第101話
マガジンポケットにて、コミカライズ版の連載が始まりました!
マガジンポケットにて無料で読めますので、どうぞ見てみてください!
また、書籍版2巻のほうも来月8月7日に出る予定です!
子どもたちに宿を紹介する。
部屋はいくらも余っていたので、子どもたちに自由に部屋を選ばせる。
廊下で眺めていると、あちこちで取り合いになっているのが分かり、カミラさんが頬を緩めた。
「……まるで、神様みたい」
「そうでもないですよ。あくまで与えられた能力の中でしかできませんから」
俺は答えながら、カミラさんを見る。
カミラさんは口元を緩めながら、子どもたちを見ていた。
「みんな、楽しそうで良かった」
「はい、喜んでくれたみたいで良かったです」
「……そうだ。レリウス。ゴーレムも作れるって言っていたよね? そっちは、いいの?」
「……あっ、それも気になっていたんです。作ってきてもいいですか?」
「うん。私も終わったらみんなと見に行くね」
「わかりました」
控えめに微笑んだカミラさんと別れ、俺は家の外へと出た。
……さて、ゴーレムはどのように造るのだろうか。
俺が魔力を込めてゴーレムの作製に取り掛かる。
と、眼前に文字が出現した。
ゴーレム
筋力
体力
敏捷
魔力
……なんだこれは? アクセサリーとかでもそういえば、これらを強化するものがあったな。
今の俺もそれらのスキルは所有しているが……ゴーレムの場合、なんなのだろうか?
俺が首を傾げながら、その文字に触れる。
すると、魔力を込めてくださいと出た。
……なるほど。とりあえずやってみようか。
魔力を込めていくと、筋力は397で止まってしまった。
……これで終わりなのか? つぎは体力、敏捷、魔力……と順に魔力を込めようとして、気づいた。
他の能力は全部1で止まってしまった。
これで作製する……のはさすがにな。たぶん、この数字はゴーレムの能力値を示すものなんだと思う。
数字が多いほどその値が強化され、数字が低いほど弱い……というところだろう。
俺は一度作り直す。……今度は筋力を100程度で止め、体力に全部の魔力を込める。
数字は298で止まった。
……なるほどな。
今の俺の鍛冶師のレベルによる限界なのかは分からないが、ゴーレムに割り振れる数字は合計400のようだ。
そして、最低1はないとダメなようだ。
とりあえず、全部100で製作してみるか。
どこにゴーレムを製作するか、地点を選ぶように指示されたので、近くの庭に決める。
魔法陣が現れ、ゴーレムが姿を見せた。
大人程度の大きさの岩でできたゴーレムだ。
顔の部分は黒い影のようなものがみえ、黄色く二つの目が光っている。
「ゴゴゴ」
ゴーレムがうなる。俺のほうを見てきた。
何か、命令が欲しいという様子だった。
「……ちょっと、力をみてみたい。地面を殴ってみてくれないか?」
「ゴゴゴ!」
ゴーレムが拳を振り上げ、振り下ろす。
動きはまあ普通だろう。
ゴーレムが振りぬいた拳が、大地を抉った。
……け、結構な衝撃だった。
近くに立っていた俺はその衝撃に体が揺られてしまった。
「……凄いな。ありがとう、ひとまず待機していてくれ」
「ゴゴゴ」
ゴーレムは言われるがままにそこに待機した。
……これを魔力を消費するだけで作れるのか。
ただ、魔力の消費量は中々多い。こちらも家と同じくポンポン量産するのは、魔力的に危険だった。
俺はもう一体の製作を開始するため、魔力を注入していく。
試しに50くらいにしてみようか?
数字による能力差がどの程度になるのか、調べてみたいと思ったからだ。
今度は全部50のゴーレム2を作り上げる。
先ほど作ったものよりも小柄だ。大人と子どもくらいの差はあると思う。
「……ちょっと、殴りあってみてくれないか。最悪、破壊されても良いからな」
「ゴゴゴ」
「ゴゴゴ」
ゴーレムたちが拳を振りぬく。
……当然だが、ゴーレム2のほうが崩れた。
……さすがに、無理だったか。
崩れたゴーレム2に近づくと、どうやら魔力を込めれば復活できるようだった。
さらに、ここで数値もいじれるようだ。
とりあえずすべて100にして作り直すと、ゴーレム2の体が一回り大きくなって、立ち上がった。
「……なるほどな。魔法は使えるのか?」
「ゴゴゴ!」
「ゴゴゴ!」
どちらも頷く。
「試しに使ってみてくれないか。被害が出ない場所に向けて、な」
「「ゴゴゴ!」」
ゴーレムたちが空に向けて拳を向ける。そこから、白色の魔力の塊が放たれた。
……たぶん、無属性の魔法だ。
俺たちが当たれば、それなりの怪我を負うだろう。
……だんだんと、ゴーレム製作について分かってきたな。
筋力、体力、敏捷、魔力。
筋力は攻撃力、体力が防御力、敏捷が、素早さ、魔力が魔法攻撃、ってところだと思う。
それで、俺が自由に割り振れるポイントは400、か。
……この村では、いま人間が見張りをしている。
夜の見張りなどは、このゴーレムたちに任せられれば、みんなもっと楽になるだろう。
「……スキルとかは付与できるのだろうか?」
「ゴゴ!」
ゴーレムがこくりと頷いた。
……マジか。
スキルを付与してみようとした。レベルアップによって、これまでに獲得したスキルもすでに解放されているからな。
……見張りをさせるのなら、視覚強化が良いだろう。
あれは俯瞰的に周囲を見られるスキルだからな。
試しにゴーレムに付与してみる。
「……どうだ?」
「ゴゴ!」
ゴーレムが何かに反応するように指をさした。
……家に隠れるようにしてこちらを見ていた子どもたちがいた。
……どうやら、スキルが使えているようだな。
「わっ……ゴーレムだ!」
「すげぇ……っ! レリウス、ゴーレムまで造れるんだ!」
カミラさんとともに、子どもたちが宿から出てきた。
ゴーレムはそちらを見ると、軽く頭を動かした。会釈でもしているのかもしれない。
……それなりに知能があり、命令通りに動いてくれる。
非常にありがたい存在だな。
あとは……蒼石の魔物を倒せるのかどうか。そこが気になるところだった。
「レリウス、どう?」
「カミラさん。ゴーレムたちはかなり強い力を持っています。……それで、ちょっと蒼石の魔物に通用するのか試したいのですけど、村の外で見かけやすい場所とかってありますか?」
「見かけやすいかは分からないけど、外を歩けばたぶんどこかで戦えると思う」
「分かりました。それじゃあちょっとゴーレムを試してきたいので、一度外に出てもいいですか?」
「それなら……レリウス。他の子たちでもレリウスの剣で蒼石の魔物を倒せるのか調べてみたい。……ちょっとその協力もしてもらっていい?」
「わかりました。それじゃあ行きましょうか」
「うん。バルド、外に行くよ」
カミラさんが呼びかけると、一人の青年がやってきた。
彼は緊張した様子で俺に一礼をする。
「バルドっていいます! オレの神器、マジ無能なんでレリウスさんの剣貸してもらえるのなら嬉しいです!」
「はい、もちろんです」
俺が剣を造り、バルドさんに渡す。
「……良い剣ですね。軽く、手に馴染みます。まるで、自分の神器みたいです」
「なんか、俺が造った剣って相手のことを考えながら製作すると、その相手に合わせられるみたいなんですよね」
「それは……便利ですね」
バルドが剣を鞘にしまい、腰に差す。
それから俺たちは、村を出た。