第40話 ウェポンブレイク
次の休み。
俺は以前、メアさんと攻略したEランク迷宮に来ていた。
今日は別に攻略するために来たのではなく、単純に新しいスキルを試してみたかったからだ。
俺は先日手に入れたウェポンブレイクを試す。
付与されたスチールソードに手を向ける。
……一体、どのような効果なのだろうか?
相手の武器を破壊するようなスキルだろうか? それとも、俺の武器を破壊するようなスキルなのだろうか。
どちらにせよ、発動すれば何かしらの効果が出るだろう。
……マイナス系スキルという可能性もなきにしもあらずだが。
迷宮の三階層に下りたところで、サハギンを発見した。
サハギンは、人型の魚のような魔物だ。
魚類特有の鱗を持っていて、中々に俊敏。
おまけに、槍を持っていて、その扱いもうまい魔物だ。
以前メアさんと攻略しに来た時は、二人で戦ったのもあって苦戦はしなかった。
しかし、今回はどうなるか。
一応以前に比べて俺も成長している。
大丈夫、だとは思うが
まずは一対一で検証したい。
しかし、サハギンは最低でも二体で行動していた。
これでは、ゆっくりじっくり検証できない。
とりあえず、一体やろうか。
俺はいつものように毒攻撃つきナイフで先制攻撃し、一体を仕留める。
仲間がやられたことで激昂したサハギン一体がこちらへと飛びかかってきた。
魚のくせに脚力が凄いんだよな。
跳躍から槍とともに落ちてきた一撃をかわす。
……試して、みるか。
サハギンが突き出してきた槍をかわしてから、その柄に剣を振り下ろす。
同時、スキルを発動する。
「ウェポンブレイク!」
発動した瞬間だった。
俺の剣が砕け散った。同時、強烈な衝撃が周囲を抜けた。
まるで爆風だ。
吹き飛ばされた俺とサハギン。いってぇ……。
今のが、ウェポンブレイクだろうか。
俺はすぐに体を起こし、よろよろと起き上がったサハギンへナイフを投げつける。
投げる寸前に、ウェポンブレイクを付与しておいた。
サハギンに突き刺さった瞬間を見て、ウェポンブレイクを発動する。
……瞬間、爆発した。
ただし、武器は砕けて消えてしまった……。
なるほど。これがウェポンブレイクか。
……武器を代償に強力な一撃を放つスキル、か。
これは中々、使える攻撃だろう。
一つ気になったのは、武器しかダメなのかということだ。
さっそく実験してみようか。
俺は作製した指輪にウェポンブレイクを付与する。
これが小石のようで使いやすい。
近くにいたサハギンへと投げつけ、スキルを発動すると小爆発が起きた。
……スキルは発動する。
ただし、それほど威力が高いわけではない。
武器のサイズに影響を受けるのだろうか?
剣、ナイフ、斧、槍、杖、などなど、色々と大きさを変更して試してみる。
最初の予想は正しいようだ。
付与した対象が大きいほうが、威力は高くなるということだ。
俺はサハギンから逃げるように走る。
それから、近くの林に入り、手あたり次第に木々に触れていく。
後方を確認する。
俺が触れた木々の近くにサハギンがついたところで、ウェポンブレイクを発動する。
迷宮の木々が一斉に爆発し、サハギンたちを飲み込んだ。
後には、焼け野原のようなものが出来上がっている。
最初に死んだと思われるサハギンの素材までも、爆発に巻き込まれて木っ端微塵だ。
……危なかったな、俺。
下手したら、最初の一撃で俺自身がこうなっていたかもしれない。
というか、もっと危ないのはあの下着ショップだ。
女性がうっかりこの下着をはいて、ウェポンブレイクと口にしてみろ。
大変なことが起こっていたぞ。
ほら、男女がそうゆう仲になったときに「ウェポンブレイク!」とうっかり叫んでみろ。
下着が爆発して男女が爆発四散していたかもしれない。
他の人たちが、まったくスキルが見えないというのはある意味恐ろしいものなんだな。
……そういえば、世の中には謎の大爆発が起きた、とか、謎の神隠しがあった、とか不可解な事件が起きることもある。
もしかしたら、意図しないところでスキルが発動して、何かが起きてしまっているのかもしれない。
「ウェポンブレイク……滅茶苦茶強いな」
なにより、俺の職業と相性が抜群というのもいい。
……俺の職業、か。
一体誰が、鍛冶師を不遇と言い始めたのだろうか。
確かに鍛冶師は武器しか作れない。
ただ、それは他の職人だって似たようなものだ。
例えば、日用品などの作製が得意なものは、それ以外のものも作れないことはないが、一番得意なものと比較すれば、出来は微妙なものになるだろう。
第一、他の職人たちは、皆一から手作業で作る。
鍛冶師は、まるで神様が神器を作ったように、何でもその場で作り上げられる。
おまけに、ハンマーで壊したものは作製可能になるんだ。
なぜこれで、使えない職業といわれるようになったのだろうか?
歴史の勉強とかすればわかるのだろうか?
……うーん、けど学園に今さら通うわけにもいかない。
というか、国の教育機関で教えている内容だと、世間一般の人が知っている情報程度だろう。
皆が武器を与えられる。だから、武器しか作れない鍛冶師はハズレ。
鍛冶師が作れるもの――日常的に使うものであれば、ナイフや包丁などは他の職業の人でも作製可能なもの。
だから、鍛冶師は必要ない。
……けど、事実は違う。
鍛冶師は、何でも作れる。
これは俺の鍛冶師だけが異常なのか?
それとも、どこかで大きな歴史の歪みがあったのか?
今度、何か調べられたら調べてみたいものだ。
とりあえず、今は迷宮攻略を進めてみようか。
今の自分の実力がどこまで通用するか、試しておきたかった。
ウェポンブレイクのおかげで、俺の攻撃力不足を一気に補うことができた。
例えば、そのあたりに生えている木々にも使用することは可能なようだ。
ただ、もちろん木々などでは作り直さない限りは、つけられるスキルの制限が多い。
自然にあるものでは、良くてDランク程度のものしかなさそうだ。
自然物でいえば、土、木々、石なども一応はつけることもできるようだ。
……木々は敵に叩きつけることで、武器として使えるからか?
土は目つぶしと考えれば立派な武器で、石だって投げつければそうだ。
装備ができる、できないの基準はいまいちわからない。
ただ、自然物も厳選すれば武器に使うことは可能だ。
土などは一掴みではランクが表示されない。石などもそうだ。
ある程度の量、サイズが必要になるようだ。
覚えておけば損はない。そんな認識だ。
俺は鼻歌まじりに階層を下っていった。






