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第111話

挿絵(By みてみん)

12月10日 第三巻発売します! コミカライズ版も12月9日に発売しますので気になるという方はぜひ!


内容としましては、ウェブ版とまったく違います!

ほぼ全編書き下ろしです!


 彼らを馬車へと乗り込ませていく。

 馬車に乗るのが初めてという人もいるようで、どこか緊張や興奮といった表情が見て取れた。

 村の代表者というか、まとめ役のような男性が馬車に足をかけたとき、俺のほうに改めて頭を下げてきた。


「ほ、本当に助かりました……あなたがいなければ今頃我々は……」

「……あの、この辺りに他に村ってありますか? リンの行方を知るために聞き込みをしたいんですけど」


 リンが魔物との交戦を終え、近くの村で体を休めている可能性もあるだろう。

 俺の言葉に、しかし彼は表情を険しくした。


「た、確かここから北西のほうにありますね。……ただ――」


 彼の歯切れは悪い。それに表情だって良くなかった。

 ……どういうことだろう?


「何か、問題があるんですか?」

「……そこの長が……酷い男なのです」

「酷い、ですか? どのようにでしょうか?」

「その男は……かなりの力を持っていまして……蒼石の魔物を倒せるだけの神器も持っています。……ですが、その力を使って行うのは……人の選別でした」

「選別、ですか?」

「は、はい……。その男は女だけを自分の周りに集め、あるいは……自分に従順な男のみを村に入れました。……稀に訪れた可愛い女を無理矢理奪うなどの行為も行ってきました。……実際、自分の友人もその被害にあいました……」

「……なるほど」


 この大陸では、力こそ正義だ。

 『自分たちの脅威である蒼石の魔物から守ってほしければ、オレに従え』

 そういう人間も、決して少なくはないのだろう。


「ですから……カミラさんのようなきれいなお方は、確実に狙われてしまいますよ」

「……そう、ですか」


 それなら、カミラさんとは行かないほうがいいかもしれない。

 行くなら、俺一人だな。


 リンが、そういう村だと気づかずに保護を申し出た可能性もあるからな……。

 蒼石の魔物との戦いで傷ついている可能性だってある。


「ありがとうございます」

「いえ……お力になれずすみません」

「大丈夫です。村に戻ったら、バルドさんによろしく伝えておいてください」

「はい、わかりました。……何から何まで、ありがとうございます」


 ぺこり、と頭をさげ、彼が馬車へと乗り込んだ。

 俺はそれを見届けたあと、カミラさんを見た。


「カミラさん……その、俺は問題の村に向かってみようと思います」

「分かった、一緒にいこっか」

「い、いや……その、万が一ということもあるので、できればカミラさんは別行動をしたほうが――」


 俺がそういうと、カミラさんは片手を腰に当てた。


「私、狙われると思う?」

「え? は、はい。さっきの男性も言っていたでしょう?」

「どうして狙われると思う?」

「……い、いや、その……綺麗ですし……」

「そっか、綺麗、ふふ」


 カミラさんは嬉しそうに微笑んでから、首を振った。


「私は大丈夫。最悪、何かあったら空に飛んで逃げるから。ほかにも色々、隠し技も持っているから大丈夫」

「……分かりました。危険を感じたらすぐに避難してくださいね」

「うん、もちろん」「村に入るまでは、徒歩で移動しましょう。あまり、こちらの手の内を明かす必要もありませんからね」

「分かった。あの馬車、結構楽だった。リンを見つけたときは、あれでまっすぐ村まで帰りたい」

「分かりましたよ」


 カミラさんに並び、俺は北西の村を目指して歩きだした。

 どれほど時間がかかるかわからないが、暗くなる前にたどり着きたいものだ。

 


 〇



 村が見えてきたのは、昼を少し過ぎた時間だった。

 俺は鍛冶で製作した時計で時間を確認した後、その村を遠目に見ていた。

 村は貧相ではあるが、それなりにしっかりとしている様子だ。少なくとも、初めて訪れたカミラさんのボロボロの村よりはずいぶんと形の整った家が並んでいた。


「レリウス、どうする? 先に攻撃でも仕掛ける? それとも、空から乗り込んでやる?」

「……いえ、別にそういうことはしませんよ。ただ――少し気になる話がありましたよね?」

「え? どういう話?」

「……いうことを聞く男と、自分の好みの女のみがあの村では過ごせるんですよね?」

「うん、みたい。……もしかして、レリウスも参考にしようとしている?」

「違います! ……いうことを聞く男たちについて、気になっていたんです。あの入り口を守る男たちは……その言うことを聞く男、なんですよね?」

「……たぶん、ね。悪に従うなんて、情けない」

「その理由が、蒼石の魔物と戦えないから、だとしたら……色々と話が変わってくると思いまして」

「……どういうこと?」

「ちょっと、マッチポンプを仕掛けようと思います」


 俺は途中で派遣していたゴーレムがこちらにやってきたのを確認する。

 ゴーレムはウルフ種の蒼石の魔物を抱えていた。

 今も暴れている蒼石の魔物を確認して、俺は小さくうなずいた。

 数は三体だ。


「ゴーレム、あの男たちに蒼石の魔物をけしかけてきてくれるか?」

「ゴゴゴ!」


 ゴーレムたちは俺の頼みを聞いてそちらへと向かう。

 視覚強化で見ていると、門番が慌てた様子で武器を構え、何人かが村中に入ったことが分かった。


「れ、レリウスまさか、蒼石の魔物を利用して全滅させようとしている!?」

「違いますよ、今から助けに行きますよ!」


 カミラさんは首をかしげながら、小さく頷いた。


新連載になります。↓ 下のリンクから読んでみてください!



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