第104話
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防壁は村を中心におおよそ正方形に作られていた。
まず俺は足元に村の中心を示す家の模型を作った。
サイズとしてはかなり小さい。防壁含めて、両手で持ち運べる程度のものを造る予定だった。
それから、その周囲に防壁を正方形に作った。
「まず、基本はこんな感じですよね?」
「……は、はい……えーと、この防壁はかなり厚くしたほうがいい、と思います。それと、防壁の上に登れるように、この四隅に塔を造ってください」
「……なるほど。塔の内部は、はしごですか? それとも、階段とかでしょうか?」
「ら、螺旋階段が良いと思います……」
……なるほど。
言われた通りに作製してみる。
塔の内部が分かるように、塔だけ別に製作する。
「……こんな感じですか?」
「か、壁に窓をつけて……あと、明かりとかは用意できますか?」
内部を覗きこみながら、ビアンさんが教えてくれる。
……うっかりしていたな。
基本的な部分の製作まで行わないとな。
塔を完成し、防壁につなげる。
四隅に置いたたため、左右どちらかに抜けられるようにする。
塔の上で軽く生活できるような、あるいは休憩所として利用できるようなスペースを用意した。
「……これで、完成になりますかね?」
「あ、あと……防壁の上は、でこぼこの部分が欲しいです」
「あ、あーありましたね……そんなものが」
「そ、そんなもの!? 防壁といったらこれですよ!! しゅ、すみません……」
興奮気味に言ってくるビアンさん。
確かあのでこぼこってあそこから弓などで敵を射るためにあるんだったか?
「あれって何であるんですかね?」
交流の一つとして俺が訊ねると、ビアンさんが鼻を鳴らす。
「あ、あれは敵からの攻撃から身を隠しつつ、攻撃するものです!! あれがない防壁なんて、防壁じゃないです!!」
「は、はは……そうですか」
ビアンさんは俺の想定以上に、こういったものに熱い人のようだ……。
あまり、下手なことはいわず、聞き役に徹したほうが良い。俺の直感がそう告げてくる。
それから、ビアンさんの意見を取り入れつつ、防壁を製作していった。
村の全体図を示した模型をビアンさんが見ていくと、それはもう嬉しそうに目を輝かせていた。
「す、凄い……これ、本当にこんなに自由に色々造れるなんて……っ!」
鼻血まで出して、ビアンさんは俺の作った防壁に顔を近づけている。
……は、鼻息が荒い。
ビアンさんの様子に若干頬が引きつりながら、俺は彼女に確認する。
「これで、防壁は完成で良いですかね?」
「だ、だだ大丈夫だと思います!」
「分かりました。これを参考に作っていきますね……それと、俺はあんまり家に関して詳しくないんです。今後も、必要そうな家があれば、また考えておいてもらえると助かります」
「ほ、本当ですか……っ?」
「はい、そのほうが俺も助かります」
「わ、分かりました!」
ビアンさんが嬉しそうに微笑んだ。
その時だった。子どもたちが、こちらへとやってきた。
「ビアンお姉ちゃん! 一緒に遊ぼう!」
「あっ、は、はい……っ。そ、それじゃあ……っ! また今度お願いします!」
「……はい。ありがとうございました」
ビアンさんが子どもを連れて去っていく。
その一部始終を見ていたカミラさんが苦笑しながら、こちらにやってきた。
「ビアンとあそこまでうまく接するなんて、レリウスにはなかなか女たらしの才能がありそう」
「……いや、そんなことないですよ」
「ビアン、人見知り、特に男性の相手が苦手なの。あそこまでうまく話を引き出したのはレリウスが初めてかも」
「たまたま、彼女の興味と俺の能力が一致していただけじゃないですか?」
「それでも。ビアン、あんまり戦闘能力はないから、子どもたちの面倒を見ることが多かった。私たちは助かってるけど、ビアンは結構気にしていたから、今回村のために色々働けたのが嬉しかったのかも」
「……そうですか。それなら、これからも家を製作するときは協力してもらいましょう」
「うん、レリウスから声をかけてあげてほしい」
「……わかりました」
ビアンさんとともに作った模型に視線をやってから、俺は脳内で魔法を展開する。
……一度にまとめて、周囲の防壁すべてを造っていった方がいいだろう。
「カミラさん。ちょっと集中しますから……しばらく、目を閉じてますね」
「……わかった。私もちょっと村の様子を見てくる」
「はい」
俺は村の全体図を思い浮かべながら、防壁製作していく。
先ほど、小さな村を造ったからか、想像は容易かった。
まずは防壁を造る。防壁の歩廊を丁寧に製作していく。
そして、四つの角に塔を製作する。
塔の内部を製作していく。すべて、ビアンさんとともに話をしていたものだ。
さらに、四つの防壁にあわせ、門を製作していく。
門の起動は、塔内部にある魔石を用いて行われる。魔力を流すと動く回路を接続していく。
それが故障してしまったときのために、手動でも開けられるように手回しの開閉操作のものも用意していく。
……こんなところか?
防壁の高さは5メートルほどで良いのではと提案を受けた。
あまり高くても日陰が多くなってしまう。別に戦争を行うわけではない。この周囲の魔物で警戒するべきは、地上を走る蒼石の魔物くらいだ。
むしろ、飛行するような魔物なら、どれだけ防壁を高くしてもあまり意味がないからな。
なるべく壁は厚くする。……というか、かなりの魔力を消費する。
途中、休みを挟みながらなんとか全体を製作していく。
そして――すべて完成した。
あとは、それを展開するだけだ。
ちょうどそのときにカミラさんがやってきた。
「できたの?」
「はい。これから設置していきたいと思います」
「そうなんだ。ビアン、できたって」
カミラさんが呼びかけると、近くにビアンさんと子どもたちがいた。
……ビアンさんに怒られないか心配だな。
一応、言われた通りに作ったつもりだったが。
俺は魔力をこめ、魔法陣を展開し……村を覆うように防壁を展開した。