第109話
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渡り鳥の宿屋にて、俺は自分の部屋のベッドで横になっていた。
……ゴーレムたちの派遣は終わっている。全員に、リンあての手紙を書いて持たせている。
……まあ、リンがゴーレムに攻撃しないとも限らないんだがな。
そのときはその時だ。
一応、渡り鳥の宿屋の目印である、鳥のマークをゴーレムの左胸に刻んでおいた。
それで気づいてくれれば良いのだが。
ベッドで横になりながら、俺は自分の状態を確かめる。
……レベルは17まで上がっていた。
身近なものならだいたい何でも作製できる程度には成長している。
スキルを付与する場合も、高ランクのものが出現しやすくなっているような気がする。
今度は、レベルいくつまで上がるのだろうか?
……それと、神器の製作、か。
現状、神器の製作について行うほどの余裕がなかった。
作製しようにも、その画面を見ても、作製できるものはないと言われるのだ。
やはり、誰かの神器を一度破壊しないとダメなのだろうか?
破壊したあとが問題だ。
その神器の持ち主は、それからどうなるのか?
神器を失ってしまうのだろうか? そんなことを考えていた時だった。
部屋がノックされた。
「開いていますよ」
誰だろうか? 扉が開き、中へと入ってきたのはカミラさんだった。
彼女はにかっと笑い、俺もつられて口元が緩んだ。
「思ったよりも落ち着いている?」
「……カミラさんのおかげもありますよ」
今すぐに向かうのは、俺自身にも危険がある。
……普通に考えればそうだ。夜通し移動すれば、必ずどこかで睡魔に襲われる。
仮に、夜は大丈夫でも疲労を残したまま、日中の移動をすることになる。
命を落とす可能性は格段に上がるだろう。
……ここは、俺が知っている大陸よりも、ずっと危険なんだからな。
ベッドに腰かけていた俺の近くに、カミラさんも座った。
……風呂上り、それに薄着の彼女に少しドキリとした。
横目でそちらを見ていると、カミラさんが小首を傾げるようにして、覗きこんできた。
「……リン、きっと無事だよ」
「そう、ですね。リンは勇者ですからね。俺なんかよりもよっぽど強いと思いますよ」
「うん、勇者様は……この世界をすくってくれる人だって聞いたことがある。それだけの力を持っているんだから、自分の身くらいは守れるはずだよ」
……そうだな。
だからこそ、リンは大変な運命を背負わされてしまった部分もあるのだ。
俺は少しくらい、彼女の負担を軽減できるような人間に近づけただろうか?
俺がそんなことを考えているときだった。
ぎゅっと、柔らかな感触に襲われた。
それは、カミラさんの抱擁だった。
「あ、カミラさん!? な、なんですかいきなり!」
「……不安そうだったから。村の子たちに良くしているんだよ、こうすると落ち着くって」
とんとん、と彼女が背中を叩いてきた。
……俺はカミラさんのその心遣いに、唇をぎゅっと結んだ。
それから、笑みを浮かべ、カミラさんの腕を軽くつかんだ。
「もう、大丈夫です。ありがとうございます」
「そう? また不安だったらいつでも言ってね。いくらでも落ち着かせてあげるから」
「……はい。カミラさんも、何かあったら言ってください。力になりますからね」
「……うん、ありがと。けど、もう十分助けてもらったから。次は私が頑張るよ」
「ありがとうございます」
俺はこくりと頷くと、カミラさんは部屋を出ていった。
……不安がまったくないわけではない。
けど、今は体をしっかりと休めないと。
そうしないと、出来ることもできないからな。
〇
次の日。
俺は村の北門から、外へと出た。
……走っての移動も考えたのだが、結構距離があるそうなので、俺は馬車を用意することにした。
馬車、といっても……ここに馬はいない。
なので、ゴーレムに引いてもらうようにした。
名づけるなら、ゴーレム車といったところか。
馬車の基本的なものは、レベルがあがったことで作れるようになっていた。
それらを作り上げたあと、ゴーレム二体を作成し、馬車から伸びた轅を握ってもらう。
「ゴゴゴ!」
ゴーレムが俺たちを乗せた馬車を引っ張る。
出だしはそれほどではなかったが、一度加速すればスピードはかなりのものだった。
これなら、問題ないな。
さらに、護衛用としてゴーレムを三体作りあげ、周囲の偵察、護衛をお願いする。
これから先、どれほど村の外で行動するか分からないからな。
できることはなるべくゴーレムたちに任せたかった。
「馬車なんて、久しぶりに乗るかも」
馬車の窓から外を眺め、髪を押さえるカミラさん。
「……早く、すべての問題が解決すればよいですね」
「うん、けどそのためにもまずは今いる人たちを保護していかないと」
「そうですね。リンを探しながら、見つかればよいですね」
「うん」
俺たちは北へと進んでいく。
俺たちの馬車に合わせるようにして、ゴーレムたちが周囲を囲むように移動する。
……先に派遣していたゴーレムたちはどうなっているだろうか。
とりあえず、リンを見つけていれば村に来るように手紙は握らせているが……今のところそのようなゴーレムの陰は見当たらない。
そんなことを考えながら、ゴーレム車で一時間ほど移動したときだった。
ゴーレムを発見した。
敏捷が高い、細めのゴーレムだ。俺が派遣したゴーレムだな。
そのゴーレムがこちらへとやってきて、俺は馬車を引っ張っているゴーレムに指示を出し、馬車を止める。
「ゴゴゴ!」
偵察用ゴーレムがある方向を指さす。
「あっちに村があるのか?」
「ゴゴゴ!」
……みたいだな。
首を縦に振ったゴーレムに案内を任せ、そちらに向かう。
やがて、たどり着いた村は……ボロボロだった。
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