第108話
第三巻の発売日が決まりました! 12月10日、発売予定です!
驚いた様子でみんなが街を見ていた。
そうだ。
みんなの分の宿なども用意しないといけない。
……とりあえずは、宿のようなものを造ればよいだろうか。
「カミラさん、ちょっと皆さんの分の家を用意してきますね」
「分かった。夕食の準備はしておくから、レリウスが用意してくれた宿の食堂に集合ってことで」
「はい」
カミラさんがそういって、保護したみんなを宿へと連れていく。
……さて、さっさと造ろうか。
今後も似たような保護が増えるかもしれないので、先ほど作った渡り鳥の宿屋と似たような造りにしておけばよいだろう。
俺が魔力をこめて、細かく製作していく。
一度作ったからか、時間はそうはかからなかった。
今度作成した渡り鳥の宿屋2は、宿屋1に比べてサイズは一回り小さくしておいた。
……外観もちょっとだけ弄っておいた。まったく同じだと、みんなが不便に思うかもしれないからだ。
「すげぇー! また新しいのが出来てる!」
「ここはさっき保護した人たちの家になるから、中に入るときは気を付けてね」
俺が造っている姿を見ていた子どもにそう伝えながら、ともに宿屋1へと移動する。
すでに夕食の準備がされていて、おいしそうな匂いが店内に漂っていた。
食材は用意しておいたので、それを用いて街に残った子たちが作ってくれたようだ。
俺が食堂に入り、カミラさんたちの席へと移動する。バルドさんやビアンさんも一緒だ。
「それじゃあ、いただきます」
みんなで挨拶をしてから、夕食を食べる。
……特に、保護した人たちが凄い勢いで食事をしていた。
「こ、こんなにおなか一杯食事が食べられるなんて……! ここは天国か!?」
それじゃあ死んじゃっているじゃないか……。
「本当にこの国の中にこんなところがあるなんて思ってもなかったよ! もっと早く見つけられれば良かった!」
なんて涙を流しながら青年がパンやパスタをがつがつと食べていく。
……お代わりはまあ大量にあるからな。
パスタにしろ、米にしろ、色々と俺は用意してキッチンに保管しておいたからな。
それはさっきの宿屋2号店も同じだ。
保護した人たちが落ち着いたところで、俺はそちらに近づいた。
「皆さん、ちょっと聞きたい事があるんですけど……」
「なんですかレリウスさん! いや、レリウス様!」
「……いや、普通に呼んでくれればいいですよ。その、俺はこの国で女性を探しているんです。リンっていうんですけど……」
「え!? り、リンさん……いや、リン様がどうかしたんですか!?」
「……し、知っているんですか!?」
リンに関しては勇者だし、様づけでもよいだろう。
本人は嫌がりそうだけど。
「は、はい……リン様は私たちが暮らしていた町が魔物に襲われたときに来たんです。……そのとき、リン様が時間稼いでくれたおかげで、戦闘能力を持たない人たちが逃げることができたんです。……まあ、魔物の数が多く、私たちは結局逃げきれずに襲われてしまったんですけど……」
「……そ、それじゃあ皆さんがいた村に、リンはいるんですか!?」
「……いました。今はどうしているのかまでは分かりません……けど」
「そ、その村はどこにあるんですか?」
「私たちはここからさらに北に行ったところで暮らしていました」
「……分かりました。ありがとうございます」
……リンがいるかもしれない。
それに、今も危険な状況かもしれない。
すぐに行かないと。
「レリウス。夜は危険。……心配なのはわかるけど、無理をするのはやめたほうがいい」
「……カミラさん」
すっと、カミラさんが手を握ってきた。
それで、少しだけ落ち着けた。
「ゴーレムだけを先に派遣することはできるの?」
「……でき、ますね」
「それなら、ゴーレムに手紙を持たせて先に行かせたらどう? それで、明日陽が出たらすぐに出発しよう」
「カミラさんも来てくれるんですか?」
「レリウスじゃ迷子になるかもしれない。それに、言ったでしょ? リンの捜索に協力するって」
「けど、この村のこともありますし……」
俺がそういったときだった。
バルドさんが俺の前にやってきた。
「レリウスさんが用意してくれたゴーレムたちがいます。それに、この剣もあります。……レリウスさんは気にせず、自分の思うように動いてください。ここを拠点に、自由に動いてください」
「……バルドさん」
にこっと笑ったバルドさんの後、てくてく、と控えめにビアンさんがやってきた。
「こ、こちらは……わ、私も頑張って守ります……っ。ですから、気にしないでください!」
「……ビアンさん。二人とも、ありがとうございます」
俺がぺこりと頭をさげると、子どもたちがやってきた。
「レリウス兄ちゃん! オレたちも頑張るぞ!」
「だから、安心してくれ!」
「あっ、でも! ごはんとかは残してから行ってくれたらうれしいな!!」
子どもたちの言葉に、俺は苦笑する。
「もちろんです。保存食含めて、一ヵ月は困らないくらいは残していきますよ」
……みんなの笑顔に俺も口元を緩める。
無茶はしないようにしないとな。
そう強く思った。
短編たちです。良かったら読んでくれると嬉しいです。
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