第107話
俺は生み出した防壁を用いて、身を守る。
後ろにいた親子も問題ないようだ。
静かになったところで、俺は視覚強化を用い、周囲の様子をうかがう。
ボロボロになってしまったゴーレムがいる。
……オークは木っ端みじんになったようだ。
立ち上がり、防壁をクリエイトハンマーで破壊してから、ゴーレムのもとに向かう。
片手をあて、新しくその体を造りなおす。
「ゴゴゴ!」
「ありがとな、助かったよ」
「ゴゴー!」
家作製、ゴーレム作製……このどちらも非常に便利だな。
これまで以上に戦いに幅が出ると思った。
ただ、まだまだ展開するまでの時間がかかってしまっている。
もっと自然にできるように訓練をしないとな。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……ありがとうございます」
母親のほうがほっとしたようにこちらを見てきた。
それからゴーレムがやってきて、子どもが目を輝かせるようにしてゴーレムに触れている。
ゴーレムは優しくその子どもを抱き留め、持ち上げる。
「……それにしても、凄いお強いのですね」
「俺は今回戦っていませんよ。……それより、他にも逃げてきた人はいるんですよね? どのあたりではぐれたかとかはわかりますか?」
「……この森に入ったところで、別れましたので、どこにいるのか、はっきりとしたものは分かりません」
「そうですか……」
となると、もう少し探してみないとな。
さらにゴーレムを3体ほど製作すると、魔力が残り少なくなってしまった。
魔力回復ポーションを飲みつつ、ゴーレムたちに捜索をお願いしていると、カミラさんが姿を見せた。
「レリウス、こっちで三人見つけた」
「……あっ、本当ですか? そうなると、あと一人、ですね」
カミラさんとともに、三人の子がやってきた。
……成人前、といったような年齢の男女たちだ。
あと一人……この森で見つけるとなると、中々に大変だろう。
そう思っていた時だった。
木々がなぎ倒される。
驚いてそちらを見ると、ゴーレムとともに一人の少年がやってきた。
「み、みんなー!」
少年が涙を浮かべながらこちらへと駆け寄ってくる。
……友人同士だったのだろう。
カミラさんが保護した三人と一緒に抱きしめあっていた。
「良かった」
カミラさんは嬉しそうに微笑んでそちらを見ていた。
……俺も彼女に同意見だ。
「皆さん、俺たちの村で保護しますから……一緒に来てください」
「ほ、保護してくれるのか? お、オレたち……戦う能力もないんだぞ……?」
驚いた様子で青年がそう言ってきた。
……どういうことだ?
俺が不思議に思っていると、カミラさんが囁いてきた。
「……場所によっては、子どもは捨てられる。戦闘能力がないのに、食事はするから」
「……そうなんですね」
……ここじゃあ中々食糧も手に入らないだろう。見つけたところで、蒼石の魔物ということが多い。
奴らの肉は腐っている部分が多く……というか、そもそもあまり食べたい見た目をしていなかった。
「お腹、減っている人いますか?」
「……お、俺たち……最近全然食べてなかったから、みんな凄いお腹空いているんだ」
「そうですか。……それなら、帰りに歩きながら何か食べましょうか」
俺の言葉に皆が驚いたように顔をあげた。
俺がいる間は食事の心配は必要ない。そう思わせるために、俺はハンバーガーを鍛冶で造った。
「どうぞ、自由に食べてください。飲み物もありますよ。水がいいですか? それともジュースですか?」
「こ、これ……」
「な、なんでこんな簡単に食べ物が出てくるの!?」
「あ、アイテムボックス? け、けどそれでも……い、いただけません! 私たち、助けてもらって、それで貴重な食糧まで……っ」
「食糧なら、俺が魔力で作り出せますから。村に戻れば、色々な料理をみんなが作っているはずですから」
宿のキッチンにある魔道具に食料はしまってある。
村に残った子たちが料理をできるようにするためだ。
俺の言葉に、みんなが目を見開いた。
「食糧を作り出せる力!?」
「そ、そんな凄い力があるんだ……っ」
「す、凄すぎる……さっきのゴーレムもそうだし……っ」
俺はみんなに苦笑しながら、剣を手渡す。
……カミラさんが保護した三人は、腰に剣をさしていた。
「みんな、剣を握ったことはありますか?」
「……あ、ああ。蒼石の魔物も、足を斬れば足止めはできる、からな。……す、すぐに再生されちゃうけど」
「それなら、この剣を使ってください。俺が作った剣で斬れば、蒼石の魔物に再生されませんから」
「「「えぇ!?」」」
三人が声を荒らげた。ちょうどそのときだった。
木々の隙間から蒼石の魔物が現れた。
ウルフ種の魔物だ。
俺は小さく息を吐いてから、渡しかけていた剣を握りなおし、そちらに向かう。
蒼石の魔物がとびかかってくる。
その噛みつきをかわし、剣を振りあげる。
ウルフの体を真っ二つに両断し、死体が地面に落ちる。
再生はもちろんしなかった。
「どうぞ、この剣なら倒せますから。自衛に使ってください」
「……す、すげぇぇぇ!!」
目を輝かせ、俺の剣を腰に差した。
あとは、村に戻るだけだな。
〇
保護した六人とともに村へと戻る。
空はすっかりと暗くなってしまったな。
「な、なんだこの村は!?」
「す、凄い……っ! こんな凄い街、見たことない……っ」
「おかしいだろ!? な、なんだよこの頑丈な防壁は!!」
みんな、驚いているようだ。しっかりとした村を見るのは初めてなのか、久しぶりとかなのかもしれない。
バルドさんがこちらへとやってきた。
「レリウスさん、みんな見つかったんですか?」
「はい。保護した人の治療はどうですか?」
「無事、終わりました!」
バルドさんが敬礼をすると、その後ろからビアンさんがやってきた。
「み、皆さん、料理を用意しておきました……! さ、ささ! や、宿のほうに来てください!」
ビアンさんがそういって、引きつった笑顔とともに宿の方を示した。
「……し、しっかりしている家だ」
「こ、こんな無事な村があったなんて……」
保護した子たちに並ぶようにバルドさんが立つ。
「この村も、昨日まではあのような家が立ち並んでいただけですよ」
そういって、未だボロボロのまま放置された家を指さすバルドさん。
「え? で、でも……凄い家がたくさんありますよね?」
「すべて、レリウスさんが造ってくれました」
「えええ!? こ、こんなのも造れるの!?」
バルドさんの一言で、みんなが再び俺を見て目を見開いていた。