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不遇職『鍛冶師』だけど最強です ~気づけば何でも作れるようになっていた男ののんびりスローライフ~  作者: 木嶋隆太


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第103話

マガジンポケットにて、コミカライズ版の連載が始まりました!

マガジンポケットにて無料で読めますので、どうぞ見てみてください!


書籍版2巻8月7日発売です!


 バルドさんが俺の剣を使って蒼石の魔物を倒したことは、すぐに村中に広がった。

 俺はソードをまとめて作製し、近くの箱にしまって入れておいた。

 村の人々が、それぞれ自由に使えるようにだ。


 ソードの準備を終えた俺が次に取り掛かろうとしたのは……村の建て直しだ。


「レリウス、剣みんなの分ありがとう」


 配っていたカミラさんがこちらへと戻ってきた。


「別にいいですよ。俺のレベル上げもできますし」


 今の俺は鍛冶師としての容量があるからな。

 作ったものをしまわずに済むのなら、それだけレベル上げになるからな。

 先ほどレベルは11にあがった。現在の容量は110だ。……まあ、これが満杯になるということは滅多にないだろうけど。


「そっか。……それで今は何をしているの?」

「……ちょっと、村の建て直しをしたほうがいいかなと思いまして」

「……あっ、そうだったの? それについて相談しようと思っていた」

「え、そうなんですか?」


 これはあくまで俺のレベル上げのついでのつもりだった。

 家とか造ると、わりと経験値になる。

 ただ、そこらに好き勝手造れるものでもないからな……。


「……他にも村がある。その人たちをここに移住させて、できればみんなで固まって行動したいと思った」

「……確かにそのほうが安全ですよね」

「うん。だから、レリウスにいくつか家を用意してもらいたいと思っていた」

「わかりました。そういうことなら、俺も好きに作っても大丈夫ですかね?」

「うん、お願い」


 ただ、問題があるとすれば俺が同じ家くらいしか作れないことくらいか?

 『渡り鳥の宿屋』なら脳内での再現が可能だが、それ以外となると……中々難しい。

 一部屋、くらいなら作れると思う。例えば、フィーラさんの部屋とか……近くのお店とかだ。


 俺は冒険者通りの店を脳内に思い出し、目の前にそれを作り出す。

 出来上がった家は、部屋一つしかない武器屋だ。

 ……たぶん、いつも店主が座っているレジの奥には部屋があるのだろうが、入ったことはないので分からないので、その先はない。


「わー! また家が出来てる!」


 ……けど、子どもたちが楽しそうに中へと入っていく。

 中に入り、最低限生活できるだけの家具をそろえてから、その家を出る。


「やっぱりレリウス凄い……こんなにあっさり作るなんて」

「俺の能力を持っていれば誰でもできますよ。そういえば、カミラさん。この村にはあんまり大人の人がいませんけど、他の場所はどうなんですかね?」


 俺の疑問に、カミラさんは苦笑する。


「神器を授かれるのは成人を迎える必要がある。魔物を狩りに行ける年齢の人がそのくらいで……危険があるから……どこも似たような状況だと思う」

「……そう、ですか。神様はどうして、生まれた時から神器や職業をくれないんでしょうかね」


 俺が言えるのはそれだけだった。

 ……いや、俺も実際そう思ったことがあった。

 昔、両親が魔物に殺されたと聞いたとき……俺は戦う力を持っていなかった。

 悔しかった。そう思うと、バルドさんが俺の剣を大事そうに持っていてくれた理由が少しわかった。


「本当にそう思う。けど、今はまだ運が良いほうだった。レリウスが来てくれたから」

「誰の仕業かはわかりませんけどね」

「たぶん、神様じゃない。神様は意地悪だから」


 カミラさんが肩を竦めていた。


「カミラさん。近くにいる人とかってわかりますか? リンを探す手がかりにもなると思うので、できれば早めに保護したいのですけど」

「ここから東にいったところに、半年くらい前だけど町があった。ただ、それ以上のことは分からない」

「それじゃあ、まずはそっちの捜索になりますかね」


 俺はさらにいくつか家を造ったあと、軽く息を吐いた。

 魔力回復ポーションを一気に飲んで魔力を回復する。

 街の防衛のためにも、ゴーレムを30体ほど用意しておいた。


 さすがにこれだけいれば、町が襲われてもどうにか退けられるだろう。

 そう思っていた時だった。

 一人の女性がやってきた。


「あ、あの……レリウスさん」

「なんでしょうか?」


 そう訊ねると、女性はびくんと驚いたように肩をあげた。


「……えーと」


 困ってカミラさんを見る。


「彼女はビアン。人見知りな子」

「……そう、ですか。それで、えーと?」


 俺が改めて聞くと、ビアンさんはカミラさんの後ろに隠れるようにして口を開いた。


「ぼ、防壁、みたいなものは……造れますか……?」

「ぼ、防壁、ですか?」

「す、すみません! つ、作れませんよね!? へ、変なこと聞いてしまいしてごめんなさいぃぃ!!」


 防壁、か。

 ……俺は少し頭の中で想像してみる。

 ……家といっていたが、何も家のようなものを造るだけではない。


 例えば、壁だけを造るというのは……どうだ?

 脳内に展開された家作製の画面で、壁の部分だけを製作する。


 それから、それを眼前に展開する。

 俺と同じ程度のサイズの壁がそこには出来上がっていた。


「こんな感じのものが作れますね。……ある程度魔力を消費すれば、さらに大きなものも造れると思います」

「……そ、そうなんですね! それなら、防壁とかみたいに、村の周囲を覆えば……」

「なるほど……ただ、あまり想像ができませんね……」


 ……防壁には足場などもある。まあ今回はなくても良いか、とも思うがあったほうがいいだろう。

 と思っていると、ビアンさんは一冊の本を取り出した。

 古びた本だ。俺が近づくと、ビアンさんは顔を真っ赤にしてカミラさんをぎゅっとつかんでいた。


「こ、これ……その防壁に関する本です」

「……なるほど」


 もしかしたら、この村の誰かが防壁製作に携わった人間なのかもしれない。

 絵や文章の乗った防壁や城に関してのものが描かれていた。

 ……ただ、専門的な知識が多い。俺はぺらぺらとめくっていたが、あまり正確には分からなかった。


「……そ、それで……その。私が、造ってみた……村の防壁、なんですけど……」


 ビアンさんがさらに紙を渡してきた。

 ……俺が受け取るときに、ビアンさんの指に僅かに触れる。


「ひぅぅぅ!!」


 ビアンさんは身を震わせる。

 それから、俺から距離を取り、涙目になる。

 ……本当に人見知りなんだな。


「……これは設計図みたいなものですか?」

「は、はい」


 ……なるほど。確かにこれなら造れるようになるかもしれない。

 ただ、これでもまだ俺の想像が及ばない部分が多い。


「ビアンさん。まずは小さな模型のようなものとして、これらを造っていきたいと思います。……できれば、協力してくれませんか?」

「は、はい……っ。わ、私も村のために、何かしたかったので……!」

「ありがとうございます。それじゃあ、早速製作に当たりたいと思います」


 ……ただ、村全体を覆うだけの防壁、か。

 かなりの魔力を使いそうだな。



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