを含めての四人パーティのようだ。

 自己紹介の後、軽く現状を聞いてみた。


「魔物はここまで来たことねぇな。俺達なんているだけなようなもんだぜ」

「そうそう。冒険者以外にも騎士がいるんだしな俺たちの出る幕なんてそうそうねーよ」

「だから楽な依頼なんだよ。これで俺もランクCへの挑戦権が得られるんだからな」

「オレもな! レリウスはどうなんだ?」


 みな、今回の依頼に関して能天気な様子だった。

 彼らは三日前からここにいたらしいが、まだ一度も戦闘がないらしい。


「そうですね。俺もこれが終わればランクDの昇格依頼を受けられますよ」

「よかったじゃねぇか! ま、さすがに被害にあった人たちと接するときは慎重にな?」


 先輩としての意見はそのくらいのようだ。

 確かに被害にあった人達にはさすがにこんな明るくは話せないだろうな。


「魔物討伐以外にも仕事があるんですよね? 他にはどのようなことをやるのですか」

「たまに商人の荷物運びとか手伝うな。あとは、テントに食事を配分するときとかの手伝いだな」

「なるほどわかりました」


 となると俺たちの方よりも商人の方が大変そうではあった。

 あとでクルアさんと合流する予定もある。その時にそちらの状況は聞いてみようか。


 そのまま夜を迎えるまで。先輩たちが言っていた通り、魔物と戦うことはなかった。

 だが――夕陽が落ちたときだった。


 パーティーの人たちとのんびり話しているとき、激しい音が響き渡った。

 それは敵襲を告げる鐘の音だ。


「魔物だー! 魔物が現れたぞ!」


 あちこちで冒険者の声が響いた。

 空を見ると、いくつも魔法が打ち上げられていた。

 魔物の襲撃を意味するものだ。


 にやりと、俺たちのパーティリーダーであるゴンが笑った。


「珍しいじゃねえか。オレたちの出番だな」

「ここに来るまでにはやられているんじゃないか?」


 ゴンの友人であるギャルベロッサが言う。


「確かにな。他の冒険者たちも暇を持て余しているからな」

「まっそれでも動かなきゃな。金貰ってんだし」


 ゴンとギャルベロッサが笑いながら立ち上がる。

 俺も剣を確認しながら、つぶやくようにいった。 


「少し、心配ですね」

「おいおい。どうしたレリウス?」

「これまで、魔物がここまで来たことはなかったんですよね? ということは、それだけの魔物か――あるいは数が多いということですよね」

「……確かに、そうだな」


 俺がそういうと、ゴンとギャルベロッサも表情を引き締めなおした。


「緊張しすぎない程度に、緊張してとりかかるとするか」


 ゴンを先頭に俺たちは魔物討伐へ向けて動き出した。



挿絵(By みてみん)

左から、クルア、フィーラ、レリウス、リン、メアになります。

イラストはなかむら様、レーベルはカドカワBOOKS様、発売日:4月10日となっております!

是非とも買っていただけると嬉しいです!

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