第102話
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ゴーレムについて考えながら、俺は歩いていた。
……先程つくった二体のゴーレムは村に残してきた。
仮に、蒼石の魔物を倒せずとも、壁くらいにはなってくれるだろう。
歩きながら考えていたことは……ゴーレムの能力値振りについてだった。
……まず、魔力は必要ないのではないかということだ。
そうなれば、99を別のステータスに割りふれるようになる。
さらに言えば、ゴーレムにどのような役割をやらせたいかでも変わってくるだろう。
例えば、蒼石の魔物の足止めをするためだけにゴーレムを使うのならば、力などはいらない。
蒼石の魔物を捕まえられるだけの敏捷と、捕まえてから倒されないようにするための体力だけあればよいだろう。
……逆に戦闘を主にさせたいのならば、体力をある程度削って敏捷と力に割き、敵の攻撃をかわせるようなゴーレムにするというのも悪い話ではないだろう。
色々と難しく……しかし、面白い悩みでもあった。
「レリウス……あそこにいるの、蒼石の魔物」
カミラさんが指を向ける。そちらに視線をやると、確かに魔物がいた。
……蒼石の魔物。じっと見ると、青色の魔石が確認できた。
数は二体、か。実験をするにはちょうどいいだろう。
「とりあえず、ゴーレムにさきに突っ込んでもらいます。一体を倒したあと、バルドさんに戦ってもらいましょう」
この方が、安全ではないだろうか?
そう思っての俺の提案に、二人も頷いた。
俺はゴーレムを大雑把に造りあげる。
ゴーレム3
筋力159
体力70
敏捷170
魔力1
やや、敏捷に振ったのはゴーレムはそこまで足が速くないからだ。
生み出されたゴーレムはこれまでに比べてすらりとしている。
……もしかしたら、一番数値の高いものに影響されて生み出されるのかもしれない。
「ゴーレム。あそこにいる蒼石の魔物を一体だけ仕留めてきてくれ」
「ゴゴゴ」
ゴーレムがそう返事をした後、思いきり大地を踏みつけた。
……速い。想像よりも随分と速い。
ゴーレムの接近に気付いた蒼石の魔物たちが、ゴーレムへと飛びかかる。
「あの蒼石の魔物もウルフ種ですね」
「この辺りはウルフが多い。だいたい、ウルフがもとになっていると思う」
ゴーレムの拳が、ウルフにかわされる。
ウルフがかぶりつくが、ゴーレムはそれをしっかりと受け止めた。
かぶりついたウルフへと拳を振り下ろす。
元々死体が動いたようなグロテスクな見た目をしていたウルフだったが、ゴーレムの拳によって原型が分からないほどに潰れた。
……蒼石の魔物が動き出す気配はなかった。
……あの能力値ぶりで、ウルフは問題なく倒せるようだな。
俺の命令通り、ゴーレムが動きを止める。ウルフがそんなゴーレムに襲い掛かっていく。
「バルドさん、どうぞお願いします」
「は、はい! わかりました!」
バルドさんが剣を鞘から抜き、駆け出す。
「……中々、良い動きですね」
「村の子たちの指導者は私だから」
どこか、誇らしげに胸をはるカミラさん。
カミラさんはいつでも助太刀に入れるように中腰の姿勢で腰に差した剣の柄に手を当てている。
……俺もそうだ。無理だったときはすぐにバルドさんを助けられるように集中する。
バルドさんがウルフの背中へと迫る、迫る。
ウルフの攻撃をくらい、ゴーレムの体が崩れ落ちた。ちょうど、そこに入れ替わるようにして、バルドさんがとびかかった。
それまで、ゴーレムと戦闘していたためか、ウルフは足を止めていた。
そんな背中へ、バルドさんが斬りかかる。
ウルフを両断したバルドさんは、それからウルフをじっと見ていた。
動き、出さない。見事にウルフは両断されたまま、その肉体を地面に横たえていた。
……問題なさそうだな。
「レリウス、凄い。……これまで、抵抗手段がまるで見つからなかった蒼石の魔物たちに、一気に二つも抵抗する手段を見つけた」
「……俺が凄いというよりも鍛冶師の職業ですね」
「それをもらったレリウスは運が良い、その運が凄い」
「……そうですね」
もらった瞬間はハズレもハズレだったんだけど……今はこれほど便利なのは他にはないと思っていた。
俺たちはバルドさんへと近づく。
「……バルドさん?」
バルドさんはウルフの死体を見て、固まっていた。
……初めて殺したとかで驚いているのだろうか?
「大丈夫?」
カミラさんが小首を傾げて訊ねると、バルドさんがはっとしたように顔をあげる。
それから、嬉しそうに笑った。
「た、倒せたんだオレ……」
「うん。頑張った」
「……ありがとうございます、カミラさん……それに、レリウスさん!」
バルドさんがすっと頭を下げ、それから剣を鞘にしまった。
「お、オレも倒せました! レリウスさんの剣のおかげです! これで、やられた仲間たちの無念も晴らせます!」
「……そうですね。これからは、頑張って戦っていきましょう」
「はい!」
バルドさんが拳を握りしめる。頬は少し赤くなり、目元にはうるりと涙が浮かぶ。
……そんなに感慨深かったのか。
泣き出したバルドさんの背中をカミラさんがトントンと叩きながら俺を見てきた。
「レリウス……大変かもしれないけど、村のみんなの武器を作ってもらっても良い?」
「もちろんですよ。村に戻ったらゴーレムも増産しておきますね」
「……ありがとう」
カミラさんが頬を緩める。
……とりあえず、ここでの生活を安定化できそうだな。