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第75話

 

 今日はクルアさんと会う予定があった。

 いくつか、相談したいことがあったのだ。


 約束の場所についてから五分ほど待つと、クルアさんがこちらへとやってきた。


「お久しぶりです、レリウスさん」

「こちらこそ、お久しぶりです、クルアさん」


 呼びかけると彼女がにこりと微笑んだ。

 仕事の後なのだろうか。ぴっしりとした服装に身を固めていた。

 彼女の服装は、きっちりとしたクルアさんによく似合っていて、今日も周りの視線を集めていた。

 そうして視線はクルアさんのあと、俺へと向かい睨みつけられる。

 嫉妬されているんだろう。別に俺たちに男女の関係はないんだけどね……。


 店へと移動した俺たちはそれから料理を注文して運ばれてくるのを待つだけになる。

 今のうちに相談しておこうか。


「クルアさん、早速なんですが相談内容にうつってもいいですか?」

「はい。大丈夫ですよ」


 にこりと微笑んだクルアさんは少し表情を引き締めた。


「まず、一つ目になるのですが。この前、一緒に、パーティーを組んだ冒険者に装備品を作って欲しいと頼まれたんです。そこに金銭の授受も発生するのですが、これはクルアさんを通したほうがいいですかね?」


 一つ目の相談は、シイフさんとウォリアさんから受けた武器の作製依頼についてだ。

 以前、リニアルさんにも武器は作ったが、前回はお金のやり取りはなかった。


 まあ、あれも相談してからの方が良かったのかもしれないが、あの時は大丈夫だと考えていた。

 だが、今回は明確にお金のやり取りがある。


「武器の作製依頼があったのですか?」

「はい」

「よかったですね! レリウスさんの夢の一歩が始まったんですね!」


 まるで自分のことのように喜ぶクルアさん。素直にうれしかったが、今はそこが本題ではなかった。

 クルアさんも分かっているようで、すぐに頷いた。


「個人的なやり取りであれば問題ありませんね」

「そうですか。それなら、作製してもいいですよね?」

「はい。もしも、大量に商品のやり取りを行う場合などは間に私が入ろうと思います。その場合は、普段通りに報酬を分けていただければ幸いです」


 なるほどな。

 商人としての後ろ盾があったほうが、大規模な取引では役にたつだろう。

 クルアさんはそれから考えるような表情を作り、口を開く。


「ちなみにですが、私もそれとなーく武器などについて聞いていますが、まだこちらに依頼はありません。レリウスさん、どうやって営業したんですか?」

「営業ってほどのことはしていませんよ。俺の場合は一緒にパーティーを組んで、実際に使ったところを、見てもらっていたんです」

「……なるほど。それは立派な営業ですよ。凄いですね」


 クルアさんの言葉に少し照れていると、彼女はすっと頭を下げてきた。


「相談していただいてありがとうございます。レリウスさんって真面目な方ですよね」

「どうするのが正しいのか分からなかったので。そういえば、クルアさんも何か相談したいことがあったんですよね?」

「……ええ、まあ」


 わずかに彼女は言いづらそうな顔をしていた。


「その、今現在、マイコス地方でホーンドラゴンという魔物と、それらに合わせて大量の魔物が周囲を荒らしているというのはご存知でしょうか」


 あっ、それ、ギルドで見たやつだ。

 俺も少し気になっていたが、まさかそれをクルアさんから聞くとは思わなかった。


「聞きました。ただ、緊急依頼で聞いただけでしたので詳しくは知りませんね」

「私も魔物の情報などは聞いていませんが、商人として食料など何か運べればと思いまして、レリウスさんに納品のお願いをしたいと思っていたんです」

「なるほど、そういうことでしたか」


 たしかに俺の能力を使えば、それらの問題は片付く。

 あまり過剰に配布してしまうと、目立ってしまうがそこはクルアさんに任せればいいだろう。

 それに、誰かのためになるのなら悪い気はしない。


「わかりました。ただ、俺もその緊急依頼を受けようか考えていたんです」

「えっ、そうなんですか?」

「はい。ポイントもかなりもらえますのでDランクを目指すいい機会だと思っていたので」

「私も直接向かおうと思っていたんです。それなら、一緒にいきませんか? レリウスさんがいれば、想定以上にうまく商品が運べますし」


 まあ、俺がその場で生み出せばいいんだからな。

 クルアさんがあれこれと考えている。


「凄いですね、クルアさん」

「え? 何がですか?」

「困っている人のためにそこまで一生懸命になれるんですから」

「私は……昔、似たように困っているところを師匠に助けられたんです。商人を始めたのもいざという時に誰かを助けたいからなんです」


 そんな理由があったのか。


「頑張りましょうね」

「……ありがとうございます。レリウスさんがいれば、なんでもできそうです」


 頼って欲しいところだ。

 ある程度何でもできるのは間違いではないしな。

 よく見ると、クルアさんが耳を赤くしていた。


「さ、さっきのは変な意味はありませんからね!」


 慌てた様子でそういう彼女を見ながら、俺は勤務について考える。

 宿の方はしばらく大丈夫だろう。新しい人も入ったので、問題はないはずだ。


 あとは、どのくらいで、帰ってこられるかだな。

 早く戻れるのなら戻りたいが、向こうの状況次第だろう。

 特にホーンドラゴンとその他の魔物が討伐されない限りは、避難者たちも元の生活に戻ることはできないだろう。


 早いところ、討伐されて欲しいものだな。

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